仙台市青葉区 無料相談 職務質問と公務執行妨害罪
- 2020.02.11
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 仙台支部
職務質問現場での留め置きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 仙台支部が解説します。
仙台市青葉区に住むAさんは、コンビニエンスストアの駐車場に停めた車内で仮眠していたところ、突然、宮城県青葉警察署の警察官から職務質問を受けました。Aさんは、前日、覚せい剤を使用し、車内のダッシュボード内に覚せい剤を隠しもっていたことから警察官の職務質問には応じたものの、車内検索には応じませんでした。
そうしてAさんと警察官の現場でのやり取りで約5時間が経過した後、裁判官から発布された捜索差押え許可状に基づき車内検索が行われました。そして、その結果、車のダッシュボード内から覚せい剤を発見されてしまいました。捜査の結果、Aさんの尿からは覚せい剤も検出され、Aさんは覚せい剤取締法違反(使用・所持罪)及び職務質問の際に警察官に暴行を加えた公務執行妨害罪で起訴されてしまいました。
(フィクションです)
~ 公務執行妨害罪 ~
公務執行妨害罪は刑法95条1項に規定されています。
刑法95条1項
公務員が職務を執行するにあたり,これに対して暴行・脅迫を加えた者は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
警察官の職務質問が「職務」に当たります。
警察官職務質問執行法2条1項では
警察官は,異常な挙動その他の周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について,若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる
と規定されています。この規定に基づいて行われる質問が職務質問です。
ただし、「職務」は適法であることが必要です。違法な職務まで保護する必要はなく、犯人を処罰する必要がないからです。
この点、職務質問は適法でしょうか?違法でしょうか?
事例に記載された事実関係のみでは、一概に結論を申し上げることはできませんが、Aさんが職務質問の現場に約5時間も留め置かれた点が気になります。
職務質問はくあまで任意で行われる必要があるところ、現場に約5時間も留め置かれたということだけ見れば、もはや職務質問の許容限度を超えている(職務質問は違法)と考えてもよさそうです。
昨年12月には、熊本地方裁判所で、覚せい剤取締法違反(使用・所持)に問われた女性に対し、所持について無罪判決が言い渡されていたます。
この裁判の事例でもやはり事例と同様、女性は職務質問の現場に約5時間留め置かれており、判決で「捜索するまで、女を職務質問した現場から移動させなかった行為などが違法」と指摘されています。
職務質問が違法ならば公務執行妨害罪は成立しません。
また、職務質問に付随する所持品検査、捜索によって得られた証拠(覚せい剤の現物など)も違法性を帯び、結局、覚せい剤取締法違反も成立しない(無罪)可能性が出てきます。
詳細は弁護士にご相談ください。
そのほか、「暴行」、「妨害」について解説します。
通常、暴行とは人の身体に対する不法な有形力の行使をいいますが、公務執行妨害罪の「暴行」とは、人の身体に対する「直接暴行」のみならず、物に対する有形力で、それにより間接的に一定の人に物理的・心理的に感応を与える「間接暴行」も含むとされてます。したがって、パトカーに向かって石を投げつけたという行為も「暴行」に当たる可能性があります。
「妨害」」の程度については、現実に職務の執行が妨害されたことを必要とされません。これは,公務執行妨害罪の目的が公務の円滑な執行を保護するためにあるからです。過去には,警備中の警察官に対する1回だけの命中しなかった投石行為につき公務執行妨害罪の成立を認めた判例(最判昭33年9月30日)があります。