東京都新宿 逮捕 信号無視と危険運転致死
- 2020.12.27
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
信号無視と危険運転致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
東京都新宿区に住むAさんは、車で職場まで向かう途中、始業開始時間に間に合いそうになかったため、制限速度を大幅に超えたスピードで車を運転していました。
そして、Aさんは、信号機が設けられている交差点に差し掛かったところ、対面信号機の表示が赤色だったにもかかわらず、同交差点に進入したため、折から同交差点入口の横断歩道上を青信号で横断していたVさんに自車を衝突させて路上に転倒させ、数時間後に、搬送先の病院で死亡させてしまいました。
Aさんは、Aさんの110番通報によって現場に駆け付けた戸塚警察署の警察官により、危険運転致死罪の疑いで逮捕されてしまいました。
逮捕の知らせを受けたAさんの妻は弁護士に初回接見を依頼しました。。
(フィクションです)
~危険運転致死罪とは~
危険運転致死罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の第2条に規定されています。
第2条には罰則のほか、以下のとおりその1号から8号までに危険運転の類型が規定されています。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
上記のケースのような信号無視による危険運転は7号に当たります。
「赤色信号を殊更に無視し」とは、故意に赤色信号に従わない行為のうち、およそ赤色信号に従う意思のないものをいいます。この意思があるかどうかは、運転者が、どの地点で対面信号が赤色表示していたのを認識していたかにもよります。
次に、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、自車が相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいは、相手方の動作に即応するなどしてそのような大きな事故を回避することが困難と認められる速度のことをいい、通常時速20~30キロメートルであればこれに当たると考えられています。
危険運転によって人を死亡させた場合の罰則は「1年以上の有期懲役」です。
~過失運転致死罪の主張も~
上記のように、信号無視による危険運転の罪が成立するには、運転者が故意に赤色信号に従わなかったこと、が最低条件です。
信号無視といっても故意による信号無視と過失による信号無視の2種類があります。
そして、仮に、過失による信号無視だった場合は、罪名は過失運転致死に切り替わり、罰則も7年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金に落ちます。
逮捕段階では危険運転致死罪となっているものの、捜査の過程の中で、Aさんが故意に赤色信号に従わなかったことの立証が難しく、過失運転致死罪に切り替わる可能性もあります。
その判断にあたっては、取調べにおける供述の内容も重要となってきます。
取調べにおいて、どんなことを話せばよいのか、話すべきではないのか困ったら早めに弁護士と接見してアドバイスを受けましょう。