知的財産権を守る「知的財産関係法令」
知的財産権とは、知的な創作活動において創り出されたものに付与される権利で、特許権、商標権、実用新案権を含む「産業財産権」や、音楽や映像、小説などの文化的な創作物を保護する「著作権」などがあります。
これらはすべて「知的財産関係法令」という法律で守られており、模倣することや、使用すること自体が禁止されていたり、無断で使用した際に罰則を与えられたりします。
知的財産法上の犯罪は,それにより1円も利益を得ていない場合であっても、罰金や実刑判決を受ける可能性があるので、自分の行為が知的財産法に触れる恐れがある場合は、しっかり確認する必要があります。
知的財産関係法令で守られている代表的な権利について、以下で解説します。
著作権
人の思想や感情を創作的に表現した「著作物」に与えられる権利で、音楽や絵画、映画、漫画などがその対象になります。それらを創作した人を「著作者」といいます。
著作権は、申請しなくても、著作物ができあがった時点で権利が発生し、原則として著者の死後50年、または70年間継続します。
著作権法違反の罰則
著作者の了解なしに広く公開する、著作者の名前を公表する、作品を変えるなどの行為は、著作権侵害に該当し、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科されます。
例えば、録画したテレビ番組を、インターネット上の動画サイトにアップロードした場合などがこれにあたります。。
自分自身や家族など、ごく限られた範囲内で著作物を利用する場合(私的使用の目的)であれば、複製も違法ではありませんが、これが有償著作物のダウンロードであれば、著作権の侵害にあたります。
例えば、ネット上に違法にアップロードされている映画を、自分のパソコンやスマートフォンにダウンロードしたなどのケースがこれに該当し、2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの両方が科されます。
産業財産権
特許権
発明と言われる、一定のレベル以上の新しい技術的アイデアを保護します。「物」の発明に対してだけでなく、「方法」や「物の生産方法」の発明に対しても権利が与えられます。
特許取得済みの製品のコピーを特許権者に無断で作った場合、特許法違反となり、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科されます。
商標権
商標権とは、企業などが有する製品のトレードマークやロゴに生じる権利です。企業や商品のロゴマークがこれにあたります
権利者に無断で使用した、類似したロゴなどを使用した、などの場合、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科されます。
実用新案権
実用新案権とは、特許権を得たような発明の中で、特許権ほど高度なものでない技術的アイデアについて与えられる権利を指します。
実用新案権が認められている製品のコピーを実用新案権者に無断で作れば、実用新案法違反となり、5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの両方が科されます。
損害賠償や実刑も! 著作権侵害の事例
知的財産法の中で、最も身近な著作権法違反の事例を紹介します。
ネット上で、漫画や映画などを勝手にアップロードしたりダウンロードしたりすることが違法であることは、認識している方が多いように思いますが、知らずに著作権を侵害しているというケースもあるので、著作物を扱う際には細心の注意が必要です。
また、著作権侵害でも、悪質なケースには実刑判決が下った事例もあります。
業務上のコピー&配布が著作権侵害にあたることも
以前、法務局では、土地について記載した「土地宝典」という地図(書籍)を備え置いて、利用者に無償でコピーをとらせていました。
これが、「土地宝典」の著作権の使用料支払いを免れた不当利得にも当たるとされ、著作者から損害賠償及び不当利得を求められ裁判になりました。
高裁まで争われた結果、著作権侵害にあたるとされ、国に一定額の支払いが命ぜられました。
知らずに著作権のある写真を使用し、損害賠償を請求された
検索エンジンで「著作権フリーの写真」を検索して、ヒットした写真を仕事で使用したところ、実は「著作権フリーの写真」ではなかったため、該当写真を保有する会社から訴えられた、という事案があります。
知らなかったとはいえ著作権の侵害にあたると判断され、20万円近くの損害賠償を支払いが命じられました。
悪質な著作権侵害に実刑判決も!
海賊版サイトの運営者など3名が、実刑判決を受けたという事例もあります。
この海賊版サイトは、ストレージサイトに違法にダウンロードされた著作物を、有料会員がリーチサイト(著作物の所在を示すリンクが貼られているサイト)を通じて自由にダウンロードできるというものでした。
著作物を違法にアップロードし、さらにリンクを貼って多くの人が閲覧できる状態にしたことが、著作権侵害にあたるとされています。
知的財産法上の犯罪を起こしてしまったら
ここでは、著作権法違反を犯してしまったと気付いたら、前科を避けるために、または処罰を軽くするためにどんな行動をとるべきか、説明します。
すぐに弁護士に相談する
最近では、動画や音楽のダウンロードやアップロードが気軽にできてしまうため、気が付くと多数の著作権法違反を犯していることも少なくありません。当然のことですが、違反の数が増えればそれだけ重い処罰が予想されます。
著作権法違反を犯してしまったことに気付いたら、すぐに弁護士に相談して助言を仰ぐことが重要です。
示談交渉をする
被害者は、著作権侵害により利益を得る機会を損なったことや、著作物の価値が損なわれたという点で被害を受けています。
示談交渉では、こうした被害について、弁償することが必要ですが、著作権が会社に帰属している場合、弁償を拒まれるケースが多いです。
そのような場合でも、被害について弁償しようとした、という意思を示すことが必要なので、弁護士を介して示談を申し込み、その経緯を示談経過報告書としてまとめることが有用です。
身体解放に向けて活動する
逃亡、アップロードなどに使用したパソコンをはじめとする証拠の隠滅、証人との不用意な接触などができない環境を作り、検察、裁判所にそれらの事情を主張することで、早期の釈放を目指します。
事実関係を争う
現在の著作権法違反は、インターネットを介したものが大多数を占めるため、自分の開発したソフトウェアを使い他人が著作権侵害をしてしまうなど、予期せぬところで事件に巻き込まれてしまう可能性があります。
そのような場合には、事件に至る経緯などを積極的に明らかにし、事実関係を争う必要があります。
弁護士の力を借りて主張を固め、それに即した証拠を収集し、捜査・裁判に適切に対応していくことが求められます。
まとめ
上述したとおり、知的財産権の侵害では、自分のどのような行為が犯罪になっているかも分からずに、気付かぬうちに加害者になっているケースもあります。事件に至った経緯や事実関係を明らかにし、捜査や裁判に対応していく必要があるので、必ず弁護士に依頼するようにしましょう。
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