名古屋市守山区 無料相談 情報窃盗事件
- 2020.04.03
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 名古屋本部
窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市守山区に住むAさんは友人Vさんと仲が悪かったため、Vさんに嫌がらせをしようと考えました。
そこでAさんはVさんが書いたレポートのデータを壊してやろうと思い、Vさん宅に侵入しそのデータが記録されたフロッピーディスクを持ち去りました。
このような場合、Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~窃盗罪~
まず、本件でAさんは窃盗目的でVさん宅に侵入しているのでAさんには住居侵入罪(刑法130条)が成立します。
次にAさんはVさんのフロッピーディスクを盗んでいるところ、この行為には窃盗罪が成立するようにも思われます。
ただ本件でAさんは窃盗の目的ではなくフロッピーディスクを壊す目的を有しているのですが、このような場合にも窃盗罪の成立を認めてもよいのでしょうか。
今回はどのような場合に窃盗罪が成立するのかを説明していきます。
最初に窃盗罪の条文は以下のように定められています。
刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
この条文から窃盗罪が成立するかは①「他人の財物」であるか、また②「窃取」したといえるかが問題になるとわかります。
以下、本件において①②を満たすか順に検討していきます。
①「他人の財物」といえるか
これを本件についてみてみると、AさんはVさんのフロッピーディスクを盗んでいるのでこれが「他人」のものであることは間違いないといえます。
そしてAさんはVさんのレポートのデータを壊そうとしているところ、このような情報等は物理的に管理ができないので「財物」に含まれないようにも思われます。
しかし本件でAさんはレポートのデータが記録されたフロッピーディスクを盗んでいて、そのようなフロッピーディスクは情報と一体となって財産的価値を有する物であるといえるので「財物」にあたると考えられます。
このように判断されると、Aさんが盗んだフロッピーディスクは「他人の財物」にあたるといえます。
②「窃取」したといえるか
まず、簡単には「窃取」とは相手の意思に反してその物の占有を自身の下に移すことをいいます。
そして本件でAさんはVさん宅にあったフロッピーディスクを無断で家から持ち出しているので、Aさんの行為は問題なく「窃取」にあたるとようにも思われます。
とすると、本件でAさんは「他人の財物」であるフロッピーディスク(①)を「窃取」した(②)といえるので窃盗罪が成立するように思えます。
しかし、窃盗罪が成立するには上記①②の要件に加えて③不法領得の意思が必要であると考えられています。
不法領得の意思とは権利者を排除し他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従いこれを利用または処分する意思のことをいいます。
この不法領得の意思を必要とすることにより、窃盗罪は使用窃盗や毀棄罪と区別されます。
この不法領得の意思の有無を本件について見てみると、Aさんは前述のとおりフロッピーディスクを壊す目的で持ち去っています。
そしてこのフロッピーディスクを壊すという行為は、一般的に考えられる経済的用法に従ってフロッピーディスクを処分しているとはいえないと考えられます。
よって、Aさんは不法領得の意思を欠く(③)と判断される可能性が高いです。
そしてこのように判断されるとAさんに窃盗罪は成立しません。
~参考条文~
刑法第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。