被害者ができること―捜査段階(裁判になる前)
1、捜査をしてほしい、処罰をしてほしい
犯人をきちんと処罰して欲しいから、捜査機関に動いてほしい場合の対応として被害者ができることは、主に被害届の提出、告訴の2つです。
犯人を処罰して欲しいのに、検察官に不起訴の処分にされてしまい、納得できないときは、検察審査会に審査を申し立てる方法があります。
被害届
被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出をいいます。法的な効果があるものではあるわけではなく、捜査を開始するかどうかは警察の判断になりますが、被害者のある犯罪の場合は事実上、警察はこれの提出をもって捜査を開始することが多いです。
告訴
犯罪の被害者その他の一定の者が、捜査機関に被害事実を申告し、さらに、犯人の処罰を求める意思を表示することをいいます。犯人の処罰を求める意思表示も含む点、警察が告訴を受理すると捜査を開始する義務が生じる点で、被害届とは異なります。
犯罪の中には、告訴がなければ裁判が開始できないものがあります(名誉棄損罪、器物損壊罪等)。これを親告罪と言います。
通常、告訴期間は、犯人を知った時から6か月です。被害者が未成年の場合、法定代理人である親も告訴ができます。
検察審査会
検察官が不起訴とした事件について、検察審査会に審査を申し立てることで、検察審査員が不起訴の相当性を審査する制度です。20歳以上で選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官のした不起訴処分が正しかったかどうかを判断します。
審査の結果、起訴すべきだとなった事件については、裁判所によって指定された弁護士が公訴を提起して、裁判が開始される場合があります
2、加害者がどうなったのか知りたい
加害者がどうなったのか、きちんと処罰を受けたのかを知りたい場合、警察の被害者連絡制度や、検察の処分結果通知制度を利用することが考えられます。
被害者連絡制度
被害者への連絡通知制度として、警察においては、被害者連絡制度が設けられています。
これは、殺人・傷害などの生命・身体に対する被害や、ひき逃げ・交通死亡事故など、一定の犯罪について被害者に担当の警察官から連絡が行くものです。通知される内容は、以下の通りです。
・犯人と思われる者(被疑者)が検挙されたこと
・被疑者の氏名
・処分の状況(事件の担当となった検察庁、処分の結果、事件が起訴された場合には裁判を行う裁判所)
処分結果等の通知制度
被害者は、希望すれば、検察官から、処分結果(起訴の有無など)や、不起訴にした場合には不起訴理由の通知をうけることができます。
3、身体的・精神的損害についてお金を支払ってほしい
犯罪のせいで怪我をしたり、精神的に大きな苦痛を受けたりした場合、被害の弁償をしてほしいと思う方も多いでしょう。そんな場合は、犯人と示談をする方法や、犯罪被害者等給付金制度を利用する方法があります。
示談
事件を、当事者の話し合いで解決する方法です。示談の中で犯人から示談金の支払いを約束してもらうことで、被害の弁償を受けることができます。
加害者に弁護士がついていた場合、示談金の落としどころや不利な示談を結ばされるか不安に思うことがあるかもしれませんが、被害者の方も弁護士をつけることにより妥当な解決を図ることができます。
示談は、捜査段階だけでなくそれ以後も可能です。しかし、加害者の身体拘束が長く続いたため、職場をクビになり被害弁償金を十分に支払えなくなるような場合もありえるので、早めに示談をする方がよい場合もあります。
犯罪被害者等給付金制度
殺人などの故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた犯罪被害者の遺族や、重い怪我を負うなど重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、国が給付金を支給する制度です。
ただし、不支給事由、給付制限、2年の時効消滅などの問題がありますので、犯罪被害者等給付金制度についてご相談がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へお問い合わせください。
被害者ができること―裁判になったあと
1、事件の情報を知りたい(記録の閲覧・謄写請求)
第1回公判前(一番最初の裁判が開かれる前)は検察官に対し請求することによって、第1回公判後は裁判所に対し請求することによって、捜査機関による捜査記録及び裁判所における公判記録の一部を閲覧・謄写できます。
2、加害者に対して自分の思いを伝えたい(心情意見陳述、被害者参加制度)
心情意見陳述
被害者は、被害に関する心情や、事件についての意見を述べることができます。
被害者が述べた意見の内容は、被告人の刑罰の重さに影響することもあります。
被害者参加制度
一定の重大な犯罪について、被害者が、情状証人(加害者の家族など、加害者の今後の監督を約束することで、加害者の罪を軽くしようとする証人)や被告人本人への尋問・質問をしたり、どういう刑を科して欲しいかといった意見を述べたりすることができます。
なお、被害者やその法定代理人から委託を受けた弁護士もかかる制度の申し出をすることができます。
3、身体的・精神的損害についてお金を支払ってほしい
刑事和解
被告人と被害者が、示談等の内容を刑事裁判の公判調書(裁判所が作る、裁判の記録)に記載することを共同して求める制度です。
これにより、裁判所を通じて示談が成立したのと同様の効果を得ることができ、もし、加害者が支払いを怠った時などに、強制執行をすることが可能となります。
損害賠償命令
一定の犯罪について、簡易・迅速な手続きによって、被告人に被害者への損害賠償を命じるよう裁判所に申立てることができます。民事訴訟に比して労力と費用の負担が少ない点がメリットです。
一方、損害賠償の審理および裁判は、刑事被告事件の終局裁判の告知があるまでは行われませんので、示談のような極めて早期の解決は望めません。
また、交通事故等で過失の割合や後遺症が問題となる事件のように、複雑な問題がある場合にはなじまない制度です。
被害者の方が損害賠償命令制度を利用しようとする場合には、被害者との間で別途委任契約を締結する必要がありますので、損害賠償命令制度について何か疑問がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。
加害者に自分の住所や個人情報を知られたくない
1、逮捕状・勾留状の被害者情報秘匿
性犯罪等では、加害者に住所・氏名を知られると、再び被害に遭うのではないかと不安に思う方も多いでしょう。そこで、性犯罪やストーカー事件等については、匿名で逮捕状・勾留状を発布する運用がなされています。
2、被害者特定事項の秘匿
被害者の情報が、裁判の中、公開の法廷で明らかにされると、被害者の方に2次被害が生じてしまうこともあります。
そこで、裁判所は一定の場合、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。
被害者として法廷で証言したいが、加害者と会うのは怖い
1、付添い制度
裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢などの事情を考えて、証人が強い不安又は緊張を覚えるおそれがある、と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いたうえで、そばにいれば安心できる人を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができます。
2、遮蔽制度
裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質や証人の状態などからして、証人が被告人(加害者)の目の前で供述すると強く動揺を受けそうな場合は、被告人とその証人との間で、一方から又はお互いに相手が見えないようにする措置をとることができます。
3、ビデオリンク制度
裁判の関係者が、テレビモニターを使ってその姿を見ながら、マイクを通じて証人尋問を行うものです。これまでは、同じ裁判所構内の別室に在席する証人に対して行われていましたが、2018年6月1日から施工された改正法では、同一構内以外の裁判所(別の裁判所)でも、一定の場合にビデオリンク制度が導入されることとなりました。
4、退廷制度
裁判所は、証人が充分な供述をできないと判断するときは、被告人や傍聴人を一時退廷させることができます。
5、加害者側の対応は?
加害者としては、事件を認めた上で、被害者に謝罪と弁償をしたいということであれば、弁護士を通じて、示談交渉をすることが考えられます。
逆に、事実を徹底的に争いたい場合、被害者に対する裁判での反対尋問が重要になります。その場合、証言をする被害者に遮蔽やビデオリンクの対応をされてしまうと、効果的な反対尋問ができなくなってしまうおそれがあるといえます。ですから、弁護士を通して、こうした措置が取られないように裁判所に意見を述べていくことになります。
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