東京都千代田区 無料相談 偽計業務妨害事件
- 2020.03.29
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
偽計業務妨害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
東京都千代田区に住むAさんは国会議員であるVさんを嫌っていたため、その仕事を何かしらの形で妨害しようと考えました。
そこでAさんはVさんの秘書のふりをしてVさんに電話をかけ、「先ほど事務局から本日の委員会は中止になりますと連絡が入りました。間違えて委員会に出席しないように気を付けてください。」と伝えました。
その電話の言葉を信じたVさんは委員会に出席しませんでした。
このような場合、Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~偽計業務妨害罪~
本件でAさんはVさんの仕事を妨害する意図で嘘の情報を事務局に伝えているので、このようなAさんの行為は偽計業務妨害罪(刑法233条後段)にあたると考えられます。
今回はどのような場合に偽計業務妨害罪が成立するのかを説明していきます。
まず、偽計業務妨害罪は刑法で以下のように定められています。
刑法233条 「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
この条文を簡単に分けると、①「偽計を用いて」②「業務」を②「妨害した」という3つの要件を満たす場合に偽計業務妨害罪が成立するといえます。
では、本件Aさんの行為は①ないし③の要件を満たすのでしょうか。
①「偽計を用いて」いるか
これについて偽計とは人を欺き・誘惑しあるいは人の錯誤・不知を利用することをいいますが、本件Aさんの電話で嘘の情報を伝えるという行為は事務局の職員に対する欺く行為といえるので「偽計」にあたると判断される可能性が高いです。
②「業務」といえるか
本件でVさんは国会議員であるのでAさんは公務を妨害しようとしていますが、公務を妨害する場合でも業務妨害罪は成立するのでしょうか。
公務が「業務」に含まれるかが問題となります。
これについて公務執行妨害罪が定められていることから公務を妨害した場合には公務執行妨害罪(刑法95条1項)の成立を認め、業務妨害罪は成立せず「業務」に公務は含まれないという考えもあります。
しかし公務執行妨害罪が成立するには暴行・脅迫が必要であるので、上記のような考え方では暴行・脅迫にいたらない程度の威力・偽計で公務を妨害した場合には公務執行妨害罪も業務妨害罪も成立しないことになり妥当ではありません。
そして「業務」とは人が社会生活を維持するうえで反復・継続して従事する事務のことをいいますが、公務も公務員の社会的活動であるので「業務」に含まれると考えられます。
ただ、強制力を行使する権力的公務は業務妨害罪で保護せずとも妨害を排除する機能を備えているので、業務妨害罪を成立させる必要はありません。
したがってそのような強制力を行使しない非権力公務が「業務」にあたり、非権力的公務を妨害した場合に業務妨害罪が成立すると考えるのが一般的です。
これを本件について見てみるとVさんは委員会への出席が妨害されていますが、このような公務は強制力を有するものではありません。
したがって、このような公務は非権力的公務にあたり「業務」に含まれると判断されると思われます。
③「妨害した」といえるか
本件ではAさんが電話をかけたことによってVさんは委員会に出席できなかったので、その業務が「妨害」されたといえます。
以上より本件では①ないし③の要件をみたすと考えられるので、Aさんの行為には偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いです。
~参考条文~
刑法95条1項 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。