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オンライン授業 わいせつ物頒布事件 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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オンライン授業 わいせつ物頒布事件

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部

 

オンライン授業のわいせつ物頒布事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

東京都中央区にあるL大学において、同大学の教授のJは、授業中にアダルトサイトを画面共有した。Jは当初、講義に集中しており画面共有に気付かなかったが、5分後、画面にアダルトサイトが映し出されているのに気付いた。Jは、「これはまずい。でも生徒の反応が気になる。」と思い、講義終了まで同画面を共有し続けた。その後、Jの講義を視聴していた学生がL大学に報告したため、Jは月島警察署に逮捕された。

この場合、Jは何の罪に問われるでしょうか。

*フィクションです。

 

・わいせつ物頒布等罪の成否

 

近年、大学では対面授業のみならず、学生がパソコン等で講義を視聴する、オンライン授業が増えています。そしてオンライン授業では、教授が見せたい画面を学生と共有する、画面共有を行うことが多々あります。今回のケースでは、オンライン授業での教授によるアダルトサイトの画面共有について取り扱います。このような場合、どのような罪が成立するのか、以下検討します。わいせつ物頒布等罪については、刑法175条に記されています。

 

第175条(わいせつ物頒布等)

1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 

犯罪が成立するには、「構成要件に該当し違法且つ有責な行為」である必要があるので、構成要件に該当するか、から検討します。今回は所持又は保管していないので1項を検討します。

第一に、「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を」ですが、「わいせつ」とは、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」を指します。そしてその判断は、社会通念に照らし一般人を基準に客観的に判断されます。簡単にいうと、一般人から見て性的であり、恥ずかしいと思わせるものが「わいせつ」にあたるということです。「図画」とは絵画、映画、写真等をいい、「電磁的記録に係る記録媒体」とは画像データを記憶・蔵置させたハードディスク、USB、SDカードなどをいいます。今回のケースでは、Jはアダルトサイトを画面共有しましたが、アダルトサイトのサーバコンピューターにはわいせつ性を有する画像データが記憶・蔵置されています。よって、アダルトサイトのサーバコンピューターは、「わいせつな…電磁的記録に係る記録媒体…を」に該当します。

 

第二に、「頒布し、又は公然と陳列した者は」ですが、本罪の「頒布」とは、わいせつな物・電磁的記録を不特定又は多数人に対して交付することをいい、「公然と陳列」とは、わいせつ物を不特定又は多数人が認識できる状態に置くことをいいます。判例では、ネットのホームページにわいせつ画像のデータを記憶・蔵置し、ネットの利用者が容易にアクセスして画像を再生閲覧することを可能にさせた行為について、「公然と陳列」に当たるとしました(東京地判平8・4・22)。今回のケースでは、Jは授業中にアダルトサイトを画面共有しましたが、かかる行為によって、本講義を受講している学生全員が、アダルトサイトを見ざるを得ない状態に置かれたため、Jは「公然と陳列した者」に該当します。

 

次に、違法性と責任ですが、違法性に関しては正当防衛(36条1項)などに該当するような事実はなく、責任に関してもJは心神喪失者等でないので、以上見てきたことをまとめるとJの行為にわいせつ物頒布等罪(175条1項)が成立するといえそうです。

なお、今回のケースとは異なり、Jがオンライン授業中に自らの性器を露出した場合には、公然わいせつ罪(174条)が成立する可能性があります。その理由として、客体が「物」である175条と異なり、174条は「行為(人)」が客体となるからです。

 

第174条(公然わいせつ)

公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

・刑罰について

では成立したとしてどのような刑罰が科せられるでしょうか。本条では、「2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」と書かれています。よって、期間に関しては「1月以上2年以下」、罰金が科せられる場合には「1万円以上250万円以下」となります。科料については「1000円以上1万円未満」と決められています。

 

・まとめ

よって、Jの行為はわいせつ物頒布等罪(175条1項)にあたり、「1月以上2年以下」の懲役若しくは「1万円以上250万円以下」の罰金若しくは科料、又は懲役と罰金の両方が科せられるということになります。

刑に関しては、初犯か、前科を持っているか、などによって変わります。

 

 

月島警察署 東京都中央区晴海3丁目16-14 03-3534-0110

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