京都市伏見区 無料相談 強盗事件での共犯からの離脱
- 2020.06.02
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
強盗事件の共犯からの離脱について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
京都市伏見区に住むAさんは金銭に困っていたため、友人Bさんに丹波橋駅付近に住んでいるVさん宅に強盗に押し入ろうと持ち掛け一緒に計画を練りました。
Bさんはその計画に賛成しましたが、計画当日になり体調が悪くなったAさんは「俺は今日行くことができない。この計画からは手を引かせてくれ。」とBさんに電話しました。
Bさんはそれを了承した後一人でVさん宅に押し入り、Vさんを脅すことで現金を奪って逃亡しました。
このような場合、AさんとBさんは伏見警察に逮捕されるのでしょうか、それぞれどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~離脱~
最初にBさんは強盗目的でVさん宅に押し入っているので、Bさんの行為には住居侵入罪(刑法130条)が成立すると思われます。
次にBさんはVさんを脅して現金を奪っているところ、かかる行為には強盗罪(刑法236条1項)が成立すると考えられます。
では、その強盗計画を一緒に考えたAさんは何かしらの責任を負わないのでしょうか。
Aさんに住居侵入罪及び強盗罪の共同正犯(刑法60条)が成立しないか問題となります。
まず、共同正犯の条文を確認します。
刑法60条 「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」
これを本件について見てみると、Aさんは侵入行為や強盗行為をしていないので「共同して犯罪を実行した」とはいえないようにも思われます。
ただ共同正犯は互いに利用・補充し合って犯罪を実行する場合に成立するところ、①自身の犯罪として行為を実行する意思②共謀③共謀に基づく実行行為があれば共同正犯の成立が認められるのが一般的です。
本件ではAさんは自らBさんに強盗を提案しているところ、計画において重要な役割を果たしており「自身の犯罪として行為を実行する意思」を有していると考えられます(①)。
そして、AさんとBさんは共に計画を練っているので「共謀」も認められると思われます(②)。
その計画に基づいてBさんはVさん宅に侵入し強盗を行っているので、共謀に基づく実行行為も認められる可能性が高いです(③)。
そのため、Aさんの行為には住居侵入罪及び強盗罪の共同正犯が成立し得ます。
もっともAさんは「俺は今日行くことができない。この計画からは手を引かせてくれ。」とBさんに電話しているので、共同正犯から離脱したと考えることはできないのでしょうか。
離脱が認められた場合、Aさんはその後の罪については責任を負わないと考えられます。
これについて前述のように共同正犯は互いに利用・補充し合って犯罪を実行する場合に成立するので、そのような相互利用補充関係が解消された場合に共同正犯からの離脱が認められるのが一般的です。
本件について見てみるとBさんはAさんが計画から抜けることを了承しているので、心理的な因果性は解消されていると思われます。
また本件で武器などの提供は行われていないので、Aさんが計画に参加しないことで物理的な因果性は解消されていると考えられます。
したがって相互利用補充関係は解消され、共同正犯からの離脱が認められる可能性が高いです。
そのように判断された場合、Aさんの上記行為に住居侵入罪及び強盗罪の共同正犯は成立しません。
また、Aさんには強盗予備罪の中止犯(刑法43条ただし書・237条)が成立する可能性もあります。
~参考条文~
刑法43条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法236条1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法237条 強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。