略取・誘拐罪について
一言に略取・誘拐罪といっても、その目的や内容によって問われる罪が変わります。そもそも「略取」と「誘拐」では、犯罪の内容が異なりますので、それぞれについて説明します。
1.略取とは
「略取」とは、暴行、または脅迫することによって、嫌がる相手を無理やり連れだし、自分、または第三者の事実的支配下に置くことを意味します。
冒頭で紹介した犯罪行為は、子供や女性に対し、暴行を手段として無理やり連れ出し、自分の支配下に入れたものなので、いずれも「略取」にあたります。
2.誘拐とは
「誘拐」とは、嘘をついて騙したり、ほしがっているモノをあげるなど誘惑したりすることで相手を連れ出し、相手の意志に反して、自分または第三者の事実的支配下に置くことです。
「略取」との違いはその手段で、言葉により騙したり誘惑したりする点です。
「略取」と「誘拐」、2 つの犯罪を併せて「拐取罪(かいしゅざい)」と表現することもあります。
略取・誘拐罪ではどのような罪に問われるのか?
刑法は、以上のような行為の対象や目的に応じていくつかの類型を用意しています。以下では類型ごとにどのような罪に問われるのか説明します。
1.未成年者を略取・誘拐した場合
未成年者(20歳未満の者)を略取、または誘拐した場合には「未成年者拐取罪」が成立し、3 ヶ月以上、7 年以下の懲役が課せられます。
冒頭で紹介した「別居中で離婚係争中の妻のもとで養育されている5歳の実子を、無理やり連れ出し、自分の家に連れ戻してしまった」とうケースも、未成年者略取罪に該当します。
ここで気になるのが、上述の例では、夫には親権が残っているので、未成年者略取にならないのではないか(親の監護権行使として正当な行為といえないか)ということですが、行為が粗暴で強引である、未成年者が幼齢であるなどの場合は、未成年者拐取罪が適用されます。
2.略取・誘拐の目的が営利・わいせつ・結婚・加害だった場合
略取や誘拐の目的が、営利、わいせつ、結婚、もしくは生命や身体に対する加害の目的だった場合は1年以上10年以下の懲役に課せられます。
(1)営利目的
営利目的とは、略取・誘拐により、自分または第三者が利益を得ることを目的しています。
被拐取者(誘拐された側)に売春させて利益を得るなど、被拐取者を直接的に利用し、犠牲にすることで利益を得るといった犯罪が多いです。
(2)わいせつ目的
わいせつ目的とは、姦淫や、被拐取者の性的自由を侵害する目的で略取・誘拐することを指します。
(3)結婚目的
結婚目的とは、略取・誘拐を実行した本人、または第三者と結婚させることを目的とした拐取を指します。
この罪に該当するには、法律婚だけでなく、事実上の結婚も含まれるとされていますが、通常の夫婦生活の実質を備えていることが必要とされています。夫婦生活の実質を備えず、肉体関係だけの場合には「わいせつ目的」になります。
(4)加害目的
相手を暴行して痛めつけたり、命を奪うことを目的にさらってしまう行為です。
3.身の代金目的で略取・誘拐した場合
「身の代金目的拐取罪」には、無期又は3年以上の懲役が課せられます。
身の代金目的拐取罪は、「近親者その他を略取され又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的」とされており、例えば、子どもを誘拐し、子どもを何としても助けたいと思う親に身代金を要求するなどのケースが該当します。
近親者以外でも、会社の代表取締役が誘拐され、取締役がそれを憂慮すると見なされ「身の代金目的拐取罪」が適用された例もあります。
人身売買罪について
略取や誘拐などの拐取罪と同種の犯罪として、人身売買罪があります。人身売買罪には以下のような犯罪の種類があり、それぞれ罪科に問われます。
(1)人を買い受けた場合、3月以上5年以下の懲役
(2)未成年者を買い受けた場合、3月以上7年以下の懲役
(3)営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた場合、1年以上10年以下の懲役
(4)人を売り渡した場合、1年以上10年以下の懲役
(5)所在国外に移送する目的で人を売買した場合、2年以上の有期懲役
略取・誘拐罪を犯してしまったら
万が一、ご自身やご家族が略取・誘拐罪、もしくは人身売買罪を犯してしまった場合、どのような対応をしたらよいのでしょうか。少しでも裁判を有利に進めるためにできる方法を紹介します。
1.すぐに弁護士に相談する
略取・誘拐のような犯罪では、被害者と示談できるかどうかが重要です。ただ、この種の犯罪は、身体を拘束される可能性が高く、捜査もスピーディーに進んでいくケースが多いです。そのため、早い段階で弁護士に依頼し、早急に弁護活動をスタートさせる必要があります。
2.被害者と示談する
未成年者拐取罪やわいせつ目的の拐取罪は、告訴がなければ起訴できない犯罪です。被害者、もしくはその親と示談交渉し、告訴を取り消してもらう、または告訴しないことに合意してもらえれば、不起訴となる可能性が高まります。
告訴取消しに関する合意が得られなくても、示談が進めば、執行猶予判決を獲得するためのプラス材料となります。
略取・誘拐罪なら、刑事事件専門弁護士に相談を
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