愛知県岡崎市 逮捕 建造物侵入と窃盗
- 2020.07.01
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部
建造物侵入と窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
愛知県岡崎市に住むAさんはゴルフのボールを盗むために塀を超えて近くのゴルフ場に侵入しました。
そこでAさんはロストボールを見つけ、だれも使わないものならとってもいいだろうと考えてこれを自身の鞄に入れて持ち帰りました。
このような場合、Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~建造物侵入罪~
まずAさんは窃盗目的で近くのゴルフ場に侵入していますが、かかる行為には建造物侵入罪(刑法130条)は成立するのでしょうか。
建造物侵入罪の条文は以下のように定められています。
刑法130条 「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
ここで①「建造物」にあたるか②「侵入」といえるかが問題となります。
②から順に検討していきます。
②「侵入」といえるか
建造物侵入罪における「侵入」とはその管理権を有する者の意思に反する立ち入りをいうと考えるのが一般的です。
そして本件Aさんは窃盗目的でゴルフ場に立ち入っているところ、かかる行為はゴルフ場の管理権者の意思に反するといえます。
よって、Aさん行為は「侵入」にあたると判断さなれると思われます。
①「建造物」といえるか
建造物侵入罪における「建造物」とは建物のみならずその囲繞地(いにょうち、柵や塀等で周囲が囲まれている土地)を含まれると考えるのが一般的です。
このように考えるとAさんはゴルフ場の建物に侵入したという事情はありませんが、塀を超えてゴルフ場に入ったとあるので窃盗行為を行った土地は囲繞地(いにょうち)にあたると考えられます。
したがって、Aさんは「建造物」に侵入したと判断される可能性が高いです。
以上より、①②の要件を満たすといえるのでAさんの行為には建造物侵入罪が成立すると考えられます。
~窃盗罪~
次にAさんはロストボールを持ち帰っていますが、このような行為に窃盗罪(刑法235条)は成立しないのでしょうか。
窃盗罪は以下のように定められています。
刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
この条文から(1)「他人の財物」といえるか(2)「窃取」といえるかが問題となることがわかります。
(1)「他人の財物」といえるか
窃盗罪における「占有」が認められるかは占有の意思や占有の事実により判断すると考えられています。
とするとロストボールの元の所有者は実際にボールを占有してもいませんし、占有の意思も認められないので「占有」は認められないと思われます。
では、ゴルフ場の管理権者にロストボールの「占有」は認められないでしょうか。
これについてゴルフ場の敷地内は不特定多数の人が自由に立ち入る場所ではなく、またその敷地内にはボールが様々な場所に打ち込まれることが予定されています。
このように考えるとゴルフ場の管理権者はその敷地内にあるボールを占有していると認めることができます。
また、ゴルフ場の管理権者は具体的にどこのボールがあるかを認識していなくとも敷地内のボールを包括的に占有する意思を有しているといえます。
したがって、ゴルフ場の管理権者ははロストボールを「占有」していると認められる可能性が高いです。
(2)「窃取」といえるか
ここでの「窃取」とは相手方の意思に反してその占有を排除して、財物の占有を自身に移転することをいいます。
これを本件についてみると、Aさんがロストボールを持ち去ることでゴルフ場の管理権者の占有が排除されて自己の支配下に移転しているといえます。
よって、Aさんの行為は「窃取」にあたると判断されると思われます。
以上より、(1)(2)の要件を満たすのでAさんの行為には窃盗罪が成立する可能性が高いです。