京都府福知山市 無料相談 ひき逃げと逃走罪
- 2020.03.21
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
ひき逃げと逃走罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
京都府福知山市に住むAさんは,仕事を終え,普通乗用自動車を運転して帰宅途中,道路を横断してきたVさん(69歳)に自車前方を衝突させて路上に転倒させました。Aさんは車を道路脇に停め,車を降りてVさんの元に近づいたところ,Vさんの意識ははっきりしており怪我の程度も酷くはなさそうだったため(後日,Vさんは加療約2か月間の怪我を負っていたことが判明),警察に通報するなどせずその場から逃走しました。その後,Aさんは普段どおりの生活を送っていますが,いつ警察に逮捕されるか不安で仕方ありません。そこで,Aさんは刑事事件に詳しい弁護士に無料法律相談を申込みました。Aさんは無料法律相談で弁護士から「逃走罪は成立しないが、過失運転致傷、道路交通法違反に問われる可能性がある」と言われました。
(フィクションです。)
~ 逃走罪は身柄を拘束されていることが前提 ~
法律に馴染みのない方は「逃走」というワードを行くとまず逃走罪を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
逃走罪は刑法97条に規定されています。
刑法97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する
「裁判の執行により拘禁された」者とは留置場と呼ばれる「留置施設」、あるいは刑務所、拘置所などの「刑事施設」などに留置、収容(拘束)されている者をいいます。「既決の者」とは、刑事裁判が確定し、その刑の執行を受ける者(死刑確定者、労役場留置者を含む)をいいます。「未決の者」とは、刑事裁判が確定する前に勾留されている被疑者・被告人をいいます。なお、逮捕中の者はこれに当たりません。
いずれにしても、逃走罪の対象となる人は身柄を拘束されている人に限ります。したがって、
・はじめから拘束されていない人
・かつて逮捕・勾留されていたものの釈放され、現在は拘束されていない人
は逃走罪で処罰されることはありません。
※保釈中に逃走したカルロス・ゴーン氏も勾留されていましたが保釈釈放され、その保釈中に逃走したため逃走罪には問われていません。
~ 交通事故の「逃走」は救護措置義務違反、事故報告義務違反 ~
ただ、本件の場合、逃走罪が成立しないからといって「お咎めなし」というわけではありません。
確かに、「逃走したこと自体」が罪に問われるわけではありませんが、逃走したことで「〇〇しなかった」ということについて罪に問われる可能性があります。
それが救護措置義務違反と事故報告義務違反です。
救護措置義務、事故報告義務については道路交通法72条1項に規定されています。
道路交通法72条1項
交通事故があったときは,当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(略)は,直ちに車両等を停止して,負傷者を救護し,道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において,当該車両等の運転者(略)は,警察官が現場にいるときは当該警察官に,警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所,当該事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度,当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
「~講じなければならない。」(法72条1項前段)までが「救護措置義務」に関する規定,「この場合において」以下(法72条1項後段)が「事故報告義務」に関する規定です。
確かに、この規定を見る限り「逃走してはならない」とは書かれていません。しかし、交通事故があったときには、車の運転者は直ちに車を「停止して」と書かれています。これは「救護措置義務」を行うにあたっての当然前提として規定されたものです。
そして、救護措置義務を果たさなかった、事故報告義務を怠った、という場合にそれぞれ救護措置義務違反、事故報告義務違反に問われる可能性があります。
救護措置義務違反の罰則は、交通事故による人の死傷が運転者の運転に起因するものであるときは
10年以下の懲役又は100万円以下の罰金
それ以外の場合は
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
です。
また、事故報告義務違反の罰則は、
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
です。
救護措置義務違反、事故報告義務違反を併せてひき逃げの罪などと呼ばれることがあります。