過失致傷罪・過失致死罪とは
過失致死傷罪とは、「過失」により人を怪我させたり、死亡させてしまったりすることで成立する犯罪です。
“過失”なので、誰かを傷つけよう、殺してやろうなどの「暴行する意志」や「殺意」はなく、簡単に言うと、不注意により起きてしまった事故によるものです。
暴行する意志を持って怪我をさせたり死亡させたり場合は「暴行・傷害罪」や「傷害致死罪」、殺意を持って相手を死亡させた場合は「殺人罪」という重犯罪が成立します。殺人罪の場合は、死刑・無期懲役・5年以上の懲役などの、重い法定刑に問われます。
「過失致死傷罪」の典型的なもののひとつに交通事故があります。
例えば、自転車の運転中、前方を歩いていた歩行者を轢いて怪我させてしまったとします。この場合、自転車の運転手には、前方を注視して運転する義務があったにもかかわらず、それを怠った「前方注視義務違反」にあたるとみなされます。この「過失」により、歩行者が怪我を負ってしまったことから、「過失傷害罪」が成立することとなります。
この事故により歩行者が死亡してしまった場合には、「過失致死罪」が成立するということになります。
過失致死傷罪・過失致死罪の刑罰は?
過失致傷罪は30万円以下の罰金または科料、過失致死罪は50万円以下の罰金が科せられます。
過失の度合いや、過失を起こした際の状況によって、罪状も刑罰の重さも変わってきますので、以下から詳しく説明していきます。
重大な過失による「重過失致死傷罪」
「重大な過失」により人を死傷させた場合には「重過失致死傷罪」が成立します。
「重大な過失」とは、著しい注意義務違反があったことを意味します。例えば、自転車運転中に携帯電話を操作しながら、または通話しながら運転していたなど、明らかかつ程度の大きい注意義務違反があった場合には、“重過失”が肯定される傾向にあります。
発生した事故の大小や怪我の程度には関係なく、重過失は認められます。
「重過失致死傷罪」では、単なる過失致死傷罪よりも責任が加重され、刑罰も重くなり、「5年以下の懲役、もしくは禁錮または100万円以下の罰金」が科せられます。
一番大きな違いは、重過失致死傷罪の場合は、刑罰の中に懲役禁錮刑が含まれていることです。
また、過失致死傷罪では、裁判にかけられることなく略式命令がなされるのに対し,重過失致死傷罪の場合は公判請求され、裁判にかけられる可能性があるという違いもあります。
勤務中の過失による「業務上過失致死傷罪」
「業務上必要な注意を怠った」ことで人を死傷させた場合には、「業務上過失致死傷罪」が成立します。
「業務」とは、何らかの仕事を行っている場合を指します。仕事中の行為であれば何でも該当するわけではなく、人を死傷させる危険のある業務が「業務上過失致死傷罪」でいうところの業務にあたります。
例えば、冒頭で紹介したような仕事中のコンテナ作業では、コンテナの落下などにより人が死傷するおそれがあるので、これを誤作動させたことは「業務上必要な注意を怠った」ことにあたります。この事故により、誰かを怪我されたり、死亡させたりした場合には「業務上過失致死傷罪」が成立します。
同じく業務中の事故であっても、トラックなどの車を運転中の事故は、「車運転過失致死傷罪」に問われます。
「業務上過失致死傷罪」もやはり、過失致死傷罪よりも責任が重く、「5年以下の懲役、もしくは禁錮または100万円以下の罰金」が科せられます。「重過失致死傷罪」と同じく、公判請求されて裁判にかけられることがあります。
「重過失致死傷罪」「業務上過失致死傷罪」では実刑のおそれも
注意義務違反の程度が著しく、そして子どもを複数人死傷させるなど、過失による事故の結果が極めて重大であれば、公判請求され、最終的に実刑判決が下されるおそれがあります。
過失致死傷罪等を起こしてしまったら
不注意による事故なので、誰しもが加害者になる恐れのある非常に身近な犯罪と言えます。そのため、自身や家族が加害者になってしまったときにどのような対応をとればよいか、知っておくとよいでしょう。
すぐに弁護士に相談する後述するように,上記した犯罪類型では被害者又は被害者遺族との示談がとても重要です。捜査が進捗し,検察官の起訴処分が出てきてからでは示談等の有利な事情を提出しても不起訴処分を獲得することはできません。少しでも有利な事情を獲得するために弁護士が早く動き出す必要があるのです。
被害者または被害者遺族と示談する「過失致死傷罪」は、告訴がなければ起訴できない犯罪類型であるため(刑法209条2項)、被害者と示談し、告訴しない、または告訴を取り下げるということで合意できれば不起訴となる可能性が高まります。
「業務上過失致死傷罪」は「重過失致死傷罪」の場合は、告訴がなくとも起訴される可能性がありますが、怪我の程度が軽ければ、被害者との示談により不起訴になる見込みはあり得ます。
過失によって人が死亡した場合、遺族との示談交渉が難航する可能性が考えられますし、示談が成立したとしても起訴される可能性は高いです。
でも、示談が成立していることは執行猶予判決の可能性を高めるための重要な要素なので、死亡事故だからと言ってあきらめずに早めに弁護士に相談し、示談交渉に向けた準備を進めてもらいましょう。
逮捕勾留された場合、弁護士に身体解放を依頼
過失致死傷罪の場合、身体を拘束されるのリスクはそれほど高くはありませんが、業務上過失致死罪や重過失致死罪で過失の程度が著しい場合には、身体を拘束されるリスクが高まります。
身体を確保された場合は、弁護士を通じ、身体解放に向けた活動をしてもらうことができます。
身体解放されれば、後に始まる裁判の準備がスムーズにできるので、身体解放に向けた働きかけを弁護士に依頼しましょう。
まとめ
過失致死傷事件で「前科を避けたい」「執行猶予判決が欲しい」なら、被害者側との示談交渉が欠かせません。加害者側が、被害者と直接交渉してもうまくいかない可能性が高いので、事件が発生したらできるだけ早く、弁護士へ依頼するようにしましょう。
依頼する弁護士事務所を探す際は、「過失致死傷罪」をはじめとした刑事事件を数多く扱う刑事事件専門の弁護士事務所であることを条件に入れるのがよいでしょう。
「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」なら、刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行ってくれます。
数多くの過失致死傷事件を円満解決してきた実績を基に、前科を避けれられるよう全力でサポートしてくれるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。