京都市伏見区 逮捕 ストーカー行為と脅迫罪
- 2019.12.19
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部が解説します。
京都市伏見区に住むAさんは長年交際を続け先日別れたばかりのVさんが別の男性と交際していることを知り、Vさんに復讐してやろうと考えました。そこで、Aさんは、VさんのSNS機能を使ってスマートフォン宛に「お前が過去に風俗だったことを職場や家族に言うからな。」などという内容のメールを送りました。その後、AさんはVさんからメール受信を拒否されたことから、今度は過去に撮影したVさんの裸などの写真をVさんの職場宛てに送りつけました。すると、Aさんは京都府伏見警察署に脅迫罪、ストーカー規制法違反で逮捕されてしまいました。Aさんの家族は弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~ 脅迫罪 ~
脅迫罪は刑法222条に規定されています。
刑法222条
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
「害を加える旨の告知(害悪の告知)」は、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならないとされています。
人を畏怖させるに足りるものであったか否かは、害悪の告知の内容を四囲の状況に照らして判断されます。
以下、害悪の告知の例を示します。
生命に対する害悪の告知:明日、お前の家を焼いてやる
身体に対する害悪の告知:痛い目に遭わせてやる、ボコボコにしてやる
自由に対する害悪の告知:行動を見張っている
名誉に対する害悪の告知:●●を職場に言うぞ、性的な動画、画像をアップするぞ
Aさんの「お前が過去に風俗だったことを職場や家族に言うからな。」というのは名誉に対する害悪の告知といえ、脅迫罪に問われています。
なお、脅迫罪の成立に、相手方(Vさん)が実際に畏怖(怖がった)したかどうかは問わないとされています。
~ ストーカー規制法 ~
また、Aさんはストーカー規制法違反にも問われています。
ストーカー規制法違反における「ストーカー行為」とは
・特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的、で
・当該特定の者又はそれと密接に関係する者(配偶者、家族など)、に対し
・つきまとい等、を
・反復してする
ことをいいます。
なお「つきまとい等」には、本件のように
・メールを送信する行為
・性的な写真を送る行為
も当然含まれます(ただし、メールの送信については「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合」に限り「ストーカー行為」とされます)。
「ストーカー行為」をした場合の罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
また、禁止命令等に違反して「ストーカー行為」をした場合の罰則は「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより「ストーカー行為」をした場合の罰則も「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」です。
※禁止命令
都道府県公安委員会が、つきまとい等があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときに、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、更に反復して当該行為をしてはならないこと、更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項を命じる命令。