東京都世田谷区 逮捕 恐喝事件
- 2020.10.13
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
恐喝罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
Aさんは東京都世田谷区に住む友人Vさんに100万円を貸したが返済期になってもVさんが金銭を返さなかったため、Vさんを脅して金銭を取り返そうと考えました。
そこでAさんはVさん宅に侵入し、事前に準備していたバットを構えながら「金を返せ。」と叫びました。
Vさんは急いで金庫に隠してあった100万円をAさんに手渡しました。
Vさんは玉川警察署に被害届を出しました。
このような場合、Aさんはどのような罪で玉川警察署に逮捕されるのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~恐喝罪~
最初に、本件Aさんは脅して金銭を得る目的でVさん宅に無断で侵入しているのでかかる行為には住居侵入罪(刑法130条)が成立すると考えられます。
次にAさんはバットを構えながら返済を迫っているので、このような行為には恐喝罪(刑法249条1項)が成立するように思われます。
今回はどのような場合に恐喝罪が成立するのかを説明していきます。
まず、恐喝罪は以下のような条文で定められています。
刑法249条1項 「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」
簡単に言うと、①「恐喝」をして②「財物を交付させた」場合に恐喝罪が成立するということです。
ただそれだけでなく、恐喝罪は財産に対する罪であるので③相手方に財産上の損害が生じている必要もあると考えられています。
では、本件Aさんは①ないし③の要件を満たすのでしょうか。
①「恐喝」をしたといえるか
この条文における「恐喝」とは相手方の反抗を抑圧するにいたらない程度の暴行・脅迫を手段として財物の交付を要求することをいいます。
そして本件Aさんはバットを構えながら金銭の取り立てを行っているところ、このような行為は「恐喝」にあたると判断される可能性が高いです。
②「財物を交付させた」といえるか
本件でVさんはAさんに100万円を手渡しているところ、Vさんが畏怖して「財物を交付させた」と認められると考えられます。
③財産上の損害が生じているといえるか
本件でAさんはもともと100万円をVさんに貸していたのであり、その返済を受けたに過ぎません。
とするとVさんの全体財産に減少はなく、Vさんには財産上の損害が発生していないとも考えられます。
しかし恐喝罪における財産上の損害とは恐喝行為がなければその財物を交付しなかったという事情がある場合に認められるのが一般的です。
このように考えるとAさんがバットを構えながら「金を返せ。」と叫ばなければVさんは100万円を手渡さなかったといえるので、本件でも財産上の損害が認められると考えられます。
以上より、①ないし③の要件を満たすのでAさんの行為には恐喝罪が成立するとも思われます。
ただ本件でAさんは自身の弁済を得るという自身の正当な権利を行使しているところ、その方法が社会通念上一般に受忍すべきと認められる範囲を超えない限りは正当行為として違法性が阻却されます。
これを本件についてみてみるとAさんは100万円を受け取ったに過ぎないので、そのような行為は正当な権利の範囲内であるとも思われます。
しかしAさんはバットを構えて叫ぶという手段をとっているところ、かかる手段は社会通念上一般に受忍すべき範囲内の方法とはいえないと考えられます。
このように判断されると、Aさんの行為は正当行為にあたらず違法性が阻却されません。
この場合Aさんの行為には恐喝罪が成立します。
~参考条文~
刑法35条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。