京都市東山区 逮捕 逃走罪
- 2019.11.15
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部が逃走罪について解説します。
窃盗罪などで懲役2年6月の実刑判決を受け刑務所に収容されていたAさんは、刑務所から逃走(脱走)しました。Aさんは、京都市東山区内を歩いていたところ、警戒中の京都府東山警察署の警察官の職務質問を受け、逃走罪で現行犯逮捕されてしまいました。Aさんは、逃走した動機について「刑務所内での人間関係に疲れた。」などと話しています。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
昨年4月8日、松山刑務所から男性受刑者が脱走し、4月30日に広島市内で逮捕されるまでの約3週間、世間に動揺と不安を与えました。
男性受刑者は脱走期間中、現金、車などを盗み、さらには泳いで本州へ渡ったことも判明しています。
結局、男性受刑者は、逃走罪、窃盗罪などで起訴され、昨年9月28日、懲役4年の実刑判決を受けています。
今回は、この逃走罪について解説いたします。
~ 逃走罪 ~
逃走罪は刑法97条に規定されています。
刑法97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。
「裁判の執行により拘禁された」とは、
現に刑事施設(刑務所、拘置所)、留置施設(留置場)に拘禁されている人
をいいます。
「既決の者」とは、
刑事裁判で刑事罰(死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料)を言い渡され、その裁判が確定した人
をいいます。
反対に、「未決の者」とは
刑事裁判が確定する前の人
*「刑事裁判が確定する前」とは
勾留後起訴前の段階、起訴後で現に刑事裁判中の段階、裁判で判決の言渡しを受けたものの上訴(控訴、上告)中の段階いずれも含まれます。
をいいます。
まとめると、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」とは、
・刑事裁判で刑事罰を言い渡され、その裁判が確定し、刑事施設(刑務所、拘置所)に収容されている人(既決の者)
・留置場や拘置所などの刑事施設に勾留されている被疑者・被告人(未決の者)
をいいます。
これらの人に当たる以上、どんな状況であるかは問いません。たとえば、
・移送、護送中
・刑務作業中
・鑑定留置中(状況による)
などの場合を問わず「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」に当たります。
最後に、「逃走」とは、拘禁(身柄を拘束された状態)から離脱することをいいます。
~ 保釈中に逃走した場合など ~
保釈中に逃走する事案が相次いでいます。
今年6月には、窃盗罪、覚せい剤取締法違反などの罪で実刑判決を受けその裁判が確定していた男性が、捜査機関の収容中に逃走するという事案が発生しました。男性は第一審で実刑判決を受けた後、控訴し、その後保釈されていたのです。つまり、保釈中の身でした。
しかし、保釈されている方は「拘禁された」とはいえないことから、保釈中に逃走しても逃走罪は成立しません。
また、逮捕された方、勾引された方も同様です。
* 逮捕とは
逮捕には現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕のいずれも含まれます
* 勾引とは
勾引は被告人の裁判所への出廷を確保するための強制手段です。被告人が定まった住居を有しないとき、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがある とき、に勾引状を発せられることがあります。
~ 刑務所生活は辛く、厳しい ~
松山刑務所から逃走した男性受刑者も、逃走した動機について「刑務所内での人間関係に疲れた。」などと話していたようです。
この言葉からも刑務所生活の厳しさがうかがえます。
当然のことながら、刑務所に収容されると社会から隔離され、通常の日常生活を送ることはできなくなります。
また、様々な規律、規制が設けられ、自分の思うような自由な生活を送ることはできません。
加えて、刑務所生活では、一部を除き、共同生活を送ることが求められます。これもまた当然ながら、様々な性格、価値観、考え方、生活習慣などを持った方々とともに生活