神戸市長田区 無料相談 占有離脱物横領罪
- 2020.04.14
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 神戸支部
占有離脱物横領罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
神戸市長田区に住むAさんはパチンコ店でパチンコをしていたところ、隣席の台座の上に財布1個が置かれてあるのを見つけました。Aさんは「誰かが置き忘れたのかな」「しかし、トイレにでもいって戻ってくるかもしれない」と思いそのままにしていたところ、1時間以上経過しても持ち主が戻ってくることはありませんでした。そうしたところ、Aさんはパチンコに負けお金もなくなっていたことから「この財布を奪ってしまえ」と思い、財布を手に取って中身を確認すると2万円が入っていました。そこで、Aさんはこの2万円を使って再びパチンコをしました。一方、財布の持ち主であるVさんは、パチンコ店から約5キロ離れた自宅に帰ってから財布をパチンコ店に置き忘れたことに気づきました。そこで、Vさんはパチンコ店に戻り財布を探しましたが財布を見つけることはできませんでした。Vさんは、店員に落とし物として届けられていないか確認しましたが、届けられていないとのことでした。Vさんは誰かに盗られたと思い、店員及び兵庫県長田警察署の警察官に被害申告しました。そうしたところ、防犯ビデオ映像などから財布を盗ったのはAさんであることが判明し、Aさんは占有離脱物横領罪の被疑者として警察で取調べを受けることになりました。
(フィクションです。)
~ 占有離脱物横領罪 ~
占有離脱物横領罪は刑法254条に規定されています。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
「遺失物」も「漂流物」も「その他占有を離れた他人の物(占有離脱物)」の例示です。
そして、「その他占有を離れた他人の物」とは、その物(本件でいえば財布)の持ち主の元(占有)から離れたものをいいます。
「横領」とは、簡単にいうと自分のものにすることです。
では、本件の財布は、「持ち主の元から離れたもの」すなわち「占有離脱物」と言えるのでしょうか?
この点、Vさんの財布に対する「占有」が及んでいない場合は占有離脱物といえますが、「占有」が及んでいる場合は「他人の物」として窃盗罪(刑法235条)の客体となります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
占有離脱物横領罪の罰則は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」、窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と罰則に大きな開きがあります。そこで両者を区別する実益が生じます。
財布に対する「占有」が及んでいるか否かは、
①財物自体の特性(貴重品か否か、大きさ、重さなど)
②占有者の支配の意思の強弱
③被害者が財物を取り戻すに行くまでの時間、距離
などの具体的事情から判断されます。
これを本件に現れた事情に当てはめると、
①財布=お金、免許証などの貴重品が入っている
②Vさんは自宅に帰ってから財布を置き忘れたことに気づいている=財布に対する意思がいったん途切れている
③Vさんが置き忘れてから取りに行くまで1時間以上は経過している、パチンコ店から自宅まで約5キロほど離れている
ということになり、①の事情はVさんの財布に対する「占有」を肯定する事情になりえますが、②、③は反対に否定する事情になりえます。
以上を総合するとVさんの財布に対する「占有」は否定される可能性が高く、本件財布は「占有離脱物」である可能性が高いでしょう。
~ 占有離脱物横領罪で示談交渉するには ~
ご自身のしたことを認める場合には、直ちに被害者と示談交渉に入り示談を成立させましょう。
示談交渉は加害者、被害者の事件当事者で行うことも可能です。
しかし、そもそも示談交渉を始めるには被害者とコンタクトが取れなければなりませんが、加害者が直接被害者尾とコンタクトを取ることは事実上困難でしょう。
そこで、示談交渉を弁護士に任せていただければ、弁護士が被害者とコンタクトを取り示談交渉を進めてまいります。
示談を成立させることができれば不起訴処分を獲得できる可能性が高くなるでしょう。