千葉県船橋市 無料相談 背任罪
- 2020.06.20
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 千葉支部
背任罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
千葉県船橋市に住むAさんは事業の経営が行き詰まっていたため、自身が所有する土地甲に抵当権を設定することを約束として友人Vさんから500万円を借り受けました。
しかし500万円では経営を立て直すことは困難だと考えたAさんはVさんについての抵当権登記をしないまま、さらに300万円を借り受けるために別の友人Xさんに対して抵当権の登記をしました。
このような場合Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~背任罪~
本件でAさんはVさんに対して抵当権を設定すると約束していたにもかかわらず、追加の金銭を借りるために別の友人Xさんに対しての抵当権登記をしています。
そして、これによりVさんは1番抵当権を得ることができなくなっています。
このような本件ではAさんに背任罪(刑法247条)が成立すると思われます。
今回は背任罪の成立について検討していきます。
まず、背任罪は刑法で以下のように定められています。
刑法247条 「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人の損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人の財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
この条文から背任罪が成立するには、簡単には①「他人のための事務を処理する者」が②「利益を図る又は損害を加える目的」で③「任務に背く行為」をし④「財産上の損害を加えた」という要件を充足する必要があると考えられます。
以下、本件で①ないし④の要件を満たすか検討していきます。
①「他人のために事務を処理する者」
本件でAさんはVさんに対して抵当権を設定することを約束しているところ、このようなAさんがVさん「のために事務を処理する者」といえるのでしょうか。
抵当権の登記をすることが「他人の事務」といえるかが問題となります。
これについて、抵当権の登記はAさんが甲という自身の所有する土地についてする行為であって「他人」のためのする行為ではないとも考えられます。
しかし登記とはVさんが抵当権を周りに対抗するために必要なものであり、その登記をするにはAさんの協力は不可欠です。
とするとAさんによる抵当権の登記はBさんの抵当権を保全するための行為といえ、「他人の事務」にあたると判断される可能性が高いです
②「利益を図る又は損害を加える目的」
本件ではAさんは金銭を借り受けるために本件行為を行っているところ、自己の「利益を図る」目的があったといえます。
③「任務に背く行為」
この「任務に背く行為」とは簡単には法的に期待されることに反する行為をいうと考えられています。
これを本件について見てみると、AさんはVさんのために抵当権登記に協力する義務を負っています。
それにもかかわらずAさんはXさんに対して抵当権の登記をしているところ、上記義務に違反したと判断される可能性が高いです。
④「財産上の損害」
本件Vさんには金銭等の損害が生じたわけでなく、1番抵当権が得れなかったに過ぎません。
このような場合でも「財産上の損害」は認められるのでしょうか。
これについて、「財産上の損害」が生じているかの判断は経済的な見地から評価するべきであるというのが一般的です。
そして1番抵当権と2番抵当権では経済取引においてその価値が大きく異なることを考慮すると、1番抵当権を得られなかったことは「財産上の損害」であると判断される可能性が高いです。
以上より、本件では①ないし④の要件を満たしていると判断されると思われます。
このように判断されると、Aさんには背任罪が成立します。
仮にXさんがVさんを害する意図でAさんと契約を結んだ等の事情があれば、Xさんに背任罪の共犯が成立する可能性もあります。