器物損壊罪とは
「器物損壊罪」は、他人の物を「損壊」した場合に成立する犯罪で、「器物破損罪」と言われることもあります。
器物損壊罪の「損壊」とは、モノの持つ、本来の効用を損なうことを意味します。
例えば、花瓶を割る、スマートフォンを叩き割るなどして物理的にモノを壊すことで、従来通りに使えない状態にすることは「損壊」行為の典型例です。
その他にも、他人の車に引っかき傷をつける、他人の家の塀に落書きするなどの行為も、汚損させることでモノの価値を大幅に低下させるという理由で「損壊」に含まれます。
店や他人の家の食器に、尿などの汚物を入れた場合も、食器として使えなくなることから器物破損罪に問われることがあります。
ペットも器物に分類される
少し違和感を覚えるかもしれませんが、刑法上、ペットはモノとみなされるため、他人のペットを傷つける行為も器物損壊にあたります。
例えば、隣の家の犬の鳴き声がうるさいので、蹴ってケガを負わせるなどすると器物損壊罪に問われる可能性があります。
器物損壊罪では、慰謝料が請求されることは通常ありませんが(慰謝料は被害者の精神的苦痛に対する損害賠償であるため)、ペットが対象の場合に限り慰謝料を請求することができ、実際に認められた判例もあります。
故意ではない場合も罪になる?
では、故意ではなく、過失でモノを損壊してしまった場合はどうでしょうか。
器物破損罪は、“故意”であることが犯罪成立の要件に含まれているため、過失の場合は刑事責任に問われません。
「壊してやろう」「傷つけてやろう」という意志が伴わない、うっかり落とすなどしたことによる「損壊」で罪に問われることはありません。
例えば、混みあった駅の構内で、人とぶつかったはずみで手に持ったスマートフォンを落として壊れてしまった場合、ぶつかった相手を告訴しても受理されません(警察は捜査しない)。
器物損壊罪には現行犯逮捕と通常逮捕がある
器物損壊罪などは、モノを壊したという証拠が必要になるので、現行犯逮捕であることが多いです。
証拠さえあれば後日逮捕も可能なので、故意にモノを損壊をしてその場から逃げ去ったとしても、時間が経過してから逮捕状を持った警官に通常逮捕される場合もあります。
残念ながら、逃げた人物が特定できなければ、犯人の逃げ得になってしまうことも考えられます。
器物損壊罪の刑罰は?
器物損壊罪では、3年以下の懲役、またはは30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。
器物損壊罪は親告罪(告訴がないと起訴できない)なので、被害者が告訴をしなければ罪に問われることはありません。
また、法定刑の軽い罪でもあるので、告訴されても前科がなく、損壊の程度があまりにひどかったり悪質だったりしなければ、不起訴となり何の処罰もなく終わるか、罰金刑で終わることがほとんどです。
悪質性が高い、被害額が大きい場合は実刑も
上述したような、スマートフォンや飲食店の食器の損壊であれば、被害額が小さいため、比較的軽い処分が見込まれます。
しかし、乗用車複数台のボンネットに引っかき傷をつけて回る、多数の自転車をパンクさせて回るなど、損壊した物が多数に上れば、被害額は大きくなり、犯行の悪質性も高いとみなされます。
そのような場合、罰金刑ではなく懲役刑に問われる恐れがあり、最悪の場合、執行猶予なしの実刑になる可能性もあります。
器物損壊事件を起こしてしまったら
器物損壊事件の加害者になってしまった場合、できるだけ処分を軽く、日常生活に支障を来さないようにするためには、どのような対応をしたらよいのでしょうか。
すぐに弁護士に相談する
器物損壊罪は、法定刑の重い罪ではないと上述しましたが、刑事事件全般に言えるように、弁護士のサポートを受けるか受けないかで、結果に大きく差が出ることがあります。
捜査は時間の経過とともにどんどん進展していきます。何もせずにいると処分を軽減するための活動をできないまま、検察官が起訴の処分を下してしまいます。
弁護士に示談をしてもらう
器物損壊事件で前科を回避するためには、被害者と示談することが極めて重要です。
上述したように、器物損壊罪は親告罪のため被害者の告訴がなければ起訴できません(親告罪、刑法264条)。検察官が処分方針を決める前に、被害者と告訴をしない、すでに告訴した場合は取り消すことを内容とする示談をし、その結果を検察官に提出すれば、検察官は不起訴処分を出さざるを得ません。
器物損壊事件では、被害者との示談交渉をどのように進めていくか、どのような内容で合意をするべきかについて、専門的な知見を持つ弁護士になるべくはやく相談することが重要です。
まとめ
器物損壊罪は、比較的軽い罪ではありますが、その分、身近で起こりやすい犯罪であり、ふとしたはずみで起こしてしまいかねないものだということがお分かりいただけたでしょうか?
ご自身やご家族が加害者になってしまった場合、重い量刑に問われることはなかったとしても、やはり前科は避けたい、起訴されてしまったとしてもより軽い処分にしたいと望むのなら、弁護士の力を借りることが欠かせなそうです。
刑事事件を専門に扱う「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」なら、器物損壊罪を数多く円満に解決してきた実績を基に、前科を避けられるよう全力でサポートします。
万が一、逮捕されてしまった場合でも、最短で当日に弁護士が本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供していますので、犯罪の加害者になってしまいお困りの場合は、お早目にご相談ください。