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埼玉県 虐待防止条例 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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埼玉県 虐待防止条例

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 さいたま支部

 

令和5年10月3日,埼玉県議会の委員会で「埼玉県虐待防止条例の一部改正案」が可決され,10月13日に本議会で採決が行われる予定となっています。
この条例の改正案について,10月10日の時点で,県に対して800件を超える反対意見が寄せられているようです。
参考ニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231010/k10014220401000.html
この条例案は,どのような点に問題があるのか,刑事事件に強いあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説をします。

 

1 どんな改正案なのか
まず,委員会で可決された改正案の内容について見てみます。
おおよそ内容としては,
・小学3年生以下の子供を残したままで「放置」してはならないこと
・「虐待」を受けた児童を発見した場合には,県民は速やかに通報をしなければならない
というものです。
このような改正を提案した目的については,
児童が放置されることにより危険な状況に置かれることを防止するため…その他の放置をしてはならない旨を定める等したい
とされています。
近年,子供を自動車内に置いたまま親が買い物に出たり,パチンコ等の遊戯に興じていたりして痛ましい事件が起きています。
おそらく,そのような凄惨な事故,事件を防ぐことを目的としているのかと思われます。
改正案の注意点としては,放置≠虐待であることです。
埼玉県虐待防止条例によると,「虐待」に該当する行為は次のようなものとされています。
・法律上虐待とされているもの
・児童の財産を不当に処分すること
・施設等の職員が,児童に対する職務上の義務を著しく怠ること
・未成年を雇用している者が児童に食事を与えなかったり長時間放置すること
これらの行為が,条例上は「虐待」行為であるとされています。
今回の改正案では,児童を放置してはいけない,と定めていますが,「虐待」の類型に「放置」を追加していません。
そのため,親が小学3年生以下の子供に一人で留守番させることは「放置」にあたってしまいますが,虐待には当たらないことになります。
一部では,「家に子供を措いて有職の買い出しに出かけたら,近所の人に通報されてしまうのか」という声もあるようです。
しかし,「放置≠虐待」ですから,近所の人としても通報義務があるわけではありませんし,虐待に該当するわけでもありません。

 

2 現在の条例
ところで,改正案が提出される前の埼玉県虐待防止条例には,次のような条項もあります。
「養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)は、その養護する児童等の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について配慮しなければならない。」
この条項に付け加える形で,上記の「放置」してはならない,という条項を新設するのが,改正案です。
現在の規定は,親や養護者に対して,子供の生活環境を安全に保つように定めたものです。
ここでいう「安全の確保について配慮」を具体化したのが,小学3年生以下の子供を放置してはいけない,というものになるのです。
つまり,現在の条例からも,「子供が熱中症になったり,怪我をしたりしてしまう環境に置いてはいけない」という定めにはなっているのです。
改正案にてあえて「放置」を抜き出すというのは,それだけ児童の生命・身体に対する危険を予期してのことかもしれませんが,既にある条項とも大きく重複する部分ではあります。

 

3 放置をしたら犯罪になるのか?
この改正案が実際に施行された時,子供を一人で留守番させる行為が犯罪に該当してしまうのでしょうか。
該当する可能性があるのは「保護責任者遺棄罪」でしょう。
保護責任者遺棄罪とは,子供や病人などを保護する責任のある人がそれらの者を遺棄したり,または必要な保護をしなかった場合に成立する犯罪です。
有罪となった場合には3月以上~5年以下の懲役刑に処せられます。
埼玉県虐待防止条例が可決されて,小学3年生以下の子供を家に置いたままで出かけることが「放置」になってしまうとしたら,保護責任者遺棄罪が成立してしまうのでしょうか。
結論から言うと,「それだけで保護責任者遺棄罪に該当する可能性は低い」でしょう。
そもそも,この条例は埼玉県だけで通用するものになります。ですから,埼玉県だけで保護責任者遺棄罪について厳しくなるということはあり得ません。
犯罪が成立するかどうかは,住んでいる地域によって異なることはなく全国で統一されなければならないからです。
また,「遺棄」とは,被害者を保護しないで危険な状態にさらすことを言います。そのため,家に一人で留守番させていたというだけでは,危険な状態にさらしていたとまでは言えないでしょうから,保護責任者遺棄罪に該当する可能性は低いと言えるのです。
ただし,真夏でエアコンをつけないで窓も締め切った室内に留守番をさせるとか,コンロの火をつけっぱなしにして火事になったりガス漏れが発生したりする危険がある中で放置するという行為は,保護責任者遺棄罪に該当してしまう可能性があります。
これらは,一人で留守番をさせた事よりも,「真夏にエアコンなし」とか「火をつけっぱなし」など,「子供が1人」+「子供には対処できない危険」があるからこそ,遺棄にあたると思われるのです。
「放置=犯罪,危ない」と安直に考えるのではなく,「本当に子どもにとって危険なのは何か」ということをもっとよく考えなければいけないでしょう。

 

4 結びに代えて
今回,埼玉県虐待防止条例の改正案について,刑事事件に強い事務所の視点から解説をしました。
「放置」が直ちに虐待にあたるものではなく,また,それ自体が犯罪になるわけではありません。
条例の改正案では,「児童の放置の防止に資する施策を講ずるものとする」ともあります。
「親に児童の放置をさせない,ずっと見ていろ」というのではなく,社会全体で子供を見守り危険から遠ざけること,どんな時に子供に危険が生じるのかを考えること,このような視点の方が,ずっと大切なのではないでしょうか。

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