北海道旭川市 逮捕 窃盗少年事件
- 2020.01.31
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 札幌支部
窃盗罪と盗品等無償譲り受け罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。
北海道旭川市に住む少年A君(18歳)は、友人のB君と共謀してVさん所有の財布を盗ったとして北海道旭川警察署の警察官に窃盗罪で逮捕されました。逮捕の通知を受けたA君の母親は驚き、すぐさま少年事件に強い弁護士にA君との接見を依頼しました。A君は接見に来た弁護士に「A君が盗んだ財布が盗品(盗んだ物)であることは聞かされており、それをタダで受け取ったことは間違いない。」「しかし、自分は窃盗には関与していない。」と言いました。そこで、A君と接見した弁護士は少年には窃盗罪ではなく盗品等無償譲り受け罪が成立すると判断し、勾留後の捜査段階から検察官に意見書を提出するなどして盗品等無償譲り受け罪の成立を主張しました。そうしたところ、A君の事件は、罪名が窃盗罪から盗品等無償譲り受け罪に変更されてから家庭裁判所に送致されました。また、弁護士はA君に対する観護措置が取られないよう家庭裁判所に意見書を提出したところ、観護措置を取られることなくA君は釈放されました。
(フィクションです)
~ 窃盗罪と盗品等無償譲り受け罪について ~
他人の物を盗んだ場合は窃盗罪に当たります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
また、他の人と一緒になって他人の物を盗んだ場合は窃盗罪の共犯に問われるおそれがあります。
刑法60条
2人以上共同して犯罪を実行した者は、すでて正犯とする。
しかし、窃盗自体に関与しておらず、窃盗後の事後行為にのみ関与したに過ぎない場合は窃盗罪ではなく盗品等の罪に問われる可能性があります。
盗品等に関する罪は刑法256条に規定されています。
刑法256条
1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
1項では、盗品を無償で譲り受ける行為、2項では、運搬、保管、有償での譲り受けのほか、有償処分(売買)のあっせん(あっせん自体は有償、無償を問わない)の行為が規定されています。
なお、「盗品」とは、財産犯によって取得された財物であって、被害者が法律上その返還を請求できるものをいいます。財産犯には、窃盗罪のほかに
・強盗(刑法236条など)
・詐欺(刑法246条など)
・背任罪(刑法247条)
・恐喝罪(刑法249条)
・横領(刑法252条など)
も含まれます。
ただ、窃盗の事後行為に関与した、という場合でもやはり窃盗の本犯者(本件の場合、B君)と意を通じたと認められる場合はやはり窃盗罪に問われる可能性もあります。いずれが成立するか判断に迷う場合は弁護士とよく協議する必要があります。
~ 観護措置とは ~
観護措置とは,通常,少年の身柄を少年鑑別所に送り,そこに一定期間(通常4週間,最長8週間)収容すること指します。
逮捕~勾留という身柄拘束に引き続き、家庭裁判所送致後も身柄が拘束されるわけですから観護措置が取られれば,少年の生活に多大な影響を及ぼすことになります。
ただ、少年法17条は「審判を行うため必要があるとき」は決定をもって観護措置をとることができると定めています。
この「審判を行うため必要があるとき」とは,具体的には
①罪証隠滅・逃亡の恐れがあること
②少年の緊急保護の必要があること
③心身鑑別の必要があること
をいうと解されています。
したがって,①から③の条件を満たさない限り、観護措置を取られず釈放される可能性もあります。
本件では、弁護士が少年に①から③の事情が認められないことを裁判所に丁寧にアピールした結果、A君は釈放されています。