東京調布 詐欺未遂罪
- 2023.07.15
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
詐欺未遂罪による刑事事件で執行猶予判決を獲得した事例をもとに、詐欺罪と詐欺未遂罪の違いや詐欺未遂罪が成立するタイミングについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
東京都在住の男性A(26)が、東京都調布市在住の女性V(73)に電話をかけ、現金をだまし取ろうとしたとして、詐欺未遂罪の疑いで警視庁調布警察署から逮捕されました。
Aは、Vの弟を名乗り「明日受け取りに行くから50万円用意してほしい」とVに電話をかけ、翌日Vから現金が入った紙袋を受け取った際に、警戒中だった警察官から現行犯逮捕されました。
警察の調べに対し、Aは逮捕容疑を認めています。
(一部事実を変更したフィクションです)
【詐欺未遂罪とは】
詐欺未遂罪とは、詐欺罪の実行に着手したけど遂げることができなかった場合に成立する罪のことで、刑法第246条の詐欺罪と刑法第250条の未遂に関する条文によって規定されています。
各条文は以下の通りです。
・刑法第246条:人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
・刑法第250条:この章の罪の未遂は、罰する。
また、詐欺未遂罪のような未遂罪の処罰内容に関する条文は、刑法第43条で以下のように規定されています。
・刑法第43条:犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
詐欺未遂罪は、詐欺罪の実行に着手したけど、結果として被害者から財物を交付されずに詐欺罪を遂げることができていないので、詐欺罪に比べると処罰内容は軽くなります。
ですが、そもそも詐欺罪には懲役刑しかないので、詐欺未遂罪であっても実刑判決を下される可能性はあります。
【詐欺未遂罪と詐欺罪の違い】
詐欺未遂罪と詐欺罪の違いは、詐欺罪が成立する要件をすべて満たしているかどうかです。
詐欺罪が成立するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
①欺罔(ぎもう)行為:嘘をついて相手をだます行為
②錯誤:欺罔行為を受けた相手が錯誤に陥り、嘘の情報を信じてしまう状態
③財産の交付:錯誤状態の被害者が加害者に対し、金銭などの財産を渡してしまう行為
④財産の移転:被害者が渡した財産が、加害者の手に渡った状態
上記すべての要件を満たした上で、それぞれの因果関係も認められた場合に詐欺罪が成立します。
一方で、詐欺未遂罪は、詐欺罪の実行には着手したけど、結果として詐欺罪を遂げることができなかった場合に成立します。
【詐欺未遂罪が成立する実行の着手時期はいつ?】
詐欺未遂罪が成立するためには、刑法第43条にも規定されているように「実行に着手していた」ことが必要です。
ただ、欺罔行為を行った時点で実行の着手になるのか、欺罔行為によって相手が錯誤に陥った時点で実行の着手になるのか、というように、どの段階で実行の着手が認められるかは難しいところです。
詐欺罪で実行の着手が争点となった判例では、『未遂罪の成否において問題となるのは、実行行為に「密接」で「客観的な危険性」が認められる行為への着手が認められるかである』と述べられています。( 最高裁判決平成30年3月22日判決)
つまり、詐欺未遂罪は、詐欺罪が成立する「人を欺いて財物を交付させる」行為に密接な行為を実行し、この行為が客観的に危険性があると認識された時点で実行の着手が認められるということになります。
今回の刑事事件では、AがVに弟を名乗って「明日受け取りに行くから50万円用意してほしい」と電話をした行為が、詐欺罪が成立するための実行行為に密接であり、客観的(第三者がこの相談を受けた場合)にも詐欺罪の被害に遭っているという危険性が認められるため、詐欺未遂罪が成立します。
【詐欺未遂罪の刑事弁護活動】
今回の刑事事件では、検察官から起訴されて公判(裁判)にかけられたものの、Aは初犯であり、結果として被害者から金銭を受け取っていないことも踏まえて、執行猶予判決になりました。
Aが執行猶予判決を獲得できたことは、Aが逮捕された後に、Aの母が刑事事件専門の弁護士に依頼し、Aの弁護人として弁護士が専門的なアドバイスやサポートをしていたことも大きく影響しています。
なので、詐欺未遂罪による刑事事件を起こしてしまった際は、過去に似たような詐欺未遂事件を扱ったことがあるような専門の弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺未遂罪による刑事事件で執行猶予判決はもちろん、起訴後の保釈決定や起訴を免れて不起訴処分を獲得した実績がある弁護士が多く在籍しています。
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