東京 電子計算機詐欺罪ってどんな罪?
- 2023.05.20
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
ニュースや新聞で「電子計算機使用詐欺罪の疑いで逮捕」という言葉を聞いたことがあるけど、実際どのような行為が電子計算機使用詐欺罪に該当するのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、どのような行為をすると電子計算機使用詐欺罪が成立するのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【電子計算機使用詐欺罪とは】
電子計算機使用詐欺罪については、刑法第246条の2で規定されています。
刑法第246条の2
人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
電子計算機使用詐欺罪は、「人の事務処理に使用する電子計算機」に「不実の電磁的記録の作出又は虚偽の電磁的記録の供用」を行い、「自分又は第三者が財産上の利益を得る」ことで成立します。
「人の事務処理に使用する電子計算機」とは、人が事務処理をする際に使用するPCやスマートフォンなどのコンピューターやコンピューター内のシステムを指します。
「不実の電磁的記録の作出」とは、電子計算機に虚偽の情報を与える行為を指します。
他人名義のクレジットカード情報を勝手に入力してインターネット上で決済を行うといった、PCやスマートフォンに直接入力操作をする行為が、不実の電磁的記録の作出に該当します。
一方で、「虚偽の電磁的記録の供用」とは、虚偽の情報を電子計算機に読み取らせる行為を指します。
あらかじめ金額を改ざんしたプリペイドカード等を機械に読み取らせて買物をするといった、機械にカード等を読み取らせる行為が、虚偽の電磁的記録の供用に該当します。
「不実の電磁的記録の作出又は虚偽の電磁的記録の供用」を行った結果、自分又は第三者が財産上不法な利益を得ることで、電子計算機使用詐欺罪が成立します。
【電子計算機使用詐欺罪と詐欺罪の違い】
電子計算機使用詐欺罪と詐欺罪の大きな違いは、欺罔行為(欺く行為)の対象です。
詐欺罪が成立する欺罔行為の対象は「人」であることに対し、電子計算機使用詐欺罪が成立する欺罔行為の対象は「電子計算機」です。
詐欺罪では電子計算機を対象とした欺罔行為を処罰することができなかったため、詐欺罪の補充規定として、電子計算機使用詐欺罪が制定されました。
なので、電子計算機使用詐欺罪の処罰内容も、詐欺罪と同様に10年以下の懲役刑と定められています。
【電子計算機使用詐欺罪が成立した事例】
実際に電子計算機使用詐欺罪が成立した事例には、以下のような行為が挙げられます。
1.会社員が社内システムを操作して着服
銀行員や会社の経理担当が、社内システムを操作して虚偽の情報を入力し、自分の口座に不正にお金を振り込むような着服行為は、「不実の電磁的記録の作出」行為に該当するため、電子計算機使用詐欺罪が成立します。
2.還付金詐欺
被害者に「指示通りATMを操作すれば還付金が受け取れる」等の嘘をつき、被害者自身にATMを操作させて指定口座にお金を振り込ませるような還付金詐欺も、「不実の電磁的記録の作出」行為に該当するため、電子計算機使用詐欺罪が成立します。
3.キセル乗車
購入した乗車券の範囲外まで不正乗車するキセル乗車は、改札機に本来の乗車券とは違う乗車券を読み取らせて不正に交通費の差額分の利益を得ているため、「虚偽の電磁的記録の供用」行為に該当し、電子計算機使用詐欺罪が成立します。
【電子計算機使用詐欺罪の刑事弁護活動】
電子計算機使用詐欺罪の処罰内容は、10年以下の懲役刑しかありません。
電子計算機詐欺罪には罰金刑がありませんので、起訴されてしまうと、公判請求(裁判にかけられる)となります。
電子計算機詐欺は財産犯ですので、被害額の大きさによっては、執行猶予がつかずに、実刑判決となってしまう可能性があります。
なので、電子計算機使用詐欺罪が成立して刑事事件になってしまった際は、弁護士に刑事弁護を依頼することをお勧めします。
弁護士に刑事弁護活動を依頼すれば、依頼者の代理人として被害者との示談交渉や検察官との交渉を行って、依頼者の起訴を免れるための刑事弁護活動を行います。
また、起訴されてしまった場合も、執行猶予の獲得や少しでも量刑が軽くなるような弁護活動に尽力します。