さいたま市大宮区 逮捕 恐喝事件
- 2021.01.10
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 さいたま支部
恐喝罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所さいたま支部が解説します
さいたま市大宮区に住むAさんは、通行人のVに、カッターナイフを見せながら、「お前、お金もっているだろう。」、「金を出せ。」などと申し向け、「おとなしく金を出さなければ殺すからな。」などと言い、Vさんから現金5万円の交付を受けました。ところが、Aさんは、後日、大宮警察署に恐喝罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~恐喝罪とは~
恐喝罪について、恐喝罪の成立要件と罰則についてみていきましょう。
~恐喝罪の成立要件~
恐喝罪は刑法249条に規定されています。
(恐喝)
刑法249条
1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「恐喝」とは、財物(現金など)又は財産上の利益(借金を免除させるなど)を供与させる手段として、人を畏怖させる(怖がらせる)ような暴行・脅迫(害悪の告知)を用いることをいいます(通常は、脅迫の場合が多いと思われます)。ただし、恐喝罪は強盗罪と異なり、相手方(被害者)の財物の交付や財産上の利益の供与は、相手方の意思に基づいて行われることを必要とします。したがって、暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のものでなければならないとされています。仮に、その程度を超えると強盗罪となります。
「財物を交付させる(1項)」とは、恐喝によって畏怖した相手方の財産的処分行為(財物の交付)に基づいて財物の占有を取得することをいいます。「喝取」とも呼ばれます。相手方が自ら提供した場合はもとより、その提供を待たず、相手方が畏怖し黙認しているのに乗じて財物を取得した場合も財物を交付させたことに当たります。
「財産上不法の利益を得る(2項)」場合も、まずは、恐喝によって畏怖した相手方の財産的処分行為に基づくことが必要で、それによって不法に財産上の利益を得、又は他人に得させることをいいます。「不法」とは利益取得のための手段が不法であることを意味し、利益そのものが不法であることを意味するものではありません。2項の財産的処分行為は、何らかの行為を必要とするものではなく、相手方の意思表示さえあれば足りるとされています。そして、その意思表示は、積極的意思表示のみならず、黙示ないしは不作為によってなされる意思表示も含まれるとされています。
以上をまとめると、恐喝既遂罪は「恐喝→相手方の畏怖→相手方の財産的処分行為(財物の交付(1項)、又は相手方の意思表示(2項))→財物の交付(1項)、又は財産上不法の利益を得、あるいは他人にこれを得させる」という因果の流れが認められて成立する犯罪ということができます。また、恐喝はしたが、何らかの事情で、相手方に財産的処分行為をさせなかったという場合は恐喝未遂罪が成立します。
1項の恐喝罪が成立する例としては、カツアゲ、強請り、タカリなどが例として挙げられます。スタンガンをちらつかせながら、「痛い目に遭いたくなかったら金よこせ」と言うこと(カツアゲの典型)、不倫相手に、「あなたとの関係をばらされたくなければ、手切れ金としてお金を払って」と言うこと(強請りの典型)は「恐喝」に当たります。そして、それによってお金を受け取れば、恐喝罪の因果の流れをたどり、恐喝罪が成立します。
2項の恐喝罪が成立する例としては、相手方に飲食代金、宿泊代金、運賃などの支払債務を免除する意思表示をさせる場合のほか、代金の支払いを一時猶予させる、断念させる場合などが挙げられます。代金支払いの請求を受けた店員に「今日、オレ、刑務所から出てきたばっかりでね。人一人殺して8年入ってたんよ」「(代金を)まけてもらわないと、どうなるかわかるよね」などと言うことが「恐喝」に当たり、店員に支払いを断念させ(黙示の意思表示をさせ)て代金の支払いを免除させることが「財産上不法の利益を得る」ことに当たり、恐喝罪が成立します。
~恐喝罪の罰則~
10年以下の懲役で、罰金は規定されていません。
起訴される前に被害者と示談すれば、不起訴も考えられます。
もっとも、発覚すれば逮捕される可能性もあります。逮捕された場合は、示談交渉とともに早期釈放に向けた活動も必要となってまいります。