群馬県太田市 無料相談 自殺関与罪と殺人
- 2020.01.07
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 さいたま支部
弁護士法人あいち刑事事件綜合法律事務所 さいたま支部が解説します。
群馬県太田市に住むAさんは友人Vさんと付き合っていましたが、その付き合いを終えたいと思うようになりVさんに別れを告げました。
しかし、Vさんがそれに応じなかったことからAさんは面倒に感じ「俺も後で追いかけるから、一緒に自殺しよう。」とVさんに心中を申し出ました。
そしてAさんの発言を信じたVさんは「Aが一緒に死んでくれるなら自殺してもよい」と考え、Vさんは自殺しました。
ただしAさんはVさんに心中を申し出た時点から自殺する気はなく、Vさんの死亡を確認したのち自身は自殺しませんでした。
このような場合Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか無料相談してみましょう。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~自殺関与罪と殺人罪~
前回のブログでは人に自殺を唆すと自殺関与罪(刑法第202条)が成立する可能性があることを説明しました。
本件でAさんはVさんを騙して自殺を唆していますが、このような場合でも自殺関与罪は成立するのでしょうか。
これについて、VさんはAさんの発言により自殺を決意していることからAさんには自殺関与罪が成立するようにも思われます。
しかしVさんは自身の自殺の後にAさんも自殺すると信じて自殺を決意したのであり、Vさんは自殺の動機の決定的な要素について重大な誤信があったといえます。
とするとVさんの自殺についての決意は真意に沿わないものであり、Aさんによる教唆行為はVさんの誤信を利用してVさんを殺害しようする行為であると考えられます。
このように考えると、Aさんには殺人罪(刑法第199条)が成立する可能性があります。
ただ本件においてAさんはVさんの誤信を利用しただけであって、自身の手でVさんを殺害したわけではありません。
このような場合でも殺人罪の成立を認めることはできるのでしょうか。
この点前述のようにAさんはVさんの誤信を利用して殺人罪を成立させようとしているところ、Aさんには殺人罪の間接正犯が成立する可能性があります。
間接正犯とは自身で犯罪を実行しない場合でも、他人を道具として利用することにより犯罪を実現することをいいます。
間接正犯として認められると、自身で犯罪を実行した場合と同様に扱われます。
なので、間接正犯として認められるには自身で犯罪を実行した場合と同様の現実的危険を生じさせる必要があります。
つまり、①犯罪を実現しようとする意思をもって②他人の行為を道具として一方的に支配・利用したと認められる場合に間接正犯が成立すると判断される可能性が高いです。
これを本件について見てみると、AさんはVさんを殺害しようという意思を有しているので殺人罪を実現しようとする意思があったといえます(①)。
またAさんは自身も追死するとVさんを騙して自殺を行わせているところ、追死に対する誤信によりVさんは自殺について自由な意思決定ができない状況にあったと考えられます。
そしてAさんはVさんが自由な意思決定をできない状況において追死を誤信していることを認識しながらそれを解消することなく自殺を唆しているところ、AさんはVさんによる自殺行為を一方的に利用していると判断されると思われます(②)。
以上より、Aさんは上記①②の要件を満たすので間接正犯が成立すると判断される可能性が高いです。
このように判断されると、Aさんは自殺関与罪ではなく殺人罪の罪責を負います。
~参考条文~
刑法第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法第202条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。