名誉毀損罪・侮辱罪とは
人に対して誹謗中傷する発言をしたり、侮辱する発言をした場合、名誉棄損罪や侮辱罪に問われることがあります。
名誉棄損と侮辱罪とはそれぞれどのような罪で、どのような違いがあるのか、構成要件から解説します。
名誉棄損罪の構成要件
名誉毀損罪は、①公然と、②事実を摘示し、③人の名誉を毀損した場合に成立します。
①~③の各要件について、以下で詳しく説明します。
名誉毀損① 公然
①の公然とは、不特定または多数の人が認識できる状態のことを指します。インターネットの掲示板やSNSなどは、まさに「公然」に当たり、複数人に言いふらすような場合も「公然」に該当します。
相手が特定の少数人であったとしても、そこから広がって不特定多数の人が認識できるようになった場合も「公然」に当たるとみなされます。
名誉毀損② 事実の摘示
②事実の摘示は、人の社会的評価を害するような内容のものです。
一般人であれば、その人の立場によっては社会的評価が低下するような場合も含みます。
事実を摘示すること自体が要件なので、みんなが知っているような事実であっても、名誉が害される可能性があれば名誉毀損罪が成立する可能性があります。
名誉毀損③ 人の名誉を毀損した
③名誉を毀損したとは、実際に名誉が低下しなくても、社会的評価を害するに足る行為があればよいとされています。
ちなみに、ここでいう「人」には法人も含まれるので、会社や団体も該当します。
例えば、インターネットに「Aさんは不倫をしている」と書き込んだり、複数人に「Bさんは過去に捕まったことがある」などと言いふらしたりすることは名誉毀損罪に該当する可能性があります。
名誉棄損罪では、内容が事実か否かは関係ないので、実際に不倫をしているか、捕まったことがあるのかなどは考慮されません。
公共の利害に関する特例
名誉毀損罪では、刑罰が科されない特例があります。
その一つが、適示された事実が、「公共の利害に関する事実」であり、「専ら公益目的」であること、さらに「その内容が真実である」場合です。
例えば、記者であるEさんが、国会議員Fさんが多額の賄賂を受け取っているとの情報を得たとします。念入りな取材をして資料も集め、Fさんが多額の賄賂を受け取っていたという事実をつきとめ、これを公表したなどのケースが該当します。
真実性の証明に失敗した場合であっても、確実な資料や根拠に照らして事実だと思ったような場合であれば、処罰されないこともあります。
侮辱罪の成立要件
侮辱罪は、①事実を摘示しなくとも、②公然と、③人を侮辱した場合に成立します。
侮辱罪① 事実を適示しなくとも
①事実の摘示しなくとも、とは、事実を含む必要がないことを示します。
事実の適示の有無が、名誉毀損罪との違いになります。
例えば、「Cさんはバカだ」「Dさんは不細工だ」など、相手を辱める発言や書き込みをするだけで侮辱罪が成立する可能性があります。名誉棄損のように「不倫している」などの「事実」を含んでいる必要はありません。
侮辱罪② 公然と
名誉棄損罪の構成要件と同じく、不特定または多数の人が認識できる状態のことを指します。
侮辱罪③ 人を侮辱した
「Eさんは仕事ができない」と社内で言いふらしたり、「Fさんは変態だ」とSNS上で書き込んだりすると、③人を侮辱した行為に該当します。
名誉棄損罪と侮辱罪の法定刑
名誉毀損罪は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金が科せられます。
侮辱罪は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます。
親告罪
名誉毀損罪や侮辱罪は、被害者の告訴がなければ刑事裁判になることがない犯罪です。
これは、前科を避ける上でもとても重要な事項なので、覚えておきましょう。
他の犯罪との関係~業務妨害罪などに問われる可能性も~
名誉毀損行為をした場合、名誉毀損罪だけでなく、同時に業務妨害罪などが成立する可能性もあります。
1つの行為で複数の犯罪が成立してしまうと、その分刑が重くなる可能性があるので注意が必要です。
名誉毀損・侮辱事件を起こしてしまったら
誰がいつ加害者になってもおかしくない、名誉棄損罪や侮辱罪。万が一、自分や家族が加害者になってしまった時のために、どんな対応をしたらよいのかチェックしておきましょう。
すぐに弁護士に相談する
名誉毀損罪や侮辱罪のような日常生活の中で知らぬ間に起こしてしまう身近な犯罪こそ、早期に弁護士に相談して手を打つ必要があります。特に、侮辱罪のような刑罰が軽い犯罪は、大丈夫だろうと放置しておくと、刑事事件に発展してしまう可能性があります。内容によっては名誉毀損罪に切り替わる場合もあるので、早期に弁護士に相談することが重要です。
被害者と示談する
名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪なので、被害者に謝罪と賠償をすることで、被害届や告訴をしないでもらったり、告訴後でも起訴前に取り下げてもらえれば、前科がつくことはありません。
ただ,告訴を取り下げるためには示談金が少し高くなること、示談金を支払っても、損なわれた名誉が復活するわけではないことを念頭に、示談交渉は慎重に進めていく必要があります。
また、当事者同士では示談を進めるのは難しく、別のトラブルに発展する恐れもあるので弁護士を仲介役とすることが必須です。
早期の身体解放活動
逮捕勾留されてしまった場合、最大で23日間もの長期間に渡り、身体拘束されてしまいます。
長期間の拘束を避けるためにもいち早く弁護士に依頼し、逃亡や証拠隠滅をする恐れがないことを的確に主張して、早期の身体解放を目指しましょう。
罪は成立しないと争う
公共の利害に関する特例に該当する場合など、、内容によっては犯罪自体が成立しないと主張できることも考えられるので、十分な証拠を集めていくことが必要になります。
犯罪の成立を否認する場合は、捜査機関からの厳しい取調べにも耐えなければならないので、弁護士から多くのなアドバイスやサポートを受けていくことが欠かせません。
まとめ
名誉棄損・侮辱事件ともに、起こしてしまったら早急に弁護士に依頼して、サポートを受けることの大切さが、お分かりいただけたと思います。
名誉毀損・侮辱事件でお困りの方は、「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」までご連絡ください。弊所では、名誉毀損・侮辱罪等の犯罪について、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士による無料の法律相談を行っています。ご依頼主の関係者が、例えば滋賀県で逮捕勾留されている場合でも、最短で当日に、弁護士が直接面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。