宮城仙台 飲酒 自動車検問
- 2021.08.15
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 仙台支部
飲酒の自動車検問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。
宮城県仙台市では飲酒運転による事故が多発していたことから、飲酒運転を含む交通違反を取り締まる目的で一斉交通検問が行われることが決定しました。
その交通検問は土曜日の10時から12時にかけて、飲酒運転が多いと考えられる繁華街周辺で行われるものでした。
仙台中央警察署で勤務する警察官Kさんはその交通検問において、赤色灯を回してAさんの車を停止させ、運転免許証の提示を求めました。
その際にAさんから酒臭を感じたKさんは車を降りるようにAさんに告げ、仙台中央警察署までの任意同行を求めました。
このようなKさんの行為は適法といえるのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~自動車検問~
まず本件でKさんは交通違反を取り締まる目的で一斉交通検問を行っていますが、警察官がこのような行為を行うことは適法といえるのでしょうか。
どのような根拠により交通検問が認められるのかが問題となります。
これについて過去の判例(最決昭和55年9月22日)は、警察法2条1項を根拠として
交通検問を認めたとされています。
もっとも警察法は「個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的」(同法1条)とする組織法であります。
組織について定めたこのような法律を警察官の具体的な職務の根拠とするのは妥当ではないと考えられます。
そこで警察法ではなく、警察官職務執行法2条1項を根拠に交通検問を認めるべきであるという考えも有力です。
警察官職務執行法2条1項は職務質問について定めた条文であるのですが、交通検問も職務質問の一つの類型であることから同項により交通検問も認められると考えられています。
ただ警察官職務執行法2条1項が根拠として交通検問が行われるとしても、交通検問を無制約に認めてしまうと検問を受ける者の権利を侵害してしまう恐れもあります。
そこで交通検問は対象者の権利利益侵害を不当に侵害しない場合に認められると考えられています。
前述の判例でも「交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適法な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対して必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。」と述べられました。
簡単に言うと①適当な場所で、②短時間の停止を求めて、③相手方の任意の協力を求める形で、④自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法・態様で行われる限り、交通検問は適法なものとして認められるということです。
これを本件について見てみると仙台市では飲酒運転による交通事故が多発しており、このような事故を防止するために飲酒運転を含む交通違反の取り締まりを目的として交通検問が行われています。
まず本件交通検問は土曜日10時から12時の華街周辺という飲酒運転が多いと考えられる時間・場所で行われており、このような交通検問は適当な場所においてなされているといえます(①)。
また、Kさんは赤色灯を回してAさんの車を停止させ免許証の提示を求めているのであり、このような行為は短時間の協力を任意に求めているものといえます(②、③)。
そしてKさんは無理やりAさんに何かの行為を要求する等しておらず、警察署への任意同行を求めているだけであるところ、かかるKさんの行為はAさんの自由を不当に制約するような方法・態様にあたるとは考えられません(④)。
以上より、本件Kさんの行為は適法と判断される可能性が高いです。
~参考条文~
警察法2条1項 「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」
警察官職務執行法2条1項 「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止されて質問することができる。」
仙台中央警察署 宮城県仙台市青葉区五橋五橋1丁目3-19 022-222-7171