札幌市西区 無料相談 暴行罪と正当防衛
- 2019.11.03
- コラム
あいち刑事事件総合法律事務所 札幌支部
北海道札幌市西区に住むAさんは以前から友人Vさんに暴力を振るわれていて、いつか仕返しをしてやろうと思っていました。
ただAさんは自身が罪を被ることを避けたいと考えていたところ、インターネットのサイトで「正当防衛の場合は罪にあたらない」という記事を見つけました。
そこでAさんは何とか正当防衛の形でAさんを痛めつけようと考え、Vさんがいつものように殴りかかってくるのを予想しながらその機会を利用してVさんをバットで殴り返しました。
その結果Vさんは全治数週間の怪我を負ったのですが、このような場合Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~正当防衛における積極的加害意思~
本件でAさんはVさんに対し暴行を加え怪我をさせているので、通常であればAさんには傷害罪(刑法204条)が成立するようにも思われます。
ただ、その傷害の原因となるAさんの暴行の前にVさんがAさんに殴りかかってきています。
このような場合Aさんに正当防衛(刑法36条1項)は成立しないのでしょうか。
今回はどのような場合に正当防衛が成立するのかを説明していきます。
まず、正当防衛においては①急迫不正の侵害があること②自己又は他人の権利を防衛するためであること③やむを得ずにした行為であることが主な成立要件となります。
本件ではAさんはVさんの襲撃を知りながらそれを利用してVさんを痛めつけてやろうという「積極的加害意思」が認められるところ、上記①②③の要件を満たすかが問題となります。
以下、順に成立要件を検討していきます。
①急迫不正の侵害があること
この急迫不正の侵害に関しては、AさんはVさんに理由なく殴りかかられそうになっているので「不正」の侵害は認められると考えられます。
ただAさんはVさんの襲撃を予想しているところ、このような場合でも「急迫」な侵害といえるのでしょうか。
この点急迫性とは客観的に侵害が存在する又は差し迫っていることをいうので、主観的な事情によって急迫性の判断が左右されるべきではないと思われます。
そうするとAさんがVさんの襲撃を予想しているという事実は主観的な事情であるので、急迫性の判断には考慮されるべきではないと考えられます。
したがってVさんの襲撃という客観的な侵害が差し迫っている以上、「急迫不正の侵害」は認められる可能性が高いです。
②自己又は他人の権利を防衛するためであること
この要件は簡単には自己又は他人の権利に対する「防衛の意思」が認められるかということであり、この「防衛の意思」とは上記急迫不正の侵害を避けようとする単純な心理状態をいいます。
本件ではAさんには積極的加害意思が認められるところ、防衛の意思が否定されないか問題となります。
この点正当防衛は緊急下で行われることが多いことから防衛の意思は急迫不正の侵害を避けようとする単純な心理状態で足るとされていますが、侵害の機会を利用して積極的に相手を痛めつけようと考える場合は急迫不正の侵害を避けようとする心理状態に欠くと考えるのが妥当です。
したがって、積極的加害意思がある場合は防衛の意思を欠くと判断される可能性が高いです。
とするとたとえAさんが③やむを得ずにした行為という要件を満たしたとしても②防衛の意思が認められない以上、正当防衛は成立しません。
そのように判断された場合、Aさんには傷害罪が成立します。
~参考条文~
刑法36条1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
刑法204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。