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神奈川川崎 現住建造物放火  | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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神奈川川崎 現住建造物放火 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 横浜支部

 

現住建造物放火について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。神奈川県川崎市に住むAさんはお金に困っていたため、自己が所有する家屋に火をつけることによって火災保険金をだまし取ろうと考えました。
Aさんは自らが経営する会社の従業員を日常的にその家屋に宿泊させていたため、その従業員らを社員旅行に連れ出し、その間に家屋を燃やすことにしました。
そして旅行当日、Aさんは時間が経つと自然に発火する装置をその家屋周辺に設置したまま出かけました。
もっとも川崎警察署の警察官がその発火装置に気づいてそれを回収したため、Aさんの家屋に火は移りませんでした。
このような場合、Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)

 

~現住建造物等放火罪~

まず本件でAさんは自身が所有する家屋周辺に時間が経つと自然に発火する装置を設置していますが、このようなAさんの行為には現住建造物放火罪(刑法108条)と非現住建造物放火罪(刑法109条)のどちらが成立するのでしょうか。
本件家屋が日常的にAさんの経営する会社の従業員によって宿泊されていることを考えると現住建造物放火罪が成立するようにも思えますし、その従業員らが自然発火装置の置かれた時点では旅行に出かけていることを考慮すると非現住建造物放火罪が成立するようにも思えます。
ここで現住建造物等放火罪における「現に人が住居として使用し」ているの意味が問題となります。

これについては、現に人の起臥寝食する場所として日常使用されているといえる場合に「現に人が住居として使用し」ていると認めると考えるのが一般的です。
なので「現に人が住居として使用し」ていると認められるには常にその場所に人が存在していることが必要とされるわけではなく、一時的に住居として使用している別荘などもこれにあたると判断される可能性があります。

 

これを本件について見てみると、確かに自然発火装置が設置された時点で従業員らは社員旅行に出かけていますが、本件家屋では従業員らが日常的に宿泊しており、その者らによって住居として使用されていたと考えられます。
そうだとすると、本件家屋は人の起臥寝食する場所として日常使用されていたといえます。
そして旅行から帰ってきた際には再度その家屋での宿泊が再開されていたと考えられる以上、従業員らが旅行に出かけている間においても本件家屋が起臥寝食する場所として日常使用されている事実に変化はないと考えられます。

 

したがって、本件家屋は「現に人が住居として使用し」ていると認められる可能性が高いです。
過去の判例(最決平成9年10月21日)でも同様の事案において「本件家屋は、人の起居の場所として日常使用されていたものであり~本件犯行時においても、その使用形態に変化はなかったものと認められる」と述べ、「現に人が住居として使用し」ていると認められました。

そうだとしても本件においてAさんは自然発火装置を設置しただけであり、実際に火をつける等の行為は行っていません。
このような場合でもAさんは「放火」に着手したといえるのでしょうか。

これについては、目的物が焼損する現実的危険を生じさせた時点において「放火」の実行に着手したと認められるのが一般的です。
例としては、目的物を燃やす為にガソリンを撒いた行為について「放火」の実行に着手したと認められたものがあります(横浜地判昭和58年7月20日)。

これを本件について見てみると、Aさんは自然発火装置を家屋周辺に設置しており、特段の障害がなければその装置が作動すると考えられる以上、Aさんが自然発火装置を設置した時点において本件家屋が焼損する現実的危険が生じていると考えられます。
したがって、Aさんは「放火」に着手したと認められる可能性が高いです。

もっともAさんが設置した自然発火装置は警察官によって回収されているので、Aさんの放火行為は未遂に終わっています。
以上より、本件Aさんの行為には現住建造物放火未遂罪(刑法112条)が成立すると考えられます。
また、Aさんが金銭を騙し取る目的で保険会社に嘘の被害などを申告した場合には詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。

 

~参考条文~

刑法108条 「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」
刑法109条1項 「放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。」
刑法109条2項 「前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。」
刑法112条 「第108条及び第109条第1項の罪の未遂は、罰する。」
刑法246条1項 「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」

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