強盗罪とは
強盗罪とは、「暴行、または脅迫を用いて、相手から財物を奪う」行為です。
財物を奪う手段として暴行や脅迫が用いられていること、それにより相手が抵抗できない状態にさせていることが、犯罪成立の要件となります。
強盗には、大きく分けて2つの種類があります。
・一項強盗
私たちがイメージする強盗は、一項強盗という「相手を暴行や脅迫することにより、財物奪う」強盗です。コンビニの店員をナイフで脅し、レジの現金を奪うなどの強盗がこれにあたります。
刑法236条1項に規定されていることから、一項強盗と呼ばれています。
・二項強盗
二項強盗は、「相手を暴行や脅迫する」という手段は、一項強盗と同じですが、それにより「財産上、不法な利益を得た場合、またはは第三者に得をさせた場合」に成立します。
例えば、タクシーで乗車料金を請求された際、タクシー運転手を暴行し、料金を踏み倒す行為などがこれに該当します。
刑法236条2項に規定されていることから、二項強盗と呼ばれています。
強盗容疑で問われるさまざまな罪と量刑
一言に強盗といっても、そこから派生する罪も含めてさまざまな罪があります。「強盗」という言葉が含まれている罪は以下のとおりです。
① 強盗罪 5年以上の懲役
② 強盗予備罪 2年以下の懲役
③ 事後強盗罪 5年以上の懲役
④ 昏睡強盗罪 5年以上の懲役
⑤ 常習特殊強盗罪 7年以上の懲役
⑥ 常習累犯強盗罪 7年以上の懲役
⑦ 強盗傷人罪、強盗致傷罪 無期又は6年以上の懲役
⑧ 常習強盗傷人罪 無期又は10年以上の懲役
⑨ 強盗殺人罪、強盗致死罪 死刑又は無期懲役
⑩ 強盗・不同意性交等罪 無期又は7年以上の懲役
⑪ 常習強盗・不同意性交等罪 無期又は10年以上の懲役
⑫ 強盗・不同意性交等致死罪 死刑又は無期懲役
①強盗罪
相手を暴行や脅迫することにより財物奪う「一項強盗」と、相手を暴行や脅迫することにより、財産上不法な利益を得た場合、または第三者に得をさせた場合に成立する「二項強盗」があります。
②強盗予備罪
「強盗を企て、準備をした行為」により問われる犯罪です。
③事後強盗罪
窃盗犯が、財物を奪ったのち、これを取り返されることを防ぐため、または、逮捕を免れ罪証を隠滅するために、被害者を暴行、または脅迫した場合に成立します。
コンビニで万引きをした者が、店員に呼び止められた際、逮捕を免れるために殴る蹴るの暴行を加えた、などのケースが該当します。
④昏睡強盗罪
相手を意識喪失させた状態、または運動機能を著しく低下させた状態にしたうえで、財物を奪うと、「昏睡強盗罪」が成立します。
睡眠薬で被害者を眠らせたり、お酒を大量に飲ませ酩酊状態にさせたりした上で、現金を奪うなどの行為が該当します。
⑤常習特殊強盗罪
常習的に凶器を携帯したり2人以上共同してしたりして強盗を犯した場合に「常習特殊強盗罪」が成立します。
常習特殊強盗罪は、刑法ではなく「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」に規定があります。
⑥常習累犯強盗罪
常習的に強盗を犯し、かつ10年以内に3回以上6月の懲役刑以上の刑の執行を受けている者には、「常習累犯強盗罪」が成立します。
常習累犯強盗罪は、常習特殊強盗罪と同様に「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」に規定があります。
⑦強盗傷人罪、強盗致傷罪
強盗を行う過程で、相手を傷つける意思を持って負傷させた場合、「強盗傷人罪」が成立します。
怪我をさせるつもりはなかったものの、負傷させてしまった場合には、「強盗致傷罪」になります。
裁判員裁判対象事件です。
⑧常習強盗傷人罪
常習として強盗傷人罪に当たる行為をすると「常習強盗傷人罪」が成立します。
「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」に規定があります。
裁判員裁判対象事件です。
⑨強盗殺人罪、強盗致死罪
強盗する過程で、殺意を持って被害者を殺害した場合には「強盗殺人罪」、殺害するつもりはなかったものの、結果的に死亡させてしまった場合には「強盗致死罪」が成立します。
法定刑は非常に重く、死刑または無期懲役しかありません。
当然、裁判員裁判対象事件です。
⑩強盗・不同意性交等罪
強盗犯または、その未遂犯が、被害者に対し不同意性交等をした場合、もしくは、不同意性交等を行った犯人、もしくはその未遂犯が強盗行為をした場合に成立します。
犯行の機会に、被害者に傷害を負わせた場合は、傷害は情状として考慮されます。
裁判員裁判対象事件です。
⑪常習強盗・不同意性交等罪
常習として強盗・不同意性交等を犯した場合には、「常習強盗・不同意性交等罪」が成立します。
法定刑の上限は強盗・不同意性交等罪と同じで無期ですが、下限が10年以上と重くなっています。
裁判員裁判対象事件です。
⑫強盗・不同意性交等致死罪
強盗・不同意性交等の犯人が、被害者を死亡させた場合に成立します。
法定刑は非常に重く、死刑又は無期懲役しかありません。
当然、裁判員裁判対象事件です。
処分の見込み
強盗罪は重大犯罪なので、刑罰は懲役刑のみになります。
執行猶予付きの判決を狙うのであれば、刑の減軽が必要です。
また、強盗殺人罪、強盗致死罪、強盗・不同意性交等致死罪には時効がありません。
強盗罪と恐喝罪の違いは
強盗と恐喝は、いずれも財物を取得するために、相手を暴行または脅迫する点が共通しています。違いは、暴行または脅迫の程度です。
強盗の暴行または脅迫は、相手の反抗を抑圧させるに足りる程度のものです。一方、恐喝の暴行または脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りない程度のものです。より激しい暴行または脅迫を加えた場合が強盗罪になります。
強盗罪と窃盗罪の違いは
窃盗は、他人の財物を盗み取ることを言います。他人の物を不当に取り上げる点では強盗と共通しますが、強盗のように「暴行や脅迫」を用いないところに違いがあります。
そのため、強盗よりは法定刑が軽く、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
強盗罪の容疑をかけられたら
家族や知り合いなどが強盗の罪を犯してしまった場合、少しでも処分を軽くし、社会的な影響を小さくするために、どのような対応をしたらよいのでしょうか。
・なるべく早く弁護士に相談
突然逮捕された場合でも、専門の弁護士に相談することで今後の流れや処分の見通しについて知ることができます。取り調べ時の対応や受け答えの仕方などについても、適切なアドバイスがもらえるので不安が軽減できます。
・身体拘束からの解放
身体拘束されると、生活に大きな支障が生じるだけでなく、孤独な日々が続くことで肉体的にも精神的にも大きな負担を強いられます。
弁護士に依頼すれば、早期の身体拘束からの解放に向けた活動が可能となり、裁判に向けた準備もしやすくなります。
・示談交渉
強盗事件では、初犯で被害額が小さければ、被害弁償や示談が成立していることで不起訴処分になる可能性もゼロではありません。被害者の感情を考慮すると、加害者が自ら示談交渉をするのは得策ではないので、弁護士に間に入ってもらいましょう。被害者が冷静に交渉に応じてくれ、示談交渉がスムーズに進むことがあります。
・公判弁護
刑事裁判になった場合、無罪主張はもちろんのこと刑の減軽、執行猶予付きの判決を求めるのであれば、法廷での弁護活動が欠かせません。強盗傷人罪や強盗殺人罪、強盗・不同意性交等致死罪などは裁判員裁判対象事件なので、裁判員裁判について豊富な経験がある刑事専門の弁護士に依頼すれば不安が軽減できます。
お困りの方は
強盗事件のことでお困りの方、処分の見込みを知りたいという方、示談交渉に苦労している方は、刑事事件に詳しい弁護士事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に特化した弁護士と専門のスタッフが、無料の法律相談を行っています。ご家族などの関係者が逮捕されてしまった場合には、最短で当日に、弁護士がご本人のところへ出張面会しに行く初回接見サービスもご用意しています。