東京神田 逮捕 覚せい剤と職務質問
- 2021.04.06
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
覚せい剤(使用)と職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
Aさんは、神田駅付近を歩いている際、その挙動不審な態度から、神田警察の警察官から職務質問を受けました。Aさんは、直前に覚せい剤を使用していたことから、バレたくないと思ってその場から逃走しようかとも考えましたが、警察官の説得でその場にとどまり、覚せい剤取締法違反(使用の罪)で神田警察に逮捕されてしまいました。Aさんは、接見に来た弁護士に「職務質問は任意ではなかった」、「強制的に自白させられた」などと訴えています。
(フィクションです。)
~覚せい剤の使用~
覚せい剤の使用法律により厳しく禁止されています。
覚せい剤取締法19条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。
一 覚せい剤剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚せい剤剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
三 覚せい剤剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚せい剤剤施用機関にお取締法いて診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合
覚せい剤取締法41条の3 次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。
一 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
覚せい剤取締法でいうところの「使用」とは、覚せい剤等を用法に従って用いる、すなわち「薬品」として消費する一切の行為をいいます。
使用方法に制限はなく、水に溶かした覚せい剤を注射器によって血管に注入する方法や、覚せい剤の結晶を火に炙って、気化した覚せい剤を吸引する方法、覚せい剤を飲み物に溶かすなどして経口摂取する方法などがあります。
なお「使用」には、①他人の身体に覚せい剤を注射する行為のほか、②他人に注射してもらう行為も含まれます。そして、通常、①の場合、自己の身体に注射された人も、②の場合、他人の身体に注射した人も覚せい剤使用罪の共犯として処罰されます。
~職務質問~
職務質問は警察官職務執行法(以下、警職法)という法律の第2条の規定に基づいて行われています。警職法2条1項には次のように書かれています。
警職法2条1項
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
警察官は誰彼かまわず職務質問できるわけではなく、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知って知つていると認められる者」に対して職務質問することができるのです。
「異常な挙動」とは,その者の言語、態度、着衣、携行品等が通常ではなく不自然であることを意味しますが、挙動が異常であるか否かは場所や時間帯によって異なります。
また、「その他周囲の事情」とは、時間、場所、環境等を意味します。
今回、Aさんは警察官から見て「異常な挙動」があったと認められたからこそ職務質問を受けたのだと考えられます。
職務質問を受けるかどうかは任意ですから拒否することも可能です。
もっとも、職務質問においては、警察官が対象者の進路を塞いだり、対象者の後を追跡する行為は許容されると解されます。そのため、職務質問は建前としては拒否できても実際上拒否することは困難といえます。
本件では、Aさんに対してどのような行為が行われたのかは不明ですが、警察官の行為が許容範囲内であれば職務質問を違法と評価することはできません。
警察官のいかなる行為が許容範囲か否かは、個別具体的事情によって異なってきます。
神田警察署 東京都千代田区神田錦町3丁目10(仮庁舎) 03-3295-0110