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東京 人違いの犯行 傷害罪 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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東京 人違いの犯行 傷害罪

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部

 

人違いで相手に怪我をさせてしまった時(傷害罪)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

 

東京都新宿区内の会社で勤務している男性A(30)は、同じ職場で勤務している上司の男性V(38)に日頃から恨みがあったので、仕事帰りに暴行を加えて怪我を負わせてやろうと決意していました。

その後、Aは予定通り仕事帰りの道中でVを見つけ、殴る蹴るなどの暴行を加えましたが、よく見るとVとは全くの他人である男性B(32)だったことが分かりました。

Bはそのまま病院に搬送され、全治1ヵ月の怪我を負いました。

この場合、AはBに対して何罪が成立するでしょうか。

(※この事例はフィクションです。)

 

【刑法は”故意犯処罰”が原則】

刑法では、故意で犯罪を犯した者のみを処罰することを原則としています。

これは、刑法第38条1項によって規定されています。

 

  • 刑法第38条1項:罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

 

刑法における「故意」とは、「犯罪になることをわかった上で、この行為が犯罪でも構わないと思って犯罪行為を行うこと」を指します。

また、刑法第38条1項のただし書きに記載されている「特別の規定」は、過失犯の処罰を指しています。

 

今回の事例で考えると、AはVに対して、暴行行為を加え怪我を負わせるつもりだったので、Vに暴行を加えて怪我を負わせた場合は、刑法第204条に規定されている傷害罪の故意犯として処罰されます。

 

  • 刑法第204条:人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

ですが、今回の事例では、AはVと思って暴行を加えた相手が、Vとは全くの別人であるBでした。

AはVに対する故意は認めていたけれど、V以外に対する故意はない状態だったので、Bに対する故意は認めていないということになります。

つまり、刑法の故意犯処罰の原則から考えると、AはBに対する暴行行為に故意がなかったため、傷害罪ではなく、過失による行為として過失傷害罪が成立することになっていまいます。

 

  • 刑法第209条:過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

 

 

【事実の錯誤】

今回の事例のように、Aが認識していた事実(Vに暴行行為を加えて怪我を負わせる)と発生した事実(Bに暴行行為を加えて怪我を負わせた)が一致していないことを、「事実の錯誤」と言います。

 

事実の錯誤が起きた場合は、発生した事実に対して行為者(今回はA)の故意が認められるかどうかが問題になります。

この問題に対して、判例は「法定的符合説」という学説に立っています。

法定的符合説とは、行為者が認識した事実と発生した事実が、犯罪が成立する要件の範囲内で一致していれば、発生した事実に対しても故意を認めるという説です。

 

今回の事例において、AがVに対して行おうと認識していた事実(傷害罪)と、AのBに対して発生した事実(傷害罪)は、どちらも傷害罪が成立する要件の範囲内として一致しています。

つまり、今回の事例では、発生した事実に対するAの故意は認められるとして、AのBに対する傷害罪が成立するということになります。

 

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