千葉県船橋市 無料相談 強盗罪と窃盗罪
- 2020.04.26
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 千葉支部
強盗罪と窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
千葉県船橋市に住むAさんは友人Bさんから「Vを殺してくれ。」と頼まれたので、夜道一人で船橋駅から歩いているVさんの腹部をナイフで突き刺しました。
Vさんが倒れた際にポケットから財布が落ちたのを見たAさんは「ついでにこの財布も取ってやろう。」と考えて、この財布を自身の鞄に入れて立ち去りました。
その後、Vさんはナイフで刺されたことによる出血多量で死亡しました。
この場合、AさんとBさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~Aさんに罪について~
本件でAさんはVさんを殺害しようとナイフで腹部を突き刺しているところ、Aさんのこのような行為には殺人罪(刑法199条)が成立すると思われます。
次にAさんはVさんの財布を自身の鞄に入れて持ち帰っていますが、この行為には強盗罪(刑法236条1項)又は窃盗罪(刑法235条)が成立すると考えられます。
今回は強盗罪と窃盗罪の違いを検討しながら、AさんがVさんの財布を鞄に入れて持ち帰った行為にどちらの罪が成立するのかを検討していきます。
まず、強盗罪と窃盗罪の条文を確認していきます。
刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
刑法236条1項 「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以下の有期懲役に処する。」
条文から分かるように両罪は共に「他人の財物」を奪取する行為により成立しますが、強盗罪は「暴行又は脅迫」を用いている点で窃盗罪と異なります。
そして、この「暴行又は脅迫」は財物奪取に向けられている必要があると考えられています。
これを本件について見てみると、AさんはVさんをナイフで突き刺しているので暴行があるようにも思われます。
しかし、Aさんによる刺突行為はVさん殺害を目的とするものであって財物奪取には向けられていません。
また、Aさんが「ついでに財布を盗もう。」と考えた後には暴行・脅迫は行われていません。
よって、Aさんの行為には強盗罪は成立しないと判断される可能性が高いです。
そしてAさんは財布という財産的価値の有する「財物」をVさんの意思に反して自身の支配下に置くことで「窃取」したといえるので、AさんがVさんの財布を自身の鞄に入れて持ち帰った行為には窃盗罪が成立すると考えられます。
~Bさんの罪について~
本件でBさんはAさんに「Vを殺してくれ。」と依頼しているので、この行為には殺人罪の教唆犯(刑法61条1項)が成立すると考えられます。
教唆犯とは共犯の一種で、相手に一定の犯罪を実行する意思を生じさせることにより成立します。
では、Bさんの発言が発端となってAさんは窃盗行為を実行するに至っていますが上記行為に窃盗罪の教唆犯は成立するのでしょうか。
Bさんは殺害を依頼しただけであるので、窃盗罪についてまで責任を負うのか問題となります。
これについては、簡単には教唆行為と犯罪を実際に行う者の犯意形成との間に因果性が認められる場合には教唆犯が成立すると考えるのが妥当と思われます。
これを本件について見てみると、Aさんが財布を取ろうと考えたのはたまたまVさんのポケットから財布が落ちたからであってBさんによる教唆行為と関連はありません。
とすると、Aさんによる教唆行為とBさんによる窃盗の犯意形成との間に因果性はないと考えられます。
よって、Bさんの行為に窃盗罪の教唆犯は成立しません。
~参考条文~
刑法61条1項 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
刑法199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。