京都市下京区 逮捕 子供に万引きをさせた親の窃盗事件
- 2019.12.09
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部が解説します。
京都市下京区に住むAさんは、子どもB君(13歳)と大型ショッピングモールに来ています。Aさんは、食料品売り場で食料品を見ていたところ欲しい商品を見つけました。ところが、Aさんはお金に困っており「お金を出すことはできない」と思いました。しかし、それでも商品が欲しいと思ったAさんは息子B君に万引きさせようと考えました。というのも、Aさんは1年前に万引きで逮捕され、裁判を受けて現在、執行猶予中の身だったからです。AさんはB君に「この商品ただ見たいだから鞄の中に入れておいて。」と言ってB君に商品を取らせて、自身の手提げバックの中に入れさせました。そして、AさんとB君が食料品売り場を出ようとしたところ、保安員に「支払いまだですよね。」などと声をかけられました。Aさんは、その後現場に駆け付けた下京警察署の警察官に窃盗罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
先日、11月25日、静岡県に住む夫婦が窃盗罪で逮捕されています。
逮捕事実は、今年の9月、浜松市内のショッピングセンターなど3か所で、食料品などを盗んだというものです。
夫婦は、長男と一緒に店内をまわり、長男(12歳)に商品をバッグの中に隠匿させていたとのことです。
実は、逮捕された男性は、すでに線路にタイヤを置いた件で逮捕、起訴されています。このこともニュースになり、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
ところで、窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪に問われるのは、もちろん実際に「窃盗をした人」です。
万引きをした人であればその人、置引きをした人であればその人です。
刑法では、実際に罪を行った人のことを正犯者といいます。
法律の世界では、まず、正犯者が処罰されるのが基本です。
では、事例や上記の静岡の事件の場合はどうでしょうか?
実際に、罪を行った者、つまり正犯者は子どもです。
ところが、14未満の者は刑事未成年者であり、V君を刑法上の罪に問うことはできません。
刑法41条
14歳未満に満たない者の行為は、罰しない。
しかし、このまま無罪放免というわけにもいきません。
そこで、他人を犯行の道具として使った、という関係が認められる場合はたとえ自ら罪を犯していなくても罪に問われるという理論が存在します。
この理論を間接正犯といいます。
そして、他人を犯行の道具として使った者を利用者あるいは間接正犯者といいます。
事例の場合、間接正犯者はAさんです。
この他人を犯行の道具として使ったという関係は、
刑事未成年者を利用した場合
のほか
・被利用者が強制により意思を抑圧されている場合
・被利用者に故意がない場合
・被利用者の行為が適法である場合
などがあります。
間接正犯も正犯と責任は同じです。
つまり、自ら犯行に手を出しただけではないのい、手を出したのと同じに処罰されるのです。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですから、その範囲内で処罰されることになります。
~ 再度の執行猶予 ~
最後に再度の執行猶予についてご説明します。
再度の執行猶予は、執行猶予期間中に犯罪を犯し、さらにその裁判で執行猶予付きの判決を受けたことをいいます。
しかし、執行猶予期間中に犯罪を犯したわけですから、再度の執行猶予を受けるハードルは各段に高くなります。
まず、判決で「1年以下の懲役又は禁錮」の言い渡しを受ける必要があります。最初の執行猶予の要件が「3年以下の懲役又は禁錮」の判決の言い渡しを受けることですから、ハードルが高くなっていることが分かります。また、情状に関しては「「特に」酌量すべきとき」とされています。
再度の執行猶予を望まれる場合は、再犯防止のための具体的な対策をとり、裁判でそのことを弁護士にきちんと立証してもらう必要があります。