東京都大田区 逮捕 うその110番通報で業務妨害罪
- 2019.12.25
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部が解説します。
東京都大田区に住むAさんは(23歳)は、110番通報し、電話口の警察官に「今コンビニいますけど強盗に入られたみたいです。」「ただちに来てください。」などと言いました。この通報を受けて警視庁蒲田警察署の警察官が現場に駆け付け、コンビニの店員に強盗の被害に遭ったか事情を聞いたり、店内の防犯ビデオ映像を確認しましたが強盗の被害を確認することができませんでした。そこで警察官は「うその110番通報をされた」と思い、電話をしたAさんを特定しAさんを偽計業務妨害罪で逮捕しました。逮捕の通知を受けたAさんの両親は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ 偽計業務妨害罪とは ~
Aさんが逮捕された偽計業務妨害罪(信用棄損罪も含む)は刑法233に規定されています。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
今回、Aさんは、「偽計を用いて」、「人の業務を妨害」した者として逮捕されています。
業務妨害罪は偽計業務妨害罪のほかにも威力業務妨害罪(刑法い234条)が規定されています。
刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
「偽計」の意味が分かりにくいですが、どちらかというと想像しやすい「威力」でないものが「偽計」ととらえておけばよいかもしれません。
「業務」とは、人が反復、継続する社会活動全般をいい、警察官の行政警察活動もこれに含まれます。
「妨害」とは、現実に業務を妨害する必要はなく、業務を妨害しうるような行為をすれば足りる、とされています。
偽計業務妨害罪は、
・回転ずしチェーン店の店員が、食材の魚をゴミ箱に捨てた後、まな板に乗せる行為
・コンビニエンスストアの店員が、おでんの具を口の中に入れ、吐き出すなどの行為
などの「バイトテロ」に適用されたほか、
・居酒屋などの飲食店に予約を入れたものの突然キャンセルする
「無断キャンセル」などにも適用されています。
~ なぜ違法? ~
「いたずら半分」「おもしろ半分」でこうした行為を行う方がいます。
しかし、こうした行為をすることによっていかなる迷惑、損害が発生するか考えたことはあるでしょうか?
まず、うその110番通報をすることによって、必要な捜査に警察官を充てることがでず、実際に被害に遭った方を助けることができなくなるおそれがあります。
バイトテロに関しては、お客さんに不快感を与え、店に対する信用をなくし、それが引いてはお店の損害にも繋がりかねません。
~ 民事上の責任も発生 ~
偽計業務妨害罪は刑事上の責任ですが、民事上の責任を問われる可能性もあります。
うその110番通報によって警察の業務に損害を生じさせた場合は警察から損害賠償請求を受けるかもしれません。
バイトテロによって、もしお客さんに何らかの損害を発生させた場合はお客さんから損害賠償請求されるかもしれません。また、店の信用を失墜させたことによって店に損害を与えた場合は店から損害賠償請求されるかもしれません。
そして、損害賠償額は決して安くはないでしょう。
以上のように、ちょっとした「いたずら半分」「おもしろ半分」の気持ちでの行為が、想像もつかない事態へと発展しかねません。
近年はインターネットやSNSが発達し、こうした行為を投稿することで閲覧者がどういう反応をするのかを楽しむ方もいます。
もちろん、適法な行為をアップすることを楽しむことは問題ありませんが、犯罪に当たるような行為をアップすることは社会的にも問題です。決して真似しなようにしましょう。