東京中野 無料相談 窃盗(万引き)で全部執行猶予の条件
- 2021.06.21
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
窃盗事件の全部執行猶予の条件について,弁護士法人あいち刑事事件東京支部が解説します。
中野に住むAさんは、数年前から万引きを繰り返すようになり、中野警察から在宅捜査を受け,過去3年以内に、1回、窃盗罪で微罪処分を受け、1回、窃盗罪で罰金30万円の略式命令を受けていました。そして、ある日、Aさんはスーパーで再び万引きしたところを保安員に目撃され窃盗罪で逮捕されてしまいました。Aさんの逮捕の通知を受けた母親は何としてでも実刑だけは避けたいと思い、執行猶予付き判決の獲得を目指して弁護士に刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです)
~執行猶予とは~
執行猶予とは、犯した罪につき有罪ではあるものの、判決後、刑務所に収容されることはなく、何事もなく一定期間を経過すると、判決で言い渡された刑の効果が消滅したことになる法制度のことです。
執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」があります。
全部執行猶予は、文字通り、全部の執行猶予の期間、刑務所に収容されることのない執行猶予のことです。
判決では「主文。被告人を懲役2年に処する。この裁判の確定の日から3年間、その刑の執行を猶予する。」などと言われます。
全部執行猶予は
通常の執行猶予
再度の執行猶予
があります。
これに対して、一部執行猶予は、一部の期間を実刑とし、残りの期間を執行猶予とするものです。
判決では「主文。被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役10月の執行を2年間猶予する。」などと言われます。
この判決は「はじめ1年2月は刑務所に服役してください。ただし、その後は釈放され、2年間を何事もなく無事に経過すれば、残りの刑期(10月)を受刑しなくてよいですよ」ということを意味しています。
~全部執行猶予の条件~
全部執行猶予の条件は以下のとおりです。
①判決で3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
②前に禁錮以上の刑に処せられたことがない、あるいは、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行が終わった日(略)から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
③情状に酌むべき事情があること
~条件①について~
まず、3年を超える懲役、禁錮の場合、執行猶予はつきません。
たとえば、殺人罪(刑法199条)の場合、法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」ですから、殺人罪で有罪判決を受けると基本的に執行猶予はつかないということになります。
もっとも、心神耗弱、中止未遂、未遂などの法律上の減軽事由により減軽される場合には、法定刑の下限が2年6月まで引き下げられますから、その場合は執行猶予がつく可能性もあります。
~条件②について~
「前に」とは判決以前にという意味です。
「禁錮以上の刑」とは死刑、懲役、禁錮のことを意味し、罰金、拘留、科料は含みません。
「処せられた」とは実刑・執行猶予の場合を含む有罪の判決が確定したことを意味します。そして、判決が確定すれば前科が付きます。
つまり、判決前に死刑、懲役、禁錮の前科を有している人は執行猶予が付かないことを意味しています。
もっとも、執行猶予の場合、執行猶予期間が経過すると刑の効力が消滅しますから「刑に処せられた」には当たらなくなり、再び執行猶予が付く可能性があります。
また、実刑の場合でも、服役が終わった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せ
られたことがない場合はやはり執行猶予が付く可能性があります。
~条件③について~
情状は刑の重さを決める際に考慮される事情のことで、犯罪そのものに関する情状(犯情)とその他の一般情状があります。
犯罪そのものに関する情状は、犯行動機、犯行に至るまでの経緯、犯行態様、被害結果、結果の程度などがあります。
その他の一般情状には、被告人の年齢、性格、被害弁償・示談の有無、被告人の反省の程度、被害者の被害感情、更生可能性(適切な監督者・身元引受人の有
無、就職の有無など)、再犯可能性(前科・前歴の有無、常習性の有無など)
などがあります。
これらの情状の中で被告人にとって有利な情状(たとえば、被害弁償・示談したなど)があればあるほど執行猶予が付く可能性が高くなります。
執行猶予を求める場合は示談を、弁護士をと言われるのはこのためです。
中野警察署 東京都中野区中央2丁目47-2 03-5925-0110