東京墨田区 無料相談 のぞき
- 2021.07.27
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
軽犯罪法違反(窃視の罪)と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
墨田区に住むAさんは、同市内の他人方敷地内に立ち入り、浴室の窓からスマートフォンをを差し入れて入浴中のVさん(25歳)の裸体をのぞき見ました。しかし、Vさんがスマートフォンの存在に気づき「のぞき見!」と大声を出したことで、Aさんはその場から立ち去りました。管轄は本所警察署で,Aさんは警察に逮捕されないか不安で弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~軽犯罪法(窃視の罪)とは~
軽犯罪法(窃視の罪)は同法1条23号に規定されています。
23号
正当な理由がなくて、人の住居、浴場、更衣室、便所その他通常人が衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
「正当な理由がない」とは、すなわち「違法」ということです。具体的には、世間感覚からして正当と許容されるような理由、方法ではないことをいいます。
「人」とは自分以外の人のことをいいますから、面識のない人はもちろん、家族、知人なども含まれます。
「住居」、「浴場」、「更衣室」、「便所」は「通常人が衣服をつけないでいるような場所」の例示にすぎません。したがって、ここに掲げられている場所以外の場所、たとえば授乳室なども「通常人が衣服をつけないでいるような場所」にあたる可能性があります。また、のぞき見る対象はあくまで「場所」ですから、実際にその場所に人がいたかどうか、人の裸などをのぞき見たかどうかは関係ありません。
「ひそかに」とは対象者に知られないで、「のぞき見る」とは物陰や隙間からこっそり見るという意味です。なお、「のぞき見る」とは「直接肉眼で見る」ことのほか「カメラ等で撮影しながらその映像を見る」ことも含まれます。問題は「カメラ等で撮影する」こと(いわゆる盗撮)が「のぞき見る」にあたるかです。なぜなら、カメラ等で撮影しただけでは「のぞき見た」にはあたらないとも考えられるからです。この点、裁判例の多く(福岡高判平成27年4月15日など)は、カメラ等で撮影すること自体が「のぞき見た」にあたるとするとしています。
~軽犯罪法違反で逮捕?~
ネットなどでは「軽犯罪法違反では逮捕されない」という情報が散見されます。
ですがはたしてそれは本当でしょうか?
この点については、刑事訴訟法199条を見れば答えは明らかです。
刑事訴訟法199条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
軽犯罪法の法定刑は「拘留又は科料」ですので、「身体露出の罪」は199条文但書きの「拘留又は科料に当たる罪」当たります。
ですから、軽犯罪法違反の場合であっても、
・被疑者が定まった住居を有しない場合
・正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合
には逮捕される可能性があることから注意が必要です。
そもそも、逮捕は被疑者の「逃亡のおそれ」「罪証隠滅のおそれ」がある場合などにできるものですが、上記2つの要件が当てはまる場合は特に「逃亡のおそれ」の蓋然性が高いと考えられることからこのような規定が設けられているのです。
確かに、軽犯罪法のみで逮捕される事例は少ないと思われますが、Aさんのように逮捕されない高をくくっていると逮捕されることもありますから、注意してください。
~住居侵入罪にも問われる~
なお、本件の場合、AさんはVさん方敷地内にも侵入しています。
他人の敷地が住居侵入罪の「住居」にあたる場合は、Aさんは住居侵入罪にも問われてしまいます。
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
墨田警察署 東京都墨田区横川4丁目8-9 03-5637-0110