埼玉県川口市 逮捕 万引き(窃盗)で実刑判決
- 2020.01.28
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 さいたま支部
万引きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 さいたま支部が解説します。
埼玉県川口市に住む主婦のAさんは,令和元年12月24日、埼玉県川口市にあるスーパーで惣菜2点(販売価格550円)を万引きしたところ保安員に見つかり窃盗罪の現行犯で逮捕されてしまいました。実は、Aさんは、過去5回、万引き(いずれも窃盗罪)で検挙されたことがあり、そのうち3回は刑務所に服役しました。1回目の服役は平成21年7月2日から平成22月1月1日(懲役6月)まで、2回目は、平成25年4月1日から同年12月1日(懲役8月)まで、3回目が、平成29年3月1日から平成30年1月1日(懲役10月)まででした。逮捕後、Aさんは、窃盗罪ではなく常習累犯窃盗罪で起訴されました。
(フィクションです。)
~ 万引きと窃盗罪 ~
万引きに当たる罪といえば窃盗罪です。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
しかし、Aさんのように万引きなどの窃盗罪を繰り返した場合は常習累犯窃盗罪という、通常の窃盗罪よりも重たい罪に問われる可能性があります。
常習累犯窃盗罪は「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律(以下、法律)」の3条に規定されています。
この法律は大正15年に成立・施行したとても古い法律です。
ですから、法律3条もカタカナで記載されていますが、ここでは分かりやすいようにひらがなで表記したいと思います。
法律3条
常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又はその未遂の罪を犯したる者にしてその行為前10年内にこれらの罪又はこれらの罪と他の罪との併合罪に付き3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る
この規定を分解すると、常習累犯窃盗罪が成立するための要件は、
①前条に掲げたる刑法各条の罪(刑法235条(窃盗)、236条(強盗)、238条(事後強盗)、239条(昏睡強盗))の罪又はこれらの未遂の罪を犯したこと
②①記載の犯罪を常習として犯したこと
③①記載の犯罪又はそれらの犯罪と他の犯罪との併合罪につき、懲役6月以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たことがあること
④③が、行為前の10年以内に3回以上あること
となります。
まず、Aさんは窃盗罪に当たる今回万引きをしていますから①の要件は満たします。
次に、②「常習として」とは、反復して特定の行為を行う習癖をいいます。常習性の有無については、行為者の前科・前歴はもちろん、性格、素行、犯行の動機、手口、態様、回数などを総合的に検討して判断されます。この点、Aさんの過去の犯罪歴を見る限り②の要件を満たすと考えざるを得ません。
③「①記載の犯罪」とは、刑法235条(窃盗)、236条(強盗)、238条(事後強盗)、239条(昏睡強盗)の罪又はこれらの未遂罪をいいます。
「刑の執行を受け」とは、刑務所内に服役したことを意味します(執行猶予が取消され、服役した場合はもちろん含まれます)。この点、Aさんは、いずれも窃盗罪で懲役6月、懲役8月、懲役10月の服役を経験しています。したがって、③の要件も満たします。
最後に、④「10年以内」とは、10年以内の3回の刑のうち最初の刑の執行終了日が10年以内であれば足り、その執行開始日が10年以内である必要はないと解されています。この点、Aさんの最初の刑の執行終了日は平成22年1月1日です。そして10年以内の起算点は行為時、つまり令和元年12月24日ですから④の要件も満たすことになります。