ストーカー規制法とは
ストーカー規制法とは、正式には「ストーカー行為等の規制に関する法律」と言います。
この法律は、好意などの感情を充たすために、相手や相手の家族に対して行う、つきまといなどの行為を取り締まるものです。
ストーカーとはどのような行為か
ストーカー規制法では、以下で紹介する「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を、特定の相手やその家族に繰り返し行うことを“ストーカー行為”として定めています。一度行っただけではストーカー行為とはみなされません。
また、ストーカー行為を行う前提として、相手に対しての恋愛感情や好意があること、またそこが満たされなかったことによる怨恨が伴っていることが必要です。
単なる嫌がらせなどが目的で行うことであれば、傷害罪など別の犯罪に問われる可能性があります。
ストーカー規制法の対象になり得る行為
1 つきまとい等
①つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
通勤、通学途中の尾行や待ち伏せ、職場や学校に押しかける行為。
②行動を監視していると告げる行為
相手の行動を監視し、それを相手に手紙やメール、LINEなどで知らせる行為。
帰宅したら「おかえり」とLINEメッセージが届く、会っていないはずなのに、「今日の服装は可愛かったね」などのメールが届く。
③面会や交際の要求
会って話したいと伝える、交際や復縁を要求する、プレゼントを受け取るように強要するなどの行為。
④乱暴な言動
家の前で大声で「死ね」と怒鳴ったり、車のクラクションを鳴らしたりする行為。
⑤無言電話、連続した電話、メール、FAXの送りつけ、SNSへの書き込み
何度も電話をかけたり、メール、ファックス、SNSで繰り返しメッセージを送りつける行為。相手のSNSに何度もコメント書きこむなどの行為。
⑥汚物などの送付
汚物や動物の死骸などを、自宅や職場に送りつける行為。
⑦名誉を傷つける行為
相手を誹謗中傷するような手紙やファックスを職場に送ったり、SNSのコメント欄に書き込んだりする行為。
⑧性的羞恥心の侵害
わいせつな写真や卑猥なメッセージを手紙やSNSで送りつけるなどの行為。
2 位置情報無承諾取得等
①位置情報の記録・取得
スマートフォンのGPS機能などを利用して、位置情報を取得する行為
②位置情報装置取付
位置情報を記録・送信できる装置を取り付ける行為
SNS上のストーカー被害は捜査対象になる?
以前は、LINEやTwitterなどSNS上におけるストーカー行為は、ストーカー規制法の対象となっていませんでしたが、ネット上でのストーカー被害の拡大を受け、2017年、ストーカー規制法が改正されました。これにより、LINEやTwitterなどSNS上でのストーカー行為も規制の対象となりました。
被害に遭った場合は刑事事件として告訴することができますし、民事で損害賠償を請求することも可能です。
ストーカー規制法に違反するとどうなる?
ストーカー行為によって逮捕される場合、2つパターンがあります。
①段階的に逮捕に近づく
警告
被害者からストーカー被害の申告があり、警察が今後も繰り返されるおそれがあると判断した場合は、加害者へ「つきまとい行為を繰り返してはいけない」旨を記した警告書や書面を渡すことで「警告」がされます。
「警告」には強制力がなく、違反した場合の罰則も設けられていません。
禁止命令
「警告」しても加害者がストーカー行為を継続した場合には、被害者の申し出や公正委員会の職権により「禁止命令」が出されます。
禁止命令では、ストーカー行為につながる行為自体を禁じる命令ができます。被害者の個人情報を持っている場合はそれを破棄することも含まれています。
禁止命令には法的な効力があり、違反した場合にはストーカー規制法により逮捕されるおそれがあります。
②いきなり逮捕される
被害者が直接警察に告訴した場合には、警告や禁止命令の段階を踏まず、刑事事件として捜査され、容疑が固まれば逮捕されます。
ストーカー行為を行っているなかで、他の犯罪を起こして逮捕されるというケースもあります。
例えば、郵便受けの中から手紙を盗んで開封した(信書開封罪)、ベランダに侵入し衣類を盗んだ(窃盗罪、住居侵入罪)などの犯罪が成立し、現行犯逮捕、または通常逮捕されることもあります。
ストーカー規制法の時効は3年です。これを過ぎると起訴できなくなり、加害者を罰することができなくなります。時効は、犯罪終了時から進みます。
ストーカー行為による刑罰は?
ストーカー行為による刑罰は、そのタイミングにより異なります。
・「ストーカー行為」をした場合
1年以下の懲役、または100万円以下の罰金。
これは、禁止命令を出される前に処罰された場合の規定です。
短期間につきまといを繰り返したような場合にはこれが当てはまります。
・禁止命令に違反して「ストーカー行為」をした場合
2年以下の懲役、または200万円以下の罰金。
公安委員会から「つきまといをしてはいけない」という禁止命令が出されたにもかかわらず、無視してつきまといを続けたような場合に適用されます。
・禁止命令のその他の事項に違反した場合
6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金。
ストーカー事件を起こしてしまったら
家族がストーカー事件を起こしてしまった場合、パニックになり何をすべきか分からなくなってしまう方が多いと思います。そんな時は、ストーカー事件に詳しい弁護士に依頼して、すべてを任せるのがベストかも知れません。
・弁護士に相談する
ストーカー規制法違反が疑われた場合、当事者間で問題を解決しようとすれば、その行為自体がつきまといに当たるとされ、場合によっては逮捕される可能性もあります。
警察から警告や禁止命令を受けた場合には、今後の対応を弁護士に相談して、弁護士を通じて相手とやりとりしたほうがよいでしょう。
・被害者と示談する
ストーカー規制法違反では、被害者が負った精神的損害などについて、被害の回復を図ることが求められます。
賠償金を支払う、今後被害者と接触しない、などの条項の入った示談書を作成し、被害者の負った被害が一定程度回復されていることや、再犯の可能性が無いことを明らかにしていく必要があります。
示談交渉では、加害者が被害者と接触することは避け、弁護士に交渉してもらうのが好ましいです。
・カウンセリングなどに通う
ストーカー規制法は、つきまといなどのストーカー行為を放置した末に、重大事件につながったことを契機として制定された法律です。
そのため、カウンセリングなどに通い行動を自制できるように努力している姿を見せることが、処罰を軽くするうえで有意義と言えます。家族が見守り、サポートすることも欠かせません。
・身体拘束からの解放に向けて活動する
逃亡、被害者や証人への接触、証拠の隠滅などができない環境を作り、検察、裁判所にそれらの事情を主張していくことで、早期の釈放を目指します。
・事実関係を争う
ストーカー規制法では、好意などの感情を充たすための行動と定義しているので、それとは異なる感情の下による行為では無罪を主張することも考えられます。
早期に主張を固め、それに即した証拠を収集し、捜査・裁判に適切に対応していくことが求められます。
まとめ
事件を起こして逮捕されたら、本人も家族もとても不安になるはずです。そんな時、弁護士という事件の専門家についていてもらうだけで、不安はかなり軽減されるはずです。
刑事事件を専門に扱う「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」では、ストーカー事件の豊富な経験を基に、逮捕された本人、ご家族へ適切なアドバイスをします。
「ストーカー事件で前科を避けたい」「処罰を軽くしたい」なら、ぜひ一度ご相談ください。