公務執行妨害罪とは
まず、公務執行妨害罪とは、職務を行っている警察官などの公務員に対して,暴行又は脅迫を加えた場合に成立する犯罪です。
刑法95条1項において、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者」と記載されています。
「公務員」とは、国または地方公共団体の職員などをいいますが、具体的には役所の職員、警察官、消防士、教員などがあたります。
「職務」は特に限定されておらず、公務員が取り扱う事務の全てが対象となります。もっとも、プライベート中の公務員に対して暴行を加えた場合には、本罪は成立せず、暴行罪が成立することになります。
「暴行又は脅迫」とは、公務員の職務を妨害する程度で十分であると考えられています。なので、公務員に対して殴るなどの直接的な暴行を加えなくとも、職務の妨害をしているといえる程度の行為であれば間接的なものであっても暴行にあたると考えられています。
例えば覚せい剤取締法違反の現行犯が、現場で警察官が差し押さえた注射器を足で踏みつけて破壊した場合には本罪が成立すると考えられています。
公務執行妨害罪は3年以下の懲役・禁錮,50万円以下の罰金
の罰則を受けることになります。なので、警察官からの職務質問中に、抵抗して殴ったり、市役所の職員に対して腹が立ち殴ったりすれば、懲役刑に科されることもあるのです。
本罪の被害者とは
条文を見ると本罪の被害者は暴行、脅迫を受けた「公務員」個人だと考えられます。しかし、実際には、「公務員」個人ではなく、「国」になります。これは、公務執行妨害罪で保護しているのは「公務員」個人ではなく、公務員が行っている「公務」と考えられているからです。
他の犯罪との関係について
公務執行妨害の手段として暴行を用いた場合、相手方が怪我をしていなければ、暴行罪は別途成立せず公務執行妨害罪のみが成立します。
一方、相手方が怪我をした場合には、公務執行妨害罪のほかに傷害罪が成立することになり、公務執行妨害罪と傷害罪は観念的競合として処理されます。そのため、より重い傷害罪の法定刑の範囲内で処断されることになります。
身体拘束されてしまった場合
もし,公務執行妨害罪で逮捕勾留され身体を拘束されてしまった場合,身体拘束が長期化すれば,その間学校や仕事には当然行くことが出来なくなるので,日常生活に多大な影響を及ぼすことになります。
日常生活を取り戻すためにも少しでも早く身体を解放される必要がありますので,そのためには弁護士による準抗告等の身体拘束からの解放に向けた活動を行うことが有用です。起訴される前の準抗告という不服申し立てには費用は掛かりませんが,起訴後の保釈請求をした場合には,保釈保証金という費用が必要になります。このことから,出来るだけ早く弁護士が対応していくことが重要になります。刑事事件専門弁護士であれば,より豊富な経験と知識をもとに早期の身体解放活動を行うことができます。
公務執行妨害罪を起こしてしまったら
・すぐに弁護士に連絡する
少しでも早く弁護士に相談することが重要です。逮捕されている場合には,すぐに接見に行き,事情を聞いたうえで取り調べにどのように対応すべきかをアドバイスします。そして,早期の身体解放のための活動にすぐに取り掛かります。
・被害弁償、示談を行う
先ほど,公務執行妨害罪の被害者は「公務員」ではなく,「国」であると述べました。しかし,自分の行為が公務執行妨害罪にあたることを争わない場合には、反省の上、実質的な被害者である公務員との間で被害弁償、示談を行うことはとても重要な活動といえます。
被害弁償や示談ができれば、刑が軽くなり、場合によっては前科のつかない不起訴(起訴猶予)処分になる可能性が出てきます。また、被害弁償や示談ができれば、釈放の可能性が上がるため逮捕・勾留による身体拘束からの解放にもつながります。公務執行妨害事件では、組織の意向もあるため公務員が示談に応じてくれるケースは少ないですが、示談までに至らなくとも被害弁償は受けてもらえる場合はあります。
謝罪や被害弁償で誠意を示すとともに、再発防止策を講じるなどして実質的な被害者である公務員の被害感情を和らげる努力をしていくことが大切です。
否認する場合
また,本罪の成立を争っている場合には,そのサポートをしていきます。
本罪の場合には,成立するためには当該職務が「適法」であることが必要になります。違法な職務に関しては本罪が成立することはありません。
「適法」であるかどうかは①職務の執行が当該公務員の抽象的職務権限に属すること,②当該公務員がその職務行為を行う具体的職務権限を有すること,③その職務の執行を有効にする法律上の手続又は方式の重要部分を履践していることが必要になります。その中でもよく問題になるのが③についてです。以下,裁判例に基づいて解説します。
警察官は逮捕状を緊急執行するときには,法律により,その者に対して被疑事実の要旨と逮捕状が出ていることを告げることが必要になります。しかし,単に逮捕状が出ていることを告げただけで逮捕しようとした場合には,③の要件が満たされていないとして「適法」とはいえないと判断されています。
つまり,「適法」であるかどうかは,経緯や事実の内容を整理して,しっかり確認することが必要になってくるのです。
そのうえで,仮に「適法」であった場合でも,当該行為が偶然的に生じたのではないか,公務員側にも落ち度があったのではないかなど当該行為に至る経緯等を考慮したうえで,早期の身体解放活動,より軽い処分に向けた活動を行っています。
さらには弁護士が直接本人から事件のことに関する供述を正確に聞き取り,書面として証拠化することも可能です。そして本人に言い分をもとにその言い分を裏付ける有利な証拠を収集します。
前科を避けるためには
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