大津市 無料相談 強盗事件の教唆犯
- 2022.10.23
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部
強盗事件の教唆犯について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
滋賀県大津市に住むAさんは金銭に困っていたため知人V宅に押し入って現金を強奪しようと考え、友人Bさんにその計画を手伝ってくれないかと頼みました。
昔からAさんと仲の良かったBさんはその提案を了承し、AさんがVさん宅に侵入し現金を探している間、周囲に人が来ないように見張りをすることを約束しました。
計画当日、Aさんは自ら用意したナイフをVさんに突きつけ現金数十万円を奪って逃走しました。
このような場合、AさんとBさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~強盗罪~
まず、AさんはVさん宅に「侵入」しナイフを突きつけることによって現金数十万を「強取」しているので、Aさんの行為には住居侵入罪(刑法130条)と強盗罪(刑法236条1項)が成立すると考えられます。
では、Aさんの犯罪に協力したBさんにも同じく住居侵入罪及び強盗罪が成立するのでしょうか。
Bさんは実際に犯罪行為を実行していないところ、Bさんに共謀共同正犯が成立するかどうかが問題となります。
共謀共同正犯とは、複数人が犯罪を行うことを共謀してそのうちの一人が犯罪を実行した場合には実行行為を担当しなかった者についても共同正犯(刑法60条)が成立するというものです。
簡単に言うと、犯罪を共謀した者は自ら犯罪を実行していなくとも共同正犯となりうるということです。
共謀共同正犯の肯否についてはいくつか学説もあるのですが、①共謀があり②その共謀に基づく実行行為が存在し③正犯意思(自ら犯罪を実行しようとする意思)が認められる場合に共謀共同正犯の成立が認められるとする見解が有力です。
以下、本件Bさんに①②③が認められるかを検討していきます。
①共謀について
本件ではAさんが計画を企てていますが、Bさんはその計画の内容を知らされており、それについて了承もしています。
したがって、本件ではVさん宅への強盗計画について共謀があったと考えられます。
②共謀に基づく実行行為について
確かに本件でBさんは住居侵入や強盗にあたる行為を行っていませんが、前述のとおりAさんの行為は住居侵入罪及び強盗罪に当たると考えられます。
そしてAさんの行為はAさんとBさんの計画に基づくものなので、AさんとBさんの共謀に基づく実行行為が存在するといえます。
③正犯意思について
正犯意思が認められるか否かは、目的・役割・利益等によって判断されます。
これを本件について見てみると、Bさんは計画を持ち掛けられただけであり、自らVさん宅で現金を盗もうという積極的意思を有していたわけではありません。
また、BさんはAさんがVさん宅に押し入る間に見張りを行っただけであり、重要な役割を果たしていたとまではいえません。
そして、BさんはAさんから分け前等に利益を受け取っていない以上、Bさんには正犯意思が認められない可能性が高いです。
したがって、Bさんには共謀共同正犯が成立せず、住居侵入罪と強盗罪の幇助犯(ほうじょはん、刑法62条1項)が成立するにとどまると考えられます。
そのように判断された場合、Bさんには正犯の刑を減軽した刑が科されます(刑法63条)。
~条文~
刑法60条 「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」
刑法62条1項 「正犯を幇助(ほうじょ)した者は、従犯とする。」
刑法63条 「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。」
刑法130条 「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
刑法236条1項 「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」