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東京秋葉原 逮捕 公務執行妨害 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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東京秋葉原 逮捕 公務執行妨害

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部

 

公務執行妨害罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

2020年4月、東京都千代田区在住のNはモデルガンを集めるのが趣味であり、かねてから本物の拳銃を入手したいと思っていた。同月2日、ホームセンターで買い物をした帰り道に秋葉原駅前の交番(以下、本件交番)の前を通ったNは、「警察なら拳銃をいつも持っているだろうな。さっき買った包丁で脅してみるか。」と思い、本件交番で書類の整理をしていた警察官Bに対して、「拳銃をよこせ。刺すぞ。」と言い、長さ18センチの包丁をBの顔面に近付けた。その際、同じく本件交番勤務の警察官Cが見回りから帰ってきたところ、男が包丁をBに突きつけていたので、すぐさま後ろからNの身体を押さえつけ、万世橋警察に現行犯逮捕した。(フィクションです)

この場合、Nは何の罪に問われるでしょうか

 

・公務執行妨害罪が成立するか

 

ニュースなどでよく見かける公務執行妨害罪ですが、具体的に何をしたら本罪に該当するのか知らない方も多いのではないでしょうか。今回のケースでは、交番にいた警察官から銃を奪おうと、包丁を用いて脅迫をしたケースです。このような場合、どのような罪が成立するのか、以下検討します。公務執行妨害罪については刑法95条1項に記されています。

 

第95条(公務執行妨害及び職務強要)

1 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

 

犯罪が成立するには、「構成要件に該当し違法且つ有責な行為」である必要があるので、構成要件に該当するか、から検討します。

 

第一に、「公務員が」ですが、本条の公務員とは「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」をいいます(刑法7条)。今回のケースでは、Nは交番にいた警察官Bに対して刃物を突き付けました。警察官Bは東京都の職員(警察庁に所属する場合は国の公務員となります)なので、「公務員が」に該当します。

 

第二に、「職務を執行するのに当たり」ですが、本条の「職務」とは、公務員の職務(公務と略されます)であり、その内容は、権力的・非権力的、また、現実的・非現実的の区別なく一切の公務を指すのが一般的です。ただし、ここでいう職務は適法であることを要し、その判断は、判例では「当該職務当時の具体的状況に即して客観的・合理的に判断する」とされています。具体例を挙げると、ある警察官が日頃の恨みで何もしていない一般人を逮捕する行為は、違法であるため、この行為に対して反抗するために暴行等を行うことは許される可能性が高いということです。判例では、日本刀の仕込杖を所持していた甲を現行犯逮捕しようとした際に、甲が傍らの乙に何かを手渡す気配を察したX巡査が両者の間に入ったところ、乙の腹部から拳銃が落ちたため、現行犯逮捕しようとした際に、これを免れようと甲及び乙がXの顔面を殴った事案において、「職務行為の適否は…行為当時の状況に基づいて客観的・合理的に判断されるべきであって、…巡査が乙を逮捕しようとした職務行為は適法であると解するのが相当である」としています(最決昭41・4・14)。また、他の判例では、県議会の特別委員会で委員長が休憩する宣言をなした後、退出しようとした場合(最決平元・3・10)や、派出所内にいた警察官がたまたま用便中であった場合(大阪高判昭51・7・14)に、職務の執行を認めています。一方、機動隊員が仮眠中、雑談中、引継ぎのために休憩室に行く途中であった場合(大阪地判昭52・6・13)や、当直勤務の警察官が休憩中であった場合(大阪高判昭53・12・15)には、職務の執行を否定しています。今回のケースでは、秋葉原駅前の交番にいたBは、書類の整理をしていました。このBの行為は、警察官にとって一般的職務権限に属する行為といえるので、上記判例も踏まえると、Bの行為は「職務を執行するに当たり」で該当します。

 

第三に、「これに対して暴行又は脅迫を加えた者は」ですが、「これに対して」とは、前述した職務の執行に対してなされる行為を指します。「暴行」とは、人に向けた有形力の行使に限られますが、身体に直接向けられる必要はなく、間接暴行でも良いとされています。「脅迫」とは、恐怖心を起こさせる目的で人に害悪を告知する一切の行為をいいます。なお、本条の暴行・脅迫は、職務執行を妨害するに足りる程度のものであることを要し、現実に妨害されたことまでは必要ありません。判例では、司法巡査が現行犯逮捕の現場で証拠物として差し押え、同所に置いた覚せい剤のアンプルを、足で踏みつけて損壊させた事案において、「職務の執行を妨害するに足る暴行であり、間接に右巡査に対するものというべきである」と判示しています(最決昭34・8・27)。今回のケースでは、交番で書類の整理をしていたBに対し、Nは「拳銃をよこせ。刺すぞ。」と言い、長さ18センチの包丁を顔面に近付けました。一般人であれば、包丁を顔面に近付けられ、かかる言葉を告げられれば、畏怖するといえるので、Nは「これに対して暴行又は脅迫を加えた者」に該当します。

 

次に、違法性と責任ですが、違法性に関しては正当防衛(36条1項)などの事実はなく、責任に関してもNは心神喪失者等でないので、以上見てきたことをまとめるとNの行為に公務執行妨害罪(95条1項)が成立するといえそうです。

 

・刑罰について

公務執行妨害罪が成立した場合、脅迫罪は成立しません。

では公務執行妨害罪が成立したとしてどのような刑罰が科せられるでしょうか。本条では、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と書かれています。よって、期間に関しては「1月以上3年以下」、罰金が科せられる場合は「1万円以上50万円以下」となります。

 

・まとめ

 

よって、Nの行為は公務執行妨害罪(95条1項)にあたり、「1月以上3年以下」の懲役若しくは禁錮、又は「1万円以上50万円以下」の罰金が科せられるということになります。

刑に関しては、初犯か、前科を持っているか、などによって変わります。

 

 

万世橋警察署 東京都千代田区外神田1丁目16-5 03-3257-0110

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