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東京都木場 逮捕 放火 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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東京都木場 逮捕 放火

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部

 

現住建造物等放火罪,非現住建造物等放火罪,建造物等以外放火罪,延焼罪について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

2021年2月1日、東京都江東区在住のHは、交際相手Wとのトラブルから、Wに嫌がらせ行為をするために、木場駅付近にあるWの職場のビル(以下、本件ビル)のゴミ捨て場に放火することを決めた。同月2日午前2時、Hは「深夜での犯行ならばバレないだろう。」と思い、本件ビルのゴミ捨て場にあったゴミ袋2つにライターで火を付けた。しかし、ゴミ袋は燃えて無くなったものの、思いの外、火が消えるのが早かったことから、「このままでは意味がない。」と考えたHは、周辺にあったゴミ袋全てに火をつけたところ、火は強く燃え上がり、本件ビルまで延焼しようとしていた。「もしかしたらビル全体が燃えてしまうかもしれないが、ここで逃げれば俺には関係ない話だ。」と思ったHは、その場から逃走した。その結果、ゴミ袋全てと本件ビルは焼損したが、負傷者は誰もいなかった。その後、深川警察の捜査によりHは逮捕された。
この場合、Hは何の罪に問われるでしょうか。
(フィクションです)

 

・建造物等以外放火罪が成立するのか

放火罪や失火罪は不特定又は多数人の生命・身体・財産に害を及ぼすことから公共危険罪としての性格を有しています。また、客体が人の現住する建造物か否か、他人の所有物であるか否か、など諸般の事情によって法定刑が異なるため、注意が必要です。今回のケースでは、交際相手の職場先のビルにあったゴミ袋に火をつけた結果、ゴミ袋だけでなく、ビル全体も焼損してしまったケースです。このような場合、どのような罪が成立するのか、以下検討します。今回問題となる放火罪については刑法108条から111条に記されています。

 

第108条(現住建造物等放火)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
第109条(非現住建造物等放火)
1 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は2年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
第110条(建造物等以外放火)
1 放火して、前2条に規定する物以外を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第111条(延焼)
1 第109条第2項又は前条第2項の罪を犯し、よって第108条又は第109条第1項に規定する物に延焼させたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。
2 前条第2項の罪を犯し、よって同条第1項に規定する物に延焼させたときは、3年以下の懲役に処する。

 

犯罪が成立するには、「構成要件に該当し違法且つ有責な行為」である必要があるので、構成要件から検討していきたいところですが、今回のケースでのHの行為は、①ゴミ袋2つに放火したこと、②周辺にあったゴミ袋全てに火をつけたこと、③②の結果本件ビルに延焼させたことの3つになるため、まずは①についてから検討します。①の適用条文は110条1項となりそうなので、本条が適用し得るか、検討します。

 

第一に、「放火して」ですが、放火行為とは「客体の燃焼を惹起させる行為」をいいます。また、直接客体に点火することのみならず、媒介物を利用して目的物へ導火させることも放火行為に当たります。今回のケースでは、Hはゴミ袋2つにライターで火をつけたので、本行為は「放火して」に該当します。

 

第二に、「前2条に規定する物以外を焼損し」ですが、「前2条に規定する物」というのは、108条と109条に規定されている物を指しています。108条の客体は、現住又は現在使用している建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑であり、109条の客体は、1項では、非現住又は現在使用していない建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑であり、2項では、1項の内、自己所有の物です。よってそれ以外の物が本条の客体に当たります。例えば、自転車や畳などです。また、「焼損」とは「火が媒介物を離れて目的物が独立に燃焼を継続し得る状態に達したこと」であるとされています。今回のケースでは、Hは本件ビルのゴミ捨て場にあったゴミ袋2つにライターで火をつけた結果、Hの予想より早かったものの、ゴミ袋2つは燃えて無くなりました。よって、Hの行為は「前2条に規定する物以外を焼損し」に該当します。

 

第三に、「よって公共の危険を生じさせた」ですが、「公共の危険」とは、他の物件へ延焼する具体的危険の発生を意味します。これは、火力の程度、可燃物との距離、周囲の状況等を総合して判断されることになります。なお、「公共の危険」の認識については要らないとされるのが判例の立場です。判例では、オートバイを家屋の傍で燃やし延焼させた事案において、「刑法110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼損する認識のあることが必要であるが、焼損の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきである。」と判示しています。今回のケースでは、ゴミ袋2つが燃えたものの、①の時点では他のゴミ袋や本件ビルまで火が燃え移っておらず、また燃焼時間も短かったため、火力はそれほどではなかったと言えます。ただ、その後③で周辺にあるゴミ袋に火をつけたところ本件ビルまで延焼したことからすれば、少数のゴミ袋に小さな火をつけたとしても、他のゴミ袋や近くの建物に延焼する可能性があったといえますから、「よって公共の危険を生じさせた」となる可能性があります。
よって、①の行為には110条1項が適用される可能性があります。たとえ110条1項が適用されずとも、器物損壊(261条)が成立する可能性があります。

 

次に②の行為を検討します。②も前記の110条1項が適用し得るかを見ていきます。
まず、Hは①と同様に、周辺に合ったゴミ袋全てに「放火をして」、「前2条に規定する物以外を焼損し」ました。そして問題となるのは「よって公共の危険を生じさせた」かどうかです。この点、①とは異なり、Hは本件ビルにあった残りのゴミ袋全てを燃やし、さらに火は強く燃え上がり本件ビルは焼損しました。このことから①より火力は強いうえに、対象も多かったですから、「よって公共の危険を生じさせた」に該当するといえます。
次に、違法性と責任ですが、違法性に関しては正当防衛(36条1項)などの事実はなく、責任に関してもHは心神喪失者等でないので、以上見てきたことをまとめるとHの②の行為に建造物等放火罪(110条1項)が成立するといえそうです。

 

・現住建造物等放火罪か、延焼罪か

最後に③の行為を検討します。③は①と②と異なり、客体(本件ビル)への放火行為を実際に行なったわけではありません。この場合、客体に延焼したとされ延焼罪(111条)が成立しそうですが、111条で規定されている客体は「第109条第2項」又は「前条(110条)第2項」すなわち自己所有物であり、今回のケースでは、自己所有物以外の物であるゴミ袋(110条1項)を焼損させた結果本件ビルに延焼しました。よって111条は適用されません。しかし今回は幸いにも負傷者が出ていませんが、本件ビルは焼損しています。それにも関わらず何の罪も問われないのでしょうか。

 

同じようなケースで判例では、自己の過失行為による机等の燃焼を放置すれば建物の焼損に至ることをあえて放置した場合に、不作為の放火を認め、108条が成立するとしたものがあります。今回のケースもHがゴミ袋へ放火し、本件ビルに延焼しかねない事態を生じさせました。この時点でHは「もしかしたらビル全体が燃えてしまうかもしれないが、ここで逃げれば俺には関係ない話だ。」と思い、その場から逃走しました。これらの行動からHに本件ビルへの不作為の放火があったといえるでしょう。なお、108条の客体は、日常生活に使用されている建造物であれば、放火の時点で人が現在いることを要しません。
以上より、③の行為に現住建造物等放火罪が成立するといえそうです。

 

・刑罰について

では成立したとしてどのような刑罰が科せられるでしょうか。放火罪・失火罪は公共危険罪であることから、放火行為や焼損した客体が数個であっても、生じた公共の危険が1個と判断されれば、包括して一罪が成立します。その場合は客体の内最も重大なものに関する罪が成立します。今回は①②は同じ場所で続けて行ったうえ、③は②の行為により発生した事態をそのまま放置したのですから、別個の危険とするべきではなく、最も重大なものは現住建造物が放火された③が該当するため、108条の「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」となります。①が器物損壊にとどまったとしても、すぐ後に行った②と別個のものとはいえないため、別個器物損壊は成立せず、③について現住建造物等放火が成立するといえます。

 

・まとめ
よって、Hの行為は現住建造物等放火罪(108条)にあたり、「死刑又は無期若しくは5年以上」の懲役が科せられるということになります。
刑に関しては初犯か、前科を持っているか、などによって変わります。

 

深川警察署 東京都江東区木場3丁目18-6 03-3641-0110

 

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