川崎 逮捕 痴漢と早期釈放
- 2021.05.16
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 横浜支部
痴漢の罪と早期釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
川崎に住むAさんはJR東海道線の通勤電車の中で、前に立っていたVさんの着衣の中に手を入れ、直接胸を手で数回揉むことを繰り返したところ、Vさんが大声をあげたため周囲の男性に取り押さえられ、駆け付けた川崎警察の警察官に逮捕されてしまいました。警察を通じてAさんの逮捕を知ったAさんの妻は、弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
~痴漢の罪~
痴漢の罪と明確に規定した条例、法律はありません。しかし、痴漢は以下の条例、法律で禁止される行為に当たり、起訴される可能性があります。
1.神奈川県迷惑行為防止条例(以下、条例といいます)
条例では、「公共の場所」にいる人、又は「公共の乗物」に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、以下の行為をすることを禁止し、処罰するとしています。
①人の身体に触れる(条例3条1項1号)
直接触れるほか、衣服の上から触れる行為も含まれます。
②卑わいな言動をする
卑わいな言動とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな「言語」又は「動作」と解されています。最近では触らない痴漢として、スマートフォンのAirDrop機能を使ったいわゆるAirDrop痴漢という手口もあります。AirDrop痴漢はこの卑わいな言動に当たります。
【罰則】
単純痴漢:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
常習痴漢:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
2.刑法~強制わいせつ罪
痴漢は刑法176条の強制わいせつ罪に当たる可能性もあります。
強制わいせつ罪は「わいせつな行為」を禁止し、処罰するとしています。わいせつな行為の典型は、胸を揉む、陰茎を触る・揉むなどです。条例の行為よりもさらに悪質な行為(個人の性的自由を侵害する度合いの高い行為)は「わいせつな行為」に当たる可能性があります。
その他、条例との違いは
・暴行、脅迫を手段としている(↔条例は暴行、脅迫を必要としていない)
・痴漢の場所・人を問わない(↔条例は「公共の場所」、「公共の乗物」にいる人と限定している)
という点です。
【罰則】
6月以上10年以下の懲役
~逮捕後の流れと釈放~
逮捕後は次の流れで手続きが進んでいきます。
①逮捕
↓
②警察官の弁解録取→釈放?
↓
③送致(送検)
↓
④検察官の弁解録取→釈放?
↓
⑤勾留請求
↓
⑥裁判官の勾留質問→釈放?
↓
⑦勾留(決定)
①逮捕から⑦勾留までは概ね3日程度ですが、上記のとおり、この間に釈放される可能性はあります。
反対に、⑦勾留されるとはじめ10日間、その後さらに最大で10日間(一勾留につき最大合計20日間)身柄を拘束される可能性があります。
身柄拘束が長期化すればするほど日常生活に及ぼす影響は大きくなりますので、できれば①から⑦までの間で釈放されたいところです。
②の釈放は警察官が、③の釈放は検察官が、④の釈放は裁判官が判断します(④は正確には検察官の⑤勾留請求を裁判官が不許可とし、検察官が釈放します)。
警察官、検察官、裁判官が判断材料とする被疑者の話や書類は情報不足の面も否めず、釈放するか身柄拘束を継続するかの判断にあたり、必ずしも公平な判断が行われているとは限りません。
そこで、弁護士が捜査機関や裁判官に対して、被疑者の話や書類からではわからないであろう被疑者の事情を説明するという作業が必要となってくるのです。
具体的には、弁護人の意見書、身元引受人から聴き取った話をまとめた上申書や被害者との示談状況に関する報告書などを提出します。
ご家族が逮捕され、一刻もはやい釈放を希望される場合は、まずは弁護士に接見を依頼し、釈放に向けた弁護活動に動いてもらってください。