1 略式裁判手続とは
略式裁判手続とは、読んで字のごとく、簡略化された裁判手続のことを指します。通常、裁判というと裁判所の法廷において厳かな雰囲気のもと、裁判官、検察官、弁護人が勢ぞろいし、審理を進めていくというイメージがあると思います。
しかし、この略式裁判手続は、これとは異なり、手続が簡略化されています。
以下では、主に、どのような事件が略式裁判手続の対象となるのか、具体的にはどのような手続を踏むことになるのか、メリット・デメリットは何かという点を説明します。
2 略式裁判手続の対象になる事件
略式裁判手続は、法定刑に罰金又は科料が設けられている犯罪の審理で用いることができます。
具体的には、100万円以下の罰金又は科料は略式裁判による略式命令によって簡易裁判所が支払の命令をすることができます。
略式裁判手続は、通常の裁判手続である公判手続よりも利用頻度が高く、全事件の約8割が略式手続で処理されています。
略式裁判手続で扱われる主な事件類型は交通事犯、過失運転致死傷がほとんどですが、他にも比較的軽微な窃盗、暴行・傷害、建造物等侵入、公務執行妨害等が対象となっています。
3 略式裁判手続のメリット・デメリット
略式裁判手続のメリット
略式裁判手続のメリットは、裁判所で裁判手続が開かれないところにあります。略式裁判手続は、通常の公判手続とは異なり、裁判所に行って裁判をすることはなく、検察官が提出した証拠資料により簡易裁判所が非公開の審理をして刑罰を課すことを可能にしています。
このことからも分かるように、略式裁判手続は、実際に裁判所に行って裁判手続を行う必要がなく、被告人の負担が軽減されるという点でメリットがあります。
略式裁判手続のデメリット
略式裁判手続では、手続簡略化により適正な手続が保障されないおそれがあります。
通常、憲法では被告人に対して「公開した公判廷で正常の公判手続によつて裁判される権利」(憲法37条)を保障しています。この保障は、非公開の秘密裁判によって恣意的な刑罰権行使がされることを防ぎ、もって公正な裁判を受ける権利を保障したものです。
略式裁判手続はまさにこの権利を放棄することになります。
なお、略式裁判手続を利用する際には、前もって説明と書面の作成が必要となります。
具体的には次のような流れになります。
- 検察官が、被疑者に対して略式手続を理解させるために必要な事項を説明。
- 通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げたうえ、略式手続によることについて異議がないか確認。
- 2.のことを明らかにする書面(「略請け」と呼ばれています)を検察官と連名で署名。
- 書面を裁判所に提出(書面を提出しなければ略式裁判手続に移行できないようになっています)。
公開裁判を受ける権利を放棄するかどうかは自由ですし、事後的に正式裁判請求を受けたくなったときには裁判所に対して正式裁判によることの請求をすることもできます(刑事訴訟法465条)。
在庁方式の手続
略式手続では、裁判手続が大幅に簡略化されます。ですが、捜査手続が迅速化するわけではありません。また、検察官に略式起訴され、裁判所から出される略式命令(謄本)を受け取り、検察庁に罰金を納めるというように、略式命令が出るまでにあちこち回る必要も出てきます。
そこで、被疑者・被告人の便宜と効率的な事件処理を図るため、以下の場合には略式命令が発せられた時点で裁判所に同行し略式命令謄本を交付し、罰金科料を仮納付させるところまで1日で済ませるという方式をとることがあります。
・被疑者が逮捕勾留されている場合
・在宅の被疑者でも呼び出しに応じて検察庁に任意出頭している場合
これを在庁(略式)方式、又は待命(略式)方式と呼びます。
4 最後に
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