ネット犯罪とは
ネット犯罪とは、コンピュータネットワークを介して行われる犯罪の総称ですが、ここでは主に、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」、「不正指令電磁的記録に関する罪」の違反について解説していきます。
不正アクセス禁止法
不正アクセス禁止法とは、正式名称を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」と言います。
SNSのアカウントの乗っ取りなどが典型的なものですが、不正アクセス禁止法では、3つの不正アクセス行為と、不正アクセス行為に繋がる4つの行為を禁止しています。
ここでは、それら7つの行為と、その罰則について説明します。
3つの不正アクセス行為
1.なりすまし行為
アクセス制御機能がついている情報機器(PCやスマートフォンなど)やサービスに対して、盗み出した他人のIDやパスワードを無断で用いて他人になりすます行為です。
2.アクセス制御を免れる行為
PCやスマートフォンなどの、アクセス制御機能を免れることができる情報や指令を入力し、本来、IDやパスワードがないと利用できない領域を利用できるようにする行為です。
3.アクセス制御を免れたPCから、別のサーバーやPCを利用する行為
上で説明した、アクセス制御を免れる行為を利用し、アクセス制御された別のPCやサーバーを利用できるようにする行為です。
例えば、ある企業のサーバーに侵入したいと考えた場合、企業のサーバーのセキュリティは堅牢なので、社員の個人PCに不正に入り込み、そこからアクセスできるようにする行為が、これにあたります。
上で説明した3つに該当する行為を行った場合、いずれも3年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。
不正アクセス禁止法に触れる4つの禁止行為
1・他人のIDやパスワードを不正に取得する行為
2.他人のIDやパスワードを、権限のない第三者に提供する行為
3.他人のIDやパスワードを不正に保管する行為
4.IDやパスワードの入力を不正に要求する行為
(金融機関のログイン画面を偽装し、ログインIDやパスワードを入力させる行為など)
以上4つの禁止行為を行うと、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せされます。
不正アクセス行為の事件例
バーコード決済サービスでのアカウント乗っ取り
2019年7月、スタートしたばかりのバーコードを利用したキャッシュレス決済サービスにおいて、第三者が何らかの方法でアカウントを乗っ取るという事件が発生しました。
犯人は、利用者が登録したクレジットカードやデビットカードからチャージを行い、店舗で勝手に商品を購入していました。
不正指令電磁的記録に関する罪
「不正指令電磁的記録」とは、主にコンピューター・ウィルスのことを指しており、コンピューター・ウィルスによる被害を防止するために設けられた犯罪です。
この犯罪には、以下の2種類があります。
不正指令電磁的記録作成罪
コンピューター・ウィルスのプログラムを作成した場合と、それをコンピューター・ウィルスだと知っている第三者に交付(支配を移転)した場合、またはそれと知らない第三者に、コンピューター・ウィルスだと伝えた上で提供することで、罪に問われます。
本罪の刑事罰は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
不正指令電磁的記録供用罪
コンピューターウイルスが含まれるデータを添付ファイルとして電子メールで送信し、受信者のパソコンをコンピューターウイルスに感染させる行為などがこれにあたります。
「不正指令電磁的記録作成罪」と同じく、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
不正指令電磁的記録に関する罪の事件例
「ランサム(身代金)ウェア」を自作し中3男子が逮捕される
2017年6月、「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるコンピューターウイルスを自作したことにより、大阪府内の中学3年の男子生徒(14)が不正指令電磁的記録作成・保管の疑いで逮捕されるという事件が発生しました。任意の捜査に学生は「力試しに作ってみたらできた」と話していたそうです。
ネット犯罪を起こしてしまったら
ネット犯罪で自分や家族が被疑者になってしまった場合、どうしたらよいか分からない…、どうしよう…と悩まずに、早急に弁護士に依頼し、事件と向き合うことが大切です。
すぐに弁護士に相談する
自分のしたことがそもそもネット犯罪に当たるのか、どのような刑罰を受けることになるのかなど、ネット犯罪について詳しい知識がないと疑問の連続だと思います。
そういった疑問を解消し、適切に対応していくためにも、刑事事件全般に精通した弁護士に早急に相談することが重要です。
今後の捜査に備える
ネット犯罪は、重大なものから軽微なものまで、その程度も、取るべき対応も様々です。
例えば、犯罪の成立自体に嫌疑があるような事案であれば、専門家の意見を聴取したうえで早期に意見書を作成するなどして備えます。
また、ネット犯罪では、ネット上に痕跡が残っていることも多いため、犯行が発覚する前に自首したほうがよいケースもあります。
示談交渉をする
ネット犯罪は、インターネットを介して行われる犯罪なので、加害者と被害者とが知り合いではないことも多く、被害者に直接謝罪したり示談交渉したりすることは非常に困難です。
このような場合には、弁護士を介して被害者の方に謝罪したうえで、示談交渉を進めるのが好ましいです。
身体解放に向けて活動する
ネット犯罪により逮捕された場合には、逃亡したり、被害者やその他の証拠に不用意に接触したりすることのないような環境を作り、検察、裁判所にそれらの事情を主張していくことで早期の釈放を目指します。
無罪を争う
ネット犯罪では、疑いをかけられた行為を精査していくと、犯罪が成立しないと考えられる場合があります。
パソコンが遠隔操作されたなど、自己の意図しないところで犯罪が行われたなどのケースでは、専門家らと協議の上で無罪主張を固め、それに即した証拠を収集し、捜査・裁判に適切に対応していくことが求められます。
まとめ
ネット犯罪は拡大しているとはいえ、まだまだ一般の方にはピンとこない部分も多い犯罪です。家族がネット犯罪で逮捕されても、一体どんな罪を犯したのか、これからどんな展開になっていくのか、分からない方も多いはずです。
ネット犯罪のことでお困りなら、「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」へご相談ください。
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万が一ご家族がが逮捕された場合でも、最短で当日に本人のところへ接見へ行くサービスも提供していますので、ご家族間での連絡もスムーズに行えます。