不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、事業者間における不当な手段の競争を禁止させ、正当な営業活動を遵守させるために設けられた法律です。
不正競争防止法の第一条では、その目的を以下のように説明しています。
(目的)
第一条
この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
経済産業省HPより
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/h30kaisei.pdf
不正競争禁止法にはいくつかの犯罪類型がありますが、ここでは「営業秘密侵害罪」と「混同惹起罪」について、以下で解説します。
営業秘密侵害罪
営業秘密は、通常は会社が保有者となります。
会社から営業秘密を示された者が、「不正の利益を得る目的」か「会社に損害を加える目的」のもと、営業秘密を管理する任務に背いて他人に開示してしまった場合に、営業秘密侵害罪が成立します。
例えば、対価を得る目的で、自社の営業秘密を他人や他社に漏洩した場合は、営業秘密侵害罪になる可能性があります。
営業秘密侵害罪は、10年以下の懲役、もしくは2000万円以下の罰金または併科(不正競争防止法21条1項4号)と、法定刑も非常に重いものとなっています。
罰金刑も定められてはいますが、刑事裁判になり、実刑を受ける可能性も十分にあります。
営業秘密侵害罪の事例
2019年6月に営業秘密侵害罪で実刑判決が出た事例があります。
愛知県豊田市の工具メーカー「富士精工」で、元社員の中国籍の男が設計データを持ち出すという事件が発生しました。
男は、「転職を有利にしたい」「不正な利益を得る」という2つの目的から営業秘密を閲覧し、サーバーコンピューターにアクセスし、同社の設計データ164件をUSBメモリーにコピーしました。
男は、中国の求人サイトで多数の資料を所持しているとアピールしており、上海の企業から内定も得ていたとのことです。
裁判官は、「日本の技術が国際競争にさらされ、違法な海外流出を防ぐ意味でデータ保護の必要性は高い。アジア諸国の技術的台頭を背景に法改正された経緯に鑑みると、実刑はやむをえない」とし、男に対し懲役1年2カ月、罰金30万円(求刑懲役2年、罰金50万円)を言い渡しました。
混同惹起罪
他社の商品や商標などとして広く知られているものと同一、または類似した商品を販売したり、商標を使用したりすることで、他社の商品や商標と混同を生じさせる行為は、不正競争防止法で禁止されています。
これに違反すると「混同惹起罪」が成立し5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金または併科(不正競争防止法21条2項1号)を受けることになってしまいます。
有名ブランドのロゴを模倣したり、一部を変えてあたかも有名ブランドの商品かのように販売してしまった場合がこれに該当します。
混同惹起罪の事例
ソニー(株)では、電子応用機械器具などをはじめとし、靴、衣類などにも“ウォークマン”の登録商標を有していました。
そのウォークマンと同一の表示を、看板、商品の包装用袋やレシートなどに使用していたとして、「有限会社ウォークマン」(靴、被服類専門の小売業者)に対し、ソニー(株)が原告となり、“ウォークマン”という表示の使用及び、商号の抹消請求をし、これが認められました。
1996年に判決が出された事例です。
混同惹起罪と同時に成立する犯罪
混同惹起罪にあたる行為をした際、同時に以下のような犯罪が成立するケースも多くあります。
より重い犯罪となることで捜査されたり、起訴されたりし、実刑判決を受ける可能性も十分考えられます。
商標法違反
ロゴなどが、商標法上の「商標」に該当するような場合には、商標法違反にもなる可能性があります。
商標法違反の場合、法定刑はさらに重く、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金または併科となります。
詐欺罪
ロゴなどを一部改変した商品は、いわば偽物でもあります。
偽物を本物かのように偽って販売した場合には詐欺罪を問われる可能性もあります。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役なので、不正競争防止法違反よりも重い罪を科させる可能性があります。
不正競争防止法違反事件を起こしてしまったら
自身や家族が不正競争防止法事件を起こしてしまったら、どのような行動をとったらよいでしょうか。
すぐに弁護士に相談する
不正競争防止法は、営業秘密や商標など、専門性の高い分野が含まれる法律です。
そのため、不正競争防止法違反事件を起こしてしまった場合には、自分で判断せずに専門の弁護士に早期に相談することが必要になります。
上述したように、不正競争防止法違反だけでなく、商標違反や詐欺罪にも発展する可能性があるので、刑事事件にまで広がりをみせるか否かについても、弁護士に早めに相談し、今後の対応についてアドバイスを受けるとよいでしょう。
被害者との示談を進める
前科を避けるための1つの方法は、検察官に不起訴処分にしてもらうために働きかけることです。
そのためには、被害者と早急に示談をする必要がありますが、不正競争防止法違反の場合、被害者は企業や会社になることが多いでしょう。
企業や会社との示談交渉を個人で行うのはかなり困難ですし、大手企業の場合にはそもそも示談を受け付けてくれない場合もあります。
そんな時は、専門の弁護士に依頼して示談交渉を代理で行ってもらうのが得策です。不正競争違反事件の経験豊富な弁護士であれば、示談交渉の中で、損害賠償請求などの民事事件を起こさないように交渉することも可能です。
まとめ
これまで述べてきたきたように、不正競争防止法違反事件は刑事事件の中でも専門性が要求される分野で、示談交渉も慎重に行われる必要があります。
だからこそ、刑事事件専門の弁護士に依頼することが早期解決への第一歩となります。
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