名誉棄損罪と侮辱罪
- 2023.04.01
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
名誉毀損罪と侮辱罪は、内容が似ているので区別が難しいです。
そこで、今回は名誉毀損罪と侮辱罪の違いについて、それぞれの犯罪が成立する事例を挙げながら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【名誉毀損罪と侮辱罪の違い】
名誉毀損罪と侮辱罪は、どちらも誹謗中傷等によって人の名誉を侵害する行為に対する犯罪です。
名誉毀損罪は刑法第230条で規定され、侮辱罪は刑法第231条で規定されています。
- 刑法第230条:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
- 刑法第231条:事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
名誉毀損罪と侮辱罪は、それぞれの犯罪が成立するための行為が似ています。
どちらの条文にも共通して記載されている内容は、「公然」と「事実の摘示」です。
「公然」とは、不特定多数の人が認識できる状態を指します。
名誉毀損罪も侮辱罪も、公然の場で誹謗中傷等の名誉を侵害する行為を受けることで成立します。
逆に、相手と二人きりだった場合は「公然」とは言えないため、名誉毀損罪と侮辱罪は成立しません。
名誉毀損罪と侮辱罪を区別する大きな違いは「事実の摘示」の有無です。
「事実の摘示」があれば名誉毀損罪が成立し、「事実の摘示」がなければ侮辱罪が成立します。
「事実の摘示」とは、具体的であり証拠等と照らし合わせることで真偽判断ができる内容を指します。
例えば、「AはBと不倫している」「Cは過去に逮捕されたことがある」といった内容は、事実の摘示があると認められ、名誉毀損罪に該当します。
これに対し、抽象的で他人に対して軽蔑するような内容だと、事実の摘示があるとは認められず、侮辱罪に該当します。
例えば、「Dはバカ」「Eは仕事ができない」といった内容が挙げられます。
また、名誉毀損罪と侮辱罪は処罰内容も違います。
名誉毀損罪に対する処罰内容は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」で、侮辱罪に対する処罰内容は「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は勾留若しくは科料」となっています。
比較してみると、侮辱罪よりも名誉毀損罪の方が処罰内容が重いことがわかります。
【名誉毀損罪・侮辱罪が成立した事例】
実際に名誉毀損罪や侮辱罪が成立した事例を紹介します。
名誉毀損罪については、検察官によって起訴されて裁判にかけられた事例を紹介します。
侮辱罪については、検察官によって起訴はされたものの、裁判にはかけられていない(=略式起訴)事例を紹介します。
名誉毀損罪が成立した事例
- インターネット上の掲示板で、別件で逮捕された被疑者と被疑者父に関する投稿に対し、被疑者父が経営している会社ホームページのURLを添付し返信したことで、同社に苦情電話等が殺到し名誉を毀損したという事例(福岡地裁令和2年12月10日判決)
- 自身で作成したインターネット上のホームページに、特定のラーメン屋に対して「ここで食事をするとカルト集団に収入が入る」といった虚偽の内容を繰り返し投稿して名誉を毀損したという事例(最高裁平成22年3月15日判決)
侮辱罪が成立する事例
- 商業施設において、周りに人がいる中で、視覚障害者である被害者に対し「お前、周りが見えないんだったらうろうろするな。」などと大声で言い、侮辱したという事例(引用元:法務省「侮辱罪の事例集」)
- 路上で、通行人に対し「くそばばあが、死ね。」などと大声で言い、相手を侮辱したという事例(引用元:法務省「侮辱罪の事例集」)
侮辱罪が成立した上記2つの事例については、裁判は開かれませんでしたが、結果として科料という罰金刑の一種が科せられています。
【名誉棄損罪・侮辱罪の刑事弁護活動】
SNSやインターネットの普及が甚だしい昨今において、スマホやタブレット等で、他人への誹謗中傷行為が容易となっています。犯罪行為とは知らずに、ただ書き込んだだけという場合でも、名誉棄損罪や侮辱座に該当することで、刑事事件の被疑者となってしまいます。
警察から疑いをかけられて任意の取り調べを受けている場合は、弁護士への相談をお勧めします。
弁護士に名誉棄損罪・侮辱罪の刑事弁護活動を依頼すれば、当事者に代わって被害者との示談交渉など、依頼者を全面的にサポートする活動を行います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、名誉棄損罪や侮辱罪はもちろん、様々な刑事事件を取り扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
名誉棄損罪や侮辱罪の刑事事件弁護を担当した実績がある弁護士も数多く在籍していますので、お困りの方は24時間受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご相談ください。