ひき逃げ・当て逃げとは
(1)ひき逃げは10年以下の懲役、100万円以下の罰金
ひき逃げとは、事故を起こして相手方を死傷させた場合に、自動車を停止し、負傷者の救護や道路における危険を防止するため必要な措置をする義務や事故を起こしたことを警察に報告する義務を怠ることです。
何もせずに逃走した場合はもちろん、事故の相手に対して「大丈夫か」等、声をかけただけで去った場合も義務を尽くしたといえず、ひき逃げに当たると判断されることが多いです。
なお、相手が死傷した点は、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった、ひき逃げと別の法律上の罪になります。これとひき逃げは併合罪となり、裁判では合わせて刑について判断されることになります。
(2)当て逃げは1年以下の懲役、10万円以下の罰金
当て逃げとは、死傷者のいない事故を起こした場合に、道路における危険を防止するため必要な措置をする義務を怠ることです。ガードレールにぶつかって、壊れた残骸が道路上に残っているのに放置して去るような場合が当たります。
なお、危険防止の措置が不要な場合も、事故を起したことを警察に報告しないと、報告義務違反として、3月以下の懲役または5万円以下の罰金になります。
ひき逃げの場合、長期の実刑のリスクがあります
以上のように、ひき逃げはそれ自体が重い罪です。加えて、死傷の結果について、自動車運転過失致死傷罪等、別の罪が成立するならば、前述のように合わせて責任を問われることになります。ですから、相手が死亡したり重傷を負った場合には、初犯であっても執行猶予がつかずに刑務所に何年も入ってしまう可能性は十分にあります。
ひき逃げ・当て逃げを起こしてしまったら
①不起訴に向けた活動をする
ひき逃げ・当て逃げを起こしてしまった場合、不起訴に向けた活動としては示談があげられます。
交通事故では、加害者が自賠責保険や任意保険に加入している場合、治療費等の損害の弁償は保険会社が支払うことになりますが、保険会社による損害の弁償とは別に、被害者との間で示談をすることは、不起訴処分を獲得するために、有効性が高いです。なお、当て逃げの場合、物損に保険が対応していなければ、損害の弁償を示談という形で行うこともあります。
示談の内容は、慰謝料や解決金を示談金として加害者が被害者に支払い、被害者に、「加害者を許す」や「加害者の刑事処罰を望まない」旨の意思表示をしてもらう、というものが最良です。もっとも、相手が許す旨の意思表示をしない場合でも、示談は成立します。
相手の怪我が重傷である等、示談のみでは不起訴の獲得が難しい場合には、検察官との面談や意見書の提出を通じて、示談以外の有利な事情があれば提示して、不起訴処分を得られるよう、交渉することもあります。
②減刑に向けた活動
ひき逃げで相手が重傷を負った場合や飲酒運転をしていたなど、裁判になる見込みが高い場合には、実刑でなく執行猶予が付されるように活動することも必要となります。この場合も、示談が成立していれば、減刑に働く事情となりますので、示談が成立していなければ、示談交渉を行います。
ひき逃げ、当て逃げで逮捕、勾留されてしまった場合
身体を拘束された場合、弁護士がいれば身体解放活動を行うことになります。具体的には
①勾留請求前には、検察官へ、勾留を請求すべきでない旨の意見書の提出
②勾留請求後には、裁判所への勾留を認めるべきでない旨の意見書の提出
③勾留決定後には、準抗告(勾留決定に対する不服申立です)を行う
といった活動を、弁護士がついている場合には行います。
意見書や準抗告では、身体を拘束する理由がないことや、釈放の必要性を明らかにして、検察官の勾留請求前には、勾留請求をしないよう、裁判所の勾留決定前であれば、勾留決定自体をしないよう働きかけます。勾留決定後であれば、勾留決定に対する不服申立てをし、勾留決定の取消しを求めます。
身に覚えのないひき逃げ、当て逃げの疑いをかけられた場合
身に覚えのないひき逃げ、当て逃げの疑いをかけられた場合、冤罪を回避するには、取調べ段階での対応が非常に重要となります。弁護士が付いていれば、取調べに同行し、不利な供述を取られないようアドバイスしたり、弁護士の方で供述を記録する等して、疑いをかけられた方の無罪主張をサポートし、そもそも起訴されずに済むように活動します。
仮に裁判になった場合には、無罪を示す証拠の収集や、それらの証拠に基づく立証、検察官側の証拠の信用性を争う等して、無罪判決を獲得できるよう活動します。
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