奈良 無料相談 強盗事件
- 2022.05.02
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 大阪支部
事後強盗罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
奈良県奈良市に住むAさんは知人Vさんが高級な絵画を自宅に保管しているという噂を聞きつけ、その絵画を盗んで売却することで金銭を得ようと考えました。
そこでAさんはVさん宅に侵入し絵画を探しましたが、それを見つけることができなかったので何も盗らずにVさん宅から出ていきました。
たまたまその現場を目撃したVさんはAさんを捕まえようと思い、Aさんをそのまま追いかけましたが見失ってしまいました。
その数分後Vさん宅から100メートルほど離れた場所でAさんを見かけたVさんが追跡を再開したところ、Aさんは自身が捕まることを防止するためにVさんに向かって大きな石を投げつけました。
このような場合、Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~事後強盗罪~
まずAさんは窃盗目的でVさん宅に侵入しているので、その行為には住居侵入罪(刑法130条)が成立すると考えられます。
次にAさんは盗むためにVさん宅で絵画を探し回っているので、この行為は窃盗罪(刑法235条)に当たるようとも思われます。
もっともAさんは絵画を見つけることができず、結局何も盗らずにVさん宅を出ているので、この行為には窃盗未遂罪(刑法243条)が成立する可能性が高いです。
そしてAさんがVさんに石を投げつけた行為には、事後強盗罪(刑法238条)が成立するか問題となります。
以下、同罪の成立を検討していきます。
刑法238条 「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するするために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」
最初に事後強盗罪の主体は「窃盗」である必要がありますが、窃盗の未遂・既遂は問わないと考えられています。
したがって、窃盗未遂罪を犯したAさんも同罪における「窃盗」にあたります。
次にAさんは自身が捕まることを防止するために石を投げつけているところ、「逮捕を免れ」るためにこの行為をしているといえます。
そして同罪における「暴行」は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要すると考えられていますが、本件Aさんの大きな石を投げるという行為はVさんの身体に危険を及ぼすものであり、かかる行為は反抗を抑圧するに足りる程度のものとして「暴行」にあたると思われます。
もっともAさんによる「暴行」は窃盗が行われてから数分後、100メートルほど離れた場所で行われています。
このような場合にも事後強盗罪の成立を認めてもよいのでしょうか。
これについて、事後強盗罪における暴行・脅迫は窃盗の機会になされる必要があると考えられています。
そして、窃盗の機会といえるかどうかは場所的・時間的近接性や被害者による追跡の有無などが判断要素となります。
本件について見てみるとAさんによる暴行は窃盗現場から100メートルほど離れた場所で行われており、場所的な近接性は認められるといえます。
また、Vさんは窃盗現場からAさんを追いかけており、一度見失ってはいますがその数分後という近接した時間で追跡を再開しています。
このような事情からすると、Aさんによる暴行は窃盗の機会に行われたと判断される可能性が高いと思われます。
以上より、Aさんの行為には事後強盗罪が成立すると考えられます。
~条文~
刑法130条 「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
刑法235条 「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法243条 「第235条から第236条まで及び第238条から第241条までの罪の未遂は、罰する。」