仙台市泉区 無料相談 堕胎罪
- 2020.01.17
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 仙台支部
堕胎罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 仙台支部が解説します。
仙台市泉区に住むAさんは、元カレとの間で望まない妊娠をしてしまい悩んでいました。そして、Aさんは周囲に相談相手もおらず、適当な相談先も見つけることができなかったことから薬物を使って胎児を排出しました。しかし、その後、体調が悪くなったAさんは自ら119番通報しました。。そして、Aさんは駆け付けた救急隊員に救護されましたが、胎児を排出したことを警察に通報されました。その後、Aさんは体調が回復してから宮城県泉警察署の警察官に堕胎罪の疑いで事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
先日の報道によると、1年間の出生数や人工妊娠中絶数などをもとに、日本の15歳から44歳の女性の予定外の妊娠は
年間推計61万件にのぼる
と、東京大学とバイエル薬品の研究チームが報告したとのことです。
望まない妊娠は、経済的な負担だけでなく、肉体的、精神的な負担も大きいと思われます。
望まない妊娠をするためには、避妊に関する正確な知識を身に着け、的確な方法を取ることが必要です。
妊娠で困った、迷われた場合は、一人で解決しようとせず周囲の頼れる方に相談しましょう。
周囲にそうした人がいない方は、自治体が設置している「妊娠SOS」などの相談窓口を利用されてみてはいかがでしょうか?
きっと相談に乗ってくれるはずです。
~ 堕胎罪、堕胎の罪 ~
では、堕胎罪とはどんな罪なのかみていきます。
堕胎罪は刑法212条に規定されています。
刑法212条
妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、1年以下の懲役に処する。
胎児(赤ちゃん)を産むか産まないかは本来その親、あるいは母親が決めるべきこと、とも思えます。
しかし、胎児といえども将来は「人」となる存在です。
そして「人」を殺せば殺人罪(刑法199条)に問われるように「人」は保護されているのに、将来「人」となるべき胎児を保護しない、というわけにはいきません。
そこで、こうした胎児を保護するための罪が堕胎罪です。
また、胎児への攻撃は母体を媒介として行われるため、堕胎罪を規定する堕胎の罪では、女子の生命、身体を保護する罪も設けています。
それが、同意堕胎致死傷罪(刑法213条後段)、業務上堕胎致死傷罪(刑法214条後段)、不同意堕胎致死傷罪(刑法216条)です。
刑法213条
女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、2年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
刑法214条
医師、助産婦、(略)が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、3月以上5年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
刑法216条
前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
※「前条の罪」=刑法215条の不同意堕胎罪
※「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」=傷害の場合「6月以上15年以下の懲役」、死亡の場合「3年以上の懲役」
「堕胎」とは、自然の分娩期に先立って人為的に胎児を母体から分離・排出させることをいいます。
堕胎罪の実質は胎児を殺すことにありますから、自然の分娩期に先立つ排出誘発行為であっても、胎児が排出後生存可能な時期に至っていればその生命に対する具体的危険を及ぼす行為とは言えず、堕胎とはいえません。
この点に関し、母体保護法2条2項は人工妊娠中絶について「人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、「生命を保続することのできない時期」に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。」とされています。
したがって、人工妊娠中絶は「堕胎」には当たりますが、母体保護法で「医師が本人及び配偶者の同意を得て行うことができる(ただし、限定的な条件つきです。)」とされていますから、医師の当該手術は法令行為として処罰の対象とはなりません(母体保護法14条、刑法35条)。